「残念な男(二次創作シリーズ)」
虐待(二次創作中編・完結)
虐待 3-4
「それで、わたしにそいつを脅してくれと」
わたしは麻婆豆腐を噛んだ。噛み締めているうちに、豆腐はしだいに辛く、そして苦くなりつつあった。
「お願いできる義理ではないのは承知しております」
「そりゃそうでしょう」
わたしは豆腐を飲み下した。
「どう考えても、警察に相談するべきことですよ。身に覚えがないのだったら、なおさらだ」
「そして、翌週の週刊誌には、面白おかしく、『虐待死女優の虐待死映画』などとベタ記事が書かれて、わたしも映画も終わりです」
「劇団のかたには、力を貸してくれる人はいないのですか」
都谷炎華は首を振った。
「もし、劇団のものを連れて行って、最悪の展開になってしまったら、ことはわたしのスキャンダルにとどまらず、劇団全体のスキャンダルになってしまいかねません」
なるほど。
「それで、劇団とは無関係なわたしを」
「こうしたお仕事には慣れていらっしゃるようでしたし」
首を横に振るのはわたしの番だった。
「いくらか古武術のたしなみはありますがね、エージェントはエージェントでも、わたしは平凡な貿易代理店の社員ですよ。ティモシー・ダルトンが演じたジェームズ・ボンドのようなスーパースパイじゃないんです」
都谷炎華はうなずいた。
「そうだとは思います。しかし、あなたのその危険さを感じさせる雰囲気は、相手を脅かすのにうってつけなんです」
真剣なまなざしでそう主張されると、わたしは返答に窮した。
いら立ったのか、ロビンが口をはさんできた。援護射撃のつもりらしい。
「ねえ、お姉さん。ぼくたちが、悪いやつだとは考えなかったの? お姉さんたちを脅迫して、お金を脅し取ろうとするかもしれないよ」
都谷炎華は、笑顔になった。花のような笑顔だった。
「それについては、まったく心配しておりませんでした」
「どうしてです?」
「だって、電車内で、無関係なわたしを助けようとしてくれたのはあなただけでしたし、なにより、このような席と知りながら、こんなかわいいお嬢さんを連れてこられるような人なんですもの、無条件で信頼できるかただと、誰だってわかります」
ロビンはわたしを横目で見てから、都谷炎華を見た。あきらめたように長いため息をつくと、小声でなにごとかをつぶやいた。
わたしには、なにがつぶやかれたのかわかっていた。ロビンはこういったのだ。
「悪い病気」
わたしは麻婆豆腐を噛んだ。噛み締めているうちに、豆腐はしだいに辛く、そして苦くなりつつあった。
「お願いできる義理ではないのは承知しております」
「そりゃそうでしょう」
わたしは豆腐を飲み下した。
「どう考えても、警察に相談するべきことですよ。身に覚えがないのだったら、なおさらだ」
「そして、翌週の週刊誌には、面白おかしく、『虐待死女優の虐待死映画』などとベタ記事が書かれて、わたしも映画も終わりです」
「劇団のかたには、力を貸してくれる人はいないのですか」
都谷炎華は首を振った。
「もし、劇団のものを連れて行って、最悪の展開になってしまったら、ことはわたしのスキャンダルにとどまらず、劇団全体のスキャンダルになってしまいかねません」
なるほど。
「それで、劇団とは無関係なわたしを」
「こうしたお仕事には慣れていらっしゃるようでしたし」
首を横に振るのはわたしの番だった。
「いくらか古武術のたしなみはありますがね、エージェントはエージェントでも、わたしは平凡な貿易代理店の社員ですよ。ティモシー・ダルトンが演じたジェームズ・ボンドのようなスーパースパイじゃないんです」
都谷炎華はうなずいた。
「そうだとは思います。しかし、あなたのその危険さを感じさせる雰囲気は、相手を脅かすのにうってつけなんです」
真剣なまなざしでそう主張されると、わたしは返答に窮した。
いら立ったのか、ロビンが口をはさんできた。援護射撃のつもりらしい。
「ねえ、お姉さん。ぼくたちが、悪いやつだとは考えなかったの? お姉さんたちを脅迫して、お金を脅し取ろうとするかもしれないよ」
都谷炎華は、笑顔になった。花のような笑顔だった。
「それについては、まったく心配しておりませんでした」
「どうしてです?」
「だって、電車内で、無関係なわたしを助けようとしてくれたのはあなただけでしたし、なにより、このような席と知りながら、こんなかわいいお嬢さんを連れてこられるような人なんですもの、無条件で信頼できるかただと、誰だってわかります」
ロビンはわたしを横目で見てから、都谷炎華を見た。あきらめたように長いため息をつくと、小声でなにごとかをつぶやいた。
わたしには、なにがつぶやかれたのかわかっていた。ロビンはこういったのだ。
「悪い病気」
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