ささげもの

    55555キリ番企画「読まずに感想文!」

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    藤真千歳「スワロウテイル 人工少女販売処」感想

     作者のSFに懸ける熱い信念を感じた一冊であった。人工の少女たちがいる世界と、そして迎えた悲劇的な破局を印象的かつダイナミックに描き出した傑作である。

     舞台は、人口のカーブが舞い降りる燕の尾のように下降曲線を描く近未来社会。再び人口を増大させるための起死回生の極秘プロジェクトが進められていた。そこにひとりの記憶喪失の少女が現れるところから物語は始まる。

     とにかく、作者の藤真氏と同名の少女、主人公である藤真千歳のキャラクター造形が強烈である。野性的でエネルギーに満ち溢れた、ブレーキの壊れたダンプカーのような少女。それが作者である藤真氏にとってどういう意味を持っているのかについては議論が必要だろう。このディストピアで一種の怪物として生きることが、はたして生命というものの積極的な肯定なのか、アイロニカルな諦念であるのかを判別することは難しい。作者として、藤真氏はどちらとも読めるよう細心の技巧を駆使して書いているからだ。

     もっとも、作中で「販売処」のシステムを任されている、藤真千歳の母体である「FUJIMA」との対話からは、単純な人間賛歌は読み取れない。静的な母体「ステイシス・マザー」である「FUJIMA」がなぜ「動的な娘」である藤真千歳を産み出さなければならなかったのかを考えるとき、読者は出雲神話においてオオムナジが先祖であるスサノオと根の方の国で対面したときのエピソードの裏返しであることに気づくのである。

     オオムナジに死に直面する試練を与え、自分から武具と姫とを奪った段階で祝福とオオクニヌシの名を与えたスサノオ。それに対して、藤真千歳から生涯の伴侶となる相手も、武器としての遺伝情報も奪い、人工少女、身体に埋め込まれたランダムな遺伝情報刺激システムにより、ひたすら人口増加のための子孫を生み出すだけのセミ・ヒューマノイドたちの雛型となることを要請する「FUJIMA」。もちろんそれは自分の娘である藤真千歳に現世から離れて自分のステイシスな王国を継がせることを意味する。

     もっとも、そのような一種の「母性的ファシズム」に対して、藤真千歳の持つ苛烈なまでの動的な精神は反旗を翻さざるを得ない。「雄性」と「母性」とが藤真千歳の中にアンバランスな形で並立していたことが、事態を悲劇としてのクライマックスに導いていくわけだが、それは宮崎駿の漫画作品「風の谷のナウシカ」のラストシーンにおいて、ナウシカの取った行動と重なって見える。いわば、この小説における藤真千歳の行動は、「ナウシカの決断の結果、世界はどうなったか」についての作者の藤真氏なりの回答であるともいえるだろう。

     そのような読みかたを離れて素直に読んでも、この小説が巻措くあたわぬ面白さを備えた良質のSF冒険小説であることに異論の余地はない。息苦しいまでのリアルさを持つ近未来社会の描写。人口減少に至る原因である「バイオエタノール飢饉」という皮肉なアイデア、まさに本年度のSF界を代表する傑作である。

     しかし、このような傑作をものする藤真氏が、著者略歴にあるような経歴を経てきたとはやはり思いがたい。むしろ筆者としては、この小説はまったく別の経歴を持つ人間が、仮面をかぶるような形で書いているのではないかとまで想像するほどなのである。



     ※ ※ ※ ※ ※



     (゜゜☆\(^_^;)誰が書評を書けといった!
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    ~ Comment ~

    Re: けいさん

    喜んでくださって嬉しいです(^_^)

    けいさんもやってみてはいかがでしょうか。架空の音楽評論とか。

    テンプレについては、南の島の青い海でめいっぱい泳ぎたい、といういじましい願いがこもってまして。ハワイとか行きたいです。安いそうだし日本語も通じるそうだし行ったことないし(^_^;)

    願いが昭和人のそれだなあ……(^_^;)

    NoTitle

    すごーい! 面白い! 企画が面白いです!

    脳みその筋肉をねぎらってさしあげたい。
    オリジナルを読んでみたい、との声、そして、
    この企画のシリーズ化を望む声、の出るほどの筆力、素晴らしいです。

    遅ればせながら、テンプレ、カッコいいです!

    Re: 面白半分さん

    気に入ってくれた人多いなあ。またなにかキリ番のおりにやるか……(^_^;)

    そのうち溜まったらレムの「完全な真空」をめざすか(← 自重しろわたし(^_^;))

    NoTitle

    すごい企画ですなあ

    しかも読んでみたくなってしまう感想文になってるところはさすがですね。

    思わずAmazonで”本当の”内容紹介を確認してしまいました。

    ぜひこの企画シリーズで続けてほしいなあ。

    オリジナル知ってる人も知らない人も楽しめそうです。

    Re: ダメ子さん

    どうして読んだこともなければ当分読む気もない小説のステマをしなければならんのだ(^^;)

    まあこの記事で「スワロウテイル」の売り上げが上がったら、わたしはブログ小説をやめてコピーライターを目指すかも(笑)

    NoTitle

    む、むずかしい
    微妙にステマっぽい内容な気がするのは
    私の心が汚れてるからでしょうか?w

    Re: 青井るいさん

    先にも書いたとおり、名前すら知りませんでしたこの小説(^^;)

    面白かったなら次のキリ番でもやってみようか。

    青井るいさんもチャレンジしてみたらいかがですか? 脳味噌の変な筋肉を使って面白いですよ。(^^)

    Re: limeさん

    いや、limeさんがご自身で書いた小説のほうが面白いプロットの作品になると思います。

    平均のコメント数を見れば一目瞭然(^^;)

    うーむ((じっと手を見る)(^^;))

    それはそれとして、テンプレ、どうしようか迷っています。個人的にノベルテンプレのシリーズを気に入っているのですが、またそのシリーズにしてlimeさんが読みにくくなったら困るしなあ、などと考えだすと……。

    とりあえず交換するのでどうなったかのコメをお願いします。

    ほんとは昨日やるつもりだったのですが、スキャンで10時間近くPCが使用できなかったので……。

    これかなり面白そうだぞ!(笑)
    書評としても文句無しに通用しそうです。(原作名前しかしらないのだけれど)

    読まずに読書感想文って知らなくて見る人とか居てもソレはソレで面白い事に……。

    お暇が有ればまたやって欲しいと思う面白い企画でした^^


    タイトルだけで、この構想。
    流石・・・。
    しかし、深そうな物語。ちょっと、手が出せないような雰囲気がムンムンします。

    ポールさんに、今自分が書こうとしている物語のタイトルを教えて、こんなふうに感想文を書いてもらいたくなりました。
    自分のプロットよりも、面白くなりそう^^

    そして、ちょっと困ったことに。
    ポールさんのこのテンプレ、なかなか小説ページに入れません。今日は14回くらい、更新クリックを押してしまいました。時間のない日はちょっと読めずにいます。私だけでしょうか。
    ランキングは難なく押せるのですが。

    Re: 山西 サキさん

    名前だけはどこかで聞いたことがありますが、もちろん読んだことはおろか手に取ったこともありません(^_^;)

    SF小説だろうことはわかりましたが、まったくのゼロから再構成するのはかなり困難な作業でした。もう半分やけくそ(^_^;)

    ストーリーを考えて登場人物を考えて、それを読んだ人間の反応を考えて、原稿用紙4枚にまとめる、いや脳みその変な筋肉を使った(^_^;)

    楽しかったけどしょっちゅうやったら倒れるなあ。だいいちわたしのネタがなくなる(笑)

    「ポール・ブリッツ『死霊術師の瞳』」だなんて攻めてこられたらどうしようかと思っていたのでほっとしましたが。

    好評だったらまたやるかなあ。のりやすい男(^_^;)

    なんだこれ!感想文というか書評を読んでいて、すごく面白そうです。書店で思わず手に取って、そして買ってしまいそうです。
    所々に原作のエッセンスが入り込んでいるのは、なお驚きです。作者ポール・ブリッツさんの確かな筆力と想像力に脱帽です。

    でも、ポールさんが絶対に見たことも無いような作品を選んでみました。いかがでしたでしょうか?MS-IMEのせいで(あくまで他人のせいにしようとする)ご迷惑をお掛けしましたが、こんなやり方もあるんだなぁ。と目から鱗でした。
    ありがとうございました。楽しかったです。
    また遊んでください。
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