「残念な男(二次創作シリーズ)」
    虐待(二次創作中編・完結)

    虐待 2-3

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     壇上に立ったのは、司会と、監督、それに主演女優であるあの女だった。子役はさすがに出てこなかった。

     司会がマイクを手にしゃべった。

    「えー、まず、上映前になぜあいさつがなかったのかを、監督から直接お聞きしたいと思います。栗本監督、なぜですか?」

     栗本と呼ばれた、小柄で丸い身体につやつやした顔が乗った監督は、人懐こそうな目をくりくりさせて答えた。

    「自信がなかったからです」

     わたしを含め、会場は笑った。

    「いや、まじめな話、ブーイングも覚悟していました。題材が題材ですから」

    「よく映倫を通りましたねえ」

    「まったくです」

     監督は笑顔のままで頭をかいた。司会は絶妙のタイミングでいった。

    「この映画はフィクションですよね?」

    「決まっているでしょう」

     素直な答えに、またも会場はわいた。

    「ええ、われわれを、この映画はノンフィクションのドキュメンタリーではないかと錯覚させた最高の女優である、つがや・ほのかさんにお尋ねしましょう」

     つがや? どう書くのだろうか。わたしは自分がパンフレットをもらっていたことを思い出し、ページを開いた。

    「主演:都谷炎華」

     小さな顔写真の下にはそう書かれていたが、つがや、と読むにはわたしには難しすぎた。芸名だろうが、もっとわかりやすい名前はなかったのだろうか。

     舞台の上では司会がしゃべっていた。

    「都谷さんは、映画は初めてですよね?」

    「はい」

     都谷炎華はうなずいた。

    「それが、どうしてこの映画に?」

    「舞台でやっていた、王女メディアの演技を監督が高く評価してくださって」

    「ギリシア悲劇ですね」

    「はい。夫に復讐するためにわが子を殺す王女の話です」

    「舞台は長いんですか?」

    「それなりです。地方劇団で、主に脇役をやっていました。たとえが難しいですが、オペラでは、メゾソプラノの役者がやるような役です」

    「悪女とかですね」

    「はい。この作品は、そういう役ばかりだったわたしにはぴったりの映画デビュー作だと思います。監督には深く感謝しています」

    「では、共演者を連れてきましょう。はい、室内みなみちゃん、出てきてください!」

     舞台の袖から、薄型の大判テレビが運ばれてきた。

    「みなみちゃんは、現在十二歳なので、この映画を見ることができません。というわけで、モニター越しの登場になります。拍手!」

     モニターに少女の姿が浮かび上がった。
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    Re: 卯月 朔さん

    うーむ、ここまで恐怖を与えてしまうとは、題材の選択を誤ったかなあ。本人としてはごく正統派のミステリを書いているつもりなんだけど。(汗)

    息抜きのシーンが息抜きになってない、というのは問題だよなあ、やっぱり……。

    でも百枚の中編であらすじをつけるというのもなあ。

    うーむ。

    Re: LandMさん

    最初に「あらすじ」くらいはつけておくべきだったかなあ。

    でも途中で変更したら恥ずかしいしなあ。

    うーむ。

    あ、なんか、出だしですごくこわくなった。これ。

    重苦しい内容の映画のあとに、パッと照明がついて、明るい舞台挨拶という対比が、上映中の暗さを引き立たせていて背筋のゾゾゾ感が増しています……どうなっちゃうんだろう;;;

    ここからどう話が進んでいくかですね。
    ・・・あまり洒落になっていないような状況というか、
    そういう話ではないですね。
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