「残念な男(二次創作シリーズ)」
虐待(二次創作中編・完結)
虐待 2-4
「みなみちゃんは、今、アクターズスクールの教室にいて、こちらとつながっています。聞こえますか、みなみちゃん?」
『聞こえまーす』
少女は手を振った。
「みなみちゃん、まず、この映画に出られてどうだったかなー?」
『勉強になりましたー! 自信もつきましたー!』
明るい顔で天真爛漫に語るその姿は、とても先ほどまでスクリーンの中で激しい暴行を加えられていた少女とは思えない。
「自信がついたっていうと?」
『はい。都谷さんに、女優としての心構えを、いっぱい教えてもらいました!』
司会はほほ笑むと、質問を続けた。
「都谷さんって、どんな人だったかな?」
『怖い人!』
即座に返ってきた言葉に、会場はわき、監督と都谷炎華は苦笑していた。
『でも、ほんとうにぶったりたたいたりとかは、まったくなかったよ。お芝居だもん。せりふは、どんどん怖くなったけど』
「監督?」
「都谷さんのおかげです」
栗本監督はまた頭をかいた。
「もともと、この映画は、全年齢対象として作るつもりだったんです。みなみちゃんに参加してもらったのもそれだったのですが、相手役としてスカウトした都谷さんが、撮影中にすばらしいアドリブを次々と。スタニスラフスキーシステムを本当の意味で実践している女優を仲間にできて、われわれはほんとうに幸運でした。もっとも、副産物もあって、都谷さんのアドリブの果てに、ご覧になったようなすごい絵が撮れたのはいいのですが、R-15指定になってしまいまして。おかげで、もうひとりの主演女優であるみなみちゃんがあと三年は見られない映画になってしまい、この場所に呼んでこられなくなってしまったしだいです」
『残念です! わたしも、劇場でお辞儀がしたかったのに!』
画面の中でみなみちゃんがむくれた表情をし、会場はまた笑いに包まれた。
それから、いくつかの質疑応答が続いた。楽しい時間ほどあっという間に過ぎてしまうもので、気がついたら舞台挨拶の三十分は終わり、わたしも帰ることにした。
ホールのロビーを出ようとしたところで、わたしは髪をひっつめに結った神経質そうな顔の女に呼び止められた。
「なんですか?」
「都谷炎華のマネージャーをしている竹田といいます。都谷が、これをあなたに、と」
受け取ったわたしは頬をつねりたくなった。それは都谷炎華の名刺だった。裏には「後日、お食事をご一緒しませんか? マクドナルド以外で」と書かれていた。わたしは女にためらわずイエスと答えた。
『聞こえまーす』
少女は手を振った。
「みなみちゃん、まず、この映画に出られてどうだったかなー?」
『勉強になりましたー! 自信もつきましたー!』
明るい顔で天真爛漫に語るその姿は、とても先ほどまでスクリーンの中で激しい暴行を加えられていた少女とは思えない。
「自信がついたっていうと?」
『はい。都谷さんに、女優としての心構えを、いっぱい教えてもらいました!』
司会はほほ笑むと、質問を続けた。
「都谷さんって、どんな人だったかな?」
『怖い人!』
即座に返ってきた言葉に、会場はわき、監督と都谷炎華は苦笑していた。
『でも、ほんとうにぶったりたたいたりとかは、まったくなかったよ。お芝居だもん。せりふは、どんどん怖くなったけど』
「監督?」
「都谷さんのおかげです」
栗本監督はまた頭をかいた。
「もともと、この映画は、全年齢対象として作るつもりだったんです。みなみちゃんに参加してもらったのもそれだったのですが、相手役としてスカウトした都谷さんが、撮影中にすばらしいアドリブを次々と。スタニスラフスキーシステムを本当の意味で実践している女優を仲間にできて、われわれはほんとうに幸運でした。もっとも、副産物もあって、都谷さんのアドリブの果てに、ご覧になったようなすごい絵が撮れたのはいいのですが、R-15指定になってしまいまして。おかげで、もうひとりの主演女優であるみなみちゃんがあと三年は見られない映画になってしまい、この場所に呼んでこられなくなってしまったしだいです」
『残念です! わたしも、劇場でお辞儀がしたかったのに!』
画面の中でみなみちゃんがむくれた表情をし、会場はまた笑いに包まれた。
それから、いくつかの質疑応答が続いた。楽しい時間ほどあっという間に過ぎてしまうもので、気がついたら舞台挨拶の三十分は終わり、わたしも帰ることにした。
ホールのロビーを出ようとしたところで、わたしは髪をひっつめに結った神経質そうな顔の女に呼び止められた。
「なんですか?」
「都谷炎華のマネージャーをしている竹田といいます。都谷が、これをあなたに、と」
受け取ったわたしは頬をつねりたくなった。それは都谷炎華の名刺だった。裏には「後日、お食事をご一緒しませんか? マクドナルド以外で」と書かれていた。わたしは女にためらわずイエスと答えた。
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~ Comment ~
Re: limeさん
一日三枚の割で更新していますから、来月半ばまでには終わる計算です。中編というか長めの短編というか。
怖い話にする予定は今のところありませんが……うーむ。
怖い話にする予定は今のところありませんが……うーむ。
・・・・・・。
あ、いや、率直の感想であって。
なんでしょうか。この時点でのラストが全く付かないわけであって。読んでいる私にとっては未知なラストに対する恐怖が付きまとうのは、ポールさんの小説を読み続けているからこそなのでしょうかね。勿論、良い意味で、という話です。
私の小説はある意味ラストがはっきりしていますからね。
あ、いや、率直の感想であって。
なんでしょうか。この時点でのラストが全く付かないわけであって。読んでいる私にとっては未知なラストに対する恐怖が付きまとうのは、ポールさんの小説を読み続けているからこそなのでしょうかね。勿論、良い意味で、という話です。
私の小説はある意味ラストがはっきりしていますからね。
- #11318 LandM
- URL
- 2013.09/10 20:38
- ▲EntryTop
これは、ミステリなんですよね?
とんでもなく怖いラストが・・・とか、ないんですよね?
和やかなムードが、逆に怖い(笑)
100枚というと何話くらいになるんでしょう。
中編くらいかな?
あらすじを付けるべきかどうかって、作品ごとに迷いますよね。
とんでもなく怖いラストが・・・とか、ないんですよね?
和やかなムードが、逆に怖い(笑)
100枚というと何話くらいになるんでしょう。
中編くらいかな?
あらすじを付けるべきかどうかって、作品ごとに迷いますよね。
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Re: LandMさん
また、物語自体も単純なものなので、あらすじ書いたら全部ばれてしまうというか(^_^;)
うむむ。(^_^;)