「ショートショート」
SF
殺す……
殺す……殺してやる、あの女。いやらしい眼をしながらあの人につきまとって、絶対に、下心があるに決まってるわ。このままじゃ、あたしは捨てられてしまうかもしれない。殺す……バレないように殺るのよ。
殺す……あのクソ爺、絶対に墓場へ送ってやる。さっさとくたばればいいのに、寝たきりになって、おれの生活に迷惑ばかりかけて、まったくどうしたらいいものか。そのうえ、最近ボケの兆候まで見えてきた。殺す。さっさと殺して、身軽になって、一晩ぐっすりと寝てやるんだ。
殺す……あの男、この前からずっとあたしをつけまわしてる。電車に乗るときも、あたしと同じ車両に乗り込んできて。あたしが乗る車両を変えた後も、一ヶ月としないうちに同じ車両に乗ってくるし。ストーカーよ。あたしを殺そうとしてるに違いないわ。警察に相談しても笑われただけだし、もう待ってなんかいられない。殺られる前に殺るのよ。
殺す……総理のバカ野郎を殺してやる。この国の経済をダメにし、法律を改悪し、軍隊を弱くし、モラルの低下を招きやがったあの総理を。それどころか、ああの総理は外交でも失敗を重ねて、この国を外国にナメられっぱなしの情けない国家にしやがった。生かしちゃおかねえ。総理と取り巻きの与党政治家どもを皆殺しにしてやる!
殺す……誰でもいいから殺してやるわ。世の中に、なんの希望も抱けない。だったら、なにかひとつ憂さ晴らしをして、死刑になってこんな人生とさよならするのよ。ちょうどいいことに、近くに小さくて警備の手薄な幼稚園がある。そこを襲えば、包丁しか武器はなくても、三人くらいは殺せるはずよ。まずは準備を整えて……。
殺す……。
殺す……。
殺す……。
……………………
「溜まったな」
「まったくです、博士。人間の心に眠る殺意というものは、こうして取り出してみると膨大なものがありますね」
「まあ、それを吸収して処理するためにこの機械を作ったわけだがな」
「日本中の殺意や殺人衝動を吸収して圧縮化するとは、さすが先生は大天才でいらっしゃいます。で、この殺意のかたまり、どうします?」
「君にまかせるよ。当分世間に出てこないところがいい。放射性廃棄物の処理場とか、どこかそんなところを使わせてもらえないかかけあってくれないか? ええと、メ、メ……」
「メフィストフェレスです」
「そうだったな。ドイツ人の名前というものは舌を噛みそうでいかん。それはそれとして、さっさと処分するんだぞ!」
「わかっております、博士。処分する方法はいくらでもありますよ。そう、いくらでも……」
殺す……あのクソ爺、絶対に墓場へ送ってやる。さっさとくたばればいいのに、寝たきりになって、おれの生活に迷惑ばかりかけて、まったくどうしたらいいものか。そのうえ、最近ボケの兆候まで見えてきた。殺す。さっさと殺して、身軽になって、一晩ぐっすりと寝てやるんだ。
殺す……あの男、この前からずっとあたしをつけまわしてる。電車に乗るときも、あたしと同じ車両に乗り込んできて。あたしが乗る車両を変えた後も、一ヶ月としないうちに同じ車両に乗ってくるし。ストーカーよ。あたしを殺そうとしてるに違いないわ。警察に相談しても笑われただけだし、もう待ってなんかいられない。殺られる前に殺るのよ。
殺す……総理のバカ野郎を殺してやる。この国の経済をダメにし、法律を改悪し、軍隊を弱くし、モラルの低下を招きやがったあの総理を。それどころか、ああの総理は外交でも失敗を重ねて、この国を外国にナメられっぱなしの情けない国家にしやがった。生かしちゃおかねえ。総理と取り巻きの与党政治家どもを皆殺しにしてやる!
殺す……誰でもいいから殺してやるわ。世の中に、なんの希望も抱けない。だったら、なにかひとつ憂さ晴らしをして、死刑になってこんな人生とさよならするのよ。ちょうどいいことに、近くに小さくて警備の手薄な幼稚園がある。そこを襲えば、包丁しか武器はなくても、三人くらいは殺せるはずよ。まずは準備を整えて……。
殺す……。
殺す……。
殺す……。
……………………
「溜まったな」
「まったくです、博士。人間の心に眠る殺意というものは、こうして取り出してみると膨大なものがありますね」
「まあ、それを吸収して処理するためにこの機械を作ったわけだがな」
「日本中の殺意や殺人衝動を吸収して圧縮化するとは、さすが先生は大天才でいらっしゃいます。で、この殺意のかたまり、どうします?」
「君にまかせるよ。当分世間に出てこないところがいい。放射性廃棄物の処理場とか、どこかそんなところを使わせてもらえないかかけあってくれないか? ええと、メ、メ……」
「メフィストフェレスです」
「そうだったな。ドイツ人の名前というものは舌を噛みそうでいかん。それはそれとして、さっさと処分するんだぞ!」
「わかっております、博士。処分する方法はいくらでもありますよ。そう、いくらでも……」
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~ Comment ~
おはようございます^^
おお!
やっと辿り着いた。。。ここからですよね?
違ったりして^^;;;
最後の不穏な言葉が話を締めてますね。
ぅわっ!と最後に思いました。
殺意の圧縮――圧縮されたものを利用する輩が絶対出ますね。
確実に悪用で。
やっと辿り着いた。。。ここからですよね?
違ったりして^^;;;
最後の不穏な言葉が話を締めてますね。
ぅわっ!と最後に思いました。
殺意の圧縮――圧縮されたものを利用する輩が絶対出ますね。
確実に悪用で。
Re: 神田夏美さん
人じゃないよメフィストフェレスだよ。
もっと悪いか……(^^;)
この小説、あまりのブログ訪問者の数の少なさにいやけがさしたため、とりあえず刺激的な言葉を入れて様子をみようと書いてみたところ、
なんの変わりもなかった……(^^;)
という思い出の小説であります。
そりゃそうだよな。わはは。
もっと悪いか……(^^;)
この小説、あまりのブログ訪問者の数の少なさにいやけがさしたため、とりあえず刺激的な言葉を入れて様子をみようと書いてみたところ、
なんの変わりもなかった……(^^;)
という思い出の小説であります。
そりゃそうだよな。わはは。
こんばんは~
最後の「方法はいくらでもありますよ。いくらでも……」という言葉が不穏で印象的です。ううむ。この後どうなってしまうのでしょう。
これだけの殺意が圧縮されていたら、それは本当にとんでもない塊なんでしょうねえ……使用の仕方によってはとんでもない事件とかに発展しそうです。博士、そんなものを軽々と人に渡してしまっていいのですか……!(笑)
これだけの殺意が圧縮されていたら、それは本当にとんでもない塊なんでしょうねえ……使用の仕方によってはとんでもない事件とかに発展しそうです。博士、そんなものを軽々と人に渡してしまっていいのですか……!(笑)
いや~(汗)
>狼のしっぽさん
ほんとはミステリにするつもりだったんですが、結末をどうしようか悩みまして、いちばん安易な手に頼ってしまった次第でして(^^;)
わたし、ミステリ好きなはずなのに、ちっともミステリを書いてませんね(笑)。
この話は、とりあえずショッキングな文章を入れたら、人跡未踏のこのブログにも読みに来てくれる人がいるかな~、と思って書いたものであります。
甘かったようであります。
わたしくらいの齢の、文章を書きたがる人間で、星新一先生が嫌いな人なんていませんよ(^^)
もっとも、あの先生の真似をすると、たいていは大失敗をするんですが。ああ、星先生は天才だったなあ……。
ほんとはミステリにするつもりだったんですが、結末をどうしようか悩みまして、いちばん安易な手に頼ってしまった次第でして(^^;)
わたし、ミステリ好きなはずなのに、ちっともミステリを書いてませんね(笑)。
この話は、とりあえずショッキングな文章を入れたら、人跡未踏のこのブログにも読みに来てくれる人がいるかな~、と思って書いたものであります。
甘かったようであります。
わたしくらいの齢の、文章を書きたがる人間で、星新一先生が嫌いな人なんていませんよ(^^)
もっとも、あの先生の真似をすると、たいていは大失敗をするんですが。ああ、星先生は天才だったなあ……。
一瞬・・・
先ほどまでミステリー系が多かったのでこれもミステリーかと思ってました。
結末をみて「やられた~」です。
フェイントを見事くらいました。
タイトルや記事の位置的なバランスのセンスからも読者を引き込ませてしまいますね。
文章的なスタイルからして星新一さん的な感じをうけたのですが、もしかして星新一さんもお好きですか?
結末をみて「やられた~」です。
フェイントを見事くらいました。
タイトルや記事の位置的なバランスのセンスからも読者を引き込ませてしまいますね。
文章的なスタイルからして星新一さん的な感じをうけたのですが、もしかして星新一さんもお好きですか?
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Re: YUKAさん
そもそも渡す相手がメフィストフェレスくんだということ自体が破滅的事態以外の何物でもない(笑)
最初のSFからこういうオチだったのかわたし(^^;)