FC2ブログ

    「残念な男(二次創作シリーズ)」
    虐待(二次創作中編・完結)

    虐待 9-4

     ←虐待 9-3 →注文の多い公務員
     わたしは立ち上がった。都谷炎華の目に、理解の色が広がっていたからだ。

    「馬鹿なことを考えるのはやめろ」

     わたしはいった。都谷炎華はほほ笑みながら、わたしの目を見ていた。

    「きみがなにを考えているかはわかる。だが、それは間違った道だ。お願いだ、自首しろ、自首してくれ。わたしの一族には、優秀な弁護士のつてがある。わたしも行く。ともに刑務所で罪を清めるんだ。きみが出てくるまで、わたしは待つ。五年でも、十年でも、二十年でも、一万年だって待ってみせる。だから、そんなことを考えるのはやめろ、やめてくれ! お願いだから、やめてくれ!」

     わたしは懇願したが、都谷炎華はゆっくりとこちらに近づいてきた。わたしはじりじりと退がることしかできなかった。それほどまでに、ほほ笑む都谷炎華は、わたしにとって魅惑的すぎた。

    「やめろ……やめてくれ!」

     都谷炎華はわたしにそっと手を伸ばした。それを拒むだけの精神的な余力は、すでになかった。

     そのまま、都谷炎華はわたしの身体に身を預け、そしてわたしの唇にそっと自分の唇を……。

    「…………!」

     わたしは目を見開いた。口中にあふれてきたのは、まぎれもなく、甘く塩辛い、彼女の血の味だったからだ。

     頬の肉を噛み切ったのだ、と考えるゆとりができたのは、すべてが終わってからのことだった。わたしは衝動にうながされるままに、都谷炎華の口から、血を吸った。

     濃密な快楽の時間は、あっという間に終わった。わたしは空気のかたまりしか入っていない服を抱き、唇に白い灰をつけ、涙を流しながら立ち尽くしていた。

     わたしはのろのろと、内ポケットから携帯を取り出した。

     一度にふたりもの人間の生き血を吸ったのだ、わたしはもう満腹だ。しかし、のどの渇きは収まったものの、心は深い喪失感を覚えていた。一秒一秒が流れていくにしたがって、喪失感はより強く、心はますますうつろになっていくようだった。

     携帯の発信音は、まさに弔鐘そのものだった。この一連の殺人劇で、いったい誰が救われたというのか。そしてわたしはなにをしたのか。わたしにはほかになにかできることがあったのではないか。この百数十年、つねに考え続け、答えが出なかった問題だ。

     頭の中に、あの老警部補の顔が浮かんだ。女がふたり行方不明になったと聞いたら、決してわたしを許しはしないだろう。言葉通り、地の果てまでも追ってくるに違いない。

     電話がつながり、わたしはいった。

    「……ロビン?」



    (了)
    関連記事
    スポンサーサイト






     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ 3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ 3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ 3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    もくじ  3kaku_s_L.png X氏の日常
    【虐待 9-3】へ  【注文の多い公務員】へ

    ~ Comment ~

    Re: ミズマ。さん

    残念なやつ、ほんとに残念なやつですね~、困っちまいますね~(^_^;)

    ロビンちゃんには残念なやつとの結末も考えていないわけではありません。しかしこのシリーズ、「寅さん」や「浅見光彦」と同じく、主人公がゴールインしたら終わってしまうのです(^_^;) だから当分はこのストレスのたまる日常が続くわけですなわはは(鬼)

    それにしても、ロビンちゃん人気があるなあ。むしろ残念なやつは脇にしてロビンちゃん主人公でもよかったかなあ(笑)

    カイさんち乱入計画はまだ先になりそうです……(^_^;)

    NoTitle

    ようやく読ませていただきました!
    遅くなって申し訳ありません。


    今回のお話は、残念さんがどうとか、子を亡くした母がどうとかというよりも、ただひたすらにロビンちゃんかわいいよロビンちゃんかわいい、でした。←
    残念さんの側がいいのに、肝心の残念さんはホイホイ女に引っかかっては吸い殺しちゃってへこんでて、どうして懲りないのかなと嘆息しながらもしかし、じゃうロビンちゃんが大きくなったら良いじゃなない、というわけでもなく。大きくなったら本家が連れ戻しにきて残念さんとは引き離されないわけがない、という状況自体がかわいい。
    「かわいい」という日本語自体の存在意義を問うような感じになっておりますけれど、かわいいから仕方がない。かわいい。

    (あー、そういえばなにかの本で「かわいい」というのは「気に入った」と同じような意味なんですよ、というのがあったっけなぁ。実に良い解釈であります)

    残念さんは尽く、引っ掛ける女の人は尽く、ですねぇ(^_^;) 今回は狙ってなかったマネージャーさんまでいっちゃいましたもんね。おやおや、です。
    そうならないように、女性と会う前は輸血用血液パックでもちゅーちゅー吸ってから行けばいいんじゃないの、だなんて情緒のないことを考えてみたりもしましたが、もしそうだとしても結局はだめな予感がするなぁ。結局ちょっとイイな、と思った女の人の血は吸っちゃう残念さん。そして自己嫌悪に陥る残念さん。残念です。


    ところで最後のセリフは私も好きです。
    女の人二人を吸い殺した後に、この心細そうなセリフ。世の中の女性とかロビンちゃんとかロビンちゃんとかのハートを鷲掴みにするわけですね。←

    楽しませて下さってありがとうございました!
    乱文長文失礼致しましたー!

    Re: かえるママ21さん

    なにせ残念な男は、死を考えたような女としか縁のない男ですから(^_^;)

    面白く読んでくださってありがとうございます<(_ _)>

    Re: limeさん

    要するに「弁護の余地のない罪を犯した女」にばかり惚れてしまう男の話ですからねえ……。

    今のところ唯一の例外はロビンちゃんだけですが、あの娘も、もしかしたら……。

    最後のセリフは執筆当初から決めてました。気に入ってくれてよかった(^_^)

    Re: 卯月 朔さん

    「残念な男」の次回作は、正直、いつ書けるかわかりません。というか、今回の作品で、自分の限界を思い知り、小説について考え直す必要性を感じているからです。

    これまで突撃してなんとかなっていたのは単に「運が良かった」だけの話ではないか、と思うと……うむむ。

    ミステリ難しい。伏線をきちっと張って、予想外の結末に持って行くのは、わたしには無理かもしれん。

    修行しよう……。

    あとそれと、「ロビン」はあの娘の本名じゃないですよ。名家の出なので、長ったらしい舌を噛みそうな本名があります。決めてませんけれど、命名権については応相談で(笑)

    NoTitle

    うむ〜〜〜。都谷炎華のラスト、分かりますね。
    なんとなくですが、理解出来ます。
    生きていても生きた心地しなかったでしょうからね。

    面白かったです。

    NoTitle

    この女性二人のどちらにも、同じ女性として、同情の気持ちは湧いてきませんが、きっとポールさんもそういう方向で書いていないのだろうな、と、そこはサスペンスのラストの崖の上を茶の間で見ているように、見ていました。

    いちばんかわいそうだったのはやっぱり、この残念な男さん。
    なんとも、説明できない、悲愴なラストだったような。
    でも、これはやはり、この男とロビンの物語だったんだな、と思うと、腑に落ちます。
    最後のつぶやきが、哀愁のような余韻を残していて、好きでした。

    NoTitle

    続きはぁああああああああああああああああああああっorz

    いやでもここで締めるのがカッコイイってわかってますしこのあとはきっとロビンちゃんがブツブツ言いながらも事後処理を手配してくれるのでしょうけれども……続き、残念さん次回作……は……?(´;ω;`)

    連載おつかれさまでした! そしてありがとうございます!
    リアルがキツキツになってきたので……毎日拝読させていただくのが本当に楽しみでした! 後半明かされる怒涛の真相に、やっぱりポールさんすごいな、って……卯月の読みは全然当たってなかった><

    しかし、残念さん、切ないなあ。
    喉が渇いた、と言うたびに、ああ…ああ…(´;ω;`)って、なっていたのですが。残念さんの恋も実ってほしかったけど実れば実ったでモニョっとしそう!(酷いなあw

    残念さん、また出張に出ちゃうとは伺いましたが、期待を込めて次回作正座待機! しつつ、時間がとれたらロビンちゃんとヒフミお兄ちゃんをエンカウント、させたい、なあ……!(涙目(時間が来い

    Re: カテンベさん

    >置いていきそうですもんねぇ

    あっ……(汗)

    不覚_| ̄|○

    き、きっとあれです。自分の行き先を告げ口される可能性があったから、逃げる途中で死なせるなり捨てるなりするつもりだったんでしょうな結城博次は。うーむなんというひどい親だ。

    ……というより、ミステリに関しては、考えながら書くのはやめよう、わたし(汗汗)

    グイグイと話の世界にひきこまれました

    我が子のかわりのように思った隣人の子供を死に追いやってしまった、てのだから、この時点で自首なり自殺なりして清算してしまいたくなっていそうな気もするとこですけど。
    結局は、その経験を芸の肥やしにしていた、と全てが明らかにされてしまって、贖罪のつもりか、マネージャーに雇っていた人も死んでしまって、ようやく自分も死んで清算しようとしてしまったんでしょうか?
    新たに脅迫事件に殺人事件のもとをつくったようなもんですし、女優さんに振りまわされた感がありますね
    悲劇やわぁ

    子供がトランクに。てとこがよくわかんなかったけど、虐待の一環だったのかな?
    逃避行のつもりだったなら、置いていきそうですもんねぇ
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【虐待 9-3】へ
    • 【注文の多い公務員】へ