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    「ショートショート」
    SF

    貿易不均衡

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    「それで、その平行宇宙とのコンタクトは成功したんだな」

     銀河連合総裁は勢いこんで総合大学教授に尋ねた。教授はうなずいた。

    「間違いありません。相手がたの宇宙に住むエイリアンとは、われわれの翻訳機で、コンタクトできます。われわれの宇宙は、孤独ではなかったんです。しかし……」

    「しかし?」

    「相手が求めているものが、奇妙なんです。こちらにはごろごろしているものですが、どうやったら提供できるかすらもわからない」

    「ごろごろあるものなら、くれてやればいいだろう」

    「それなんですが……エントロピーって、どうやって相手に渡せというんですか」

    「エントロピー?」

     さすがの総裁も、言葉に詰まった。



     熱力学の第二法則。それは、エントロピー増大の法則である。熱は熱い物体から冷たい物体に流れ、決して逆にはならない。全ての物事は、秩序ある状態から乱雑な状態へと移行する。

    「要するに、向こうさんの宇宙では、エントロピー増大の法則ではなく、エントロピー減少の法則が、熱力学第二法則なんですな。どんな世界なのかなんて、聞かないでください。わたしだってよくわかってないんですから」

     教授は汗をぬぐった。

    「彼らの宇宙は、われわれに『交易』を望んでいます。彼らの文明は、エントロピー減少に苦しんでいる。われわれは、エントロピー増大に苦しんでいる。双方の利害は一致します。熱の交換という形で、こちらからエントロピーを輸出して、向こうから反エントロピーを輸入すれば、われわれは、無限のエネルギーを手に入れることができる。第二種永久機関なんて、まさにそれを目指したものですからな」

     総裁は首筋をぽりぽりかきながらいった。

    「難しい話はよくわからんが……エントロピーが商売の種になる時代が来たのか。かまわん、産業界が欲しがるだけ売って儲けてやれ」

    「いや、総裁、ルールと計画が必要です。古代のSF作家、アイザック・アシモフに、『神々自身』という作品があります。その作品中で、宇宙はあわやということになるんです」

    「やりすぎはいかんということか。一理あるな。よし、学者を召集して委員会を開こう。きみが議長をやりたまえ」



    「どうした、教授。コンタクト以来、世界はバラ色、わたしの再選も確実、いいことばかりじゃないか」

    「はあ……それなんですが、相手が『貿易完全自由化』を求めてきまして……もっと反エントロピーを輸入しないと、貿易停止とか……こちらからなにかしようとしても、なにぶん科学力に段違いの差がありまして……」

    「心配するな。わたしも、遠い昔から日本人とインド人の血が流れている……交渉に負けたふりして、うまくやるのは、才能があるんだ」

    「ほんとうですか?」

    「そうだとも。使っていた通貨まで、円とルピーだぞ」

    「…………」

     書いたわたしもエントロピーが急上昇。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    レス遅れスマソ。

    もしこんなことができたら、どちらにも無限のエネルギーが手に入ることになるから両方得なんですけどねえ。

    問題は、熱力学の第二法則がエントロピー減少っていう世界では、時間が流れることそれ自体が、われわれには理解不能だってことですね。

    SF界でいちばんマッドなアイデアを出すバリントン・J・ベイリー先生には、われわれにとっての時間と、反対方向に流れる時間とが正面衝突する「時間衝突」という作品があります。すごい話だったなあ。

    NoTitle

    …この辺は計算と演算の世界になりますけどね。
    どちらを選ぶ方がメリットがあるか・・・という兼ね合いもあります。
    大体、世界が変わるときは外圧からですけどね。

    物理は全く勉強していないので、コメントできませんが。

    Re: 面白半分さん

    実際の予定では、このエントロピー交易において、向こう側から「TPP」が突きつけられる、というはずだったのですが、眠くて頭が働かなくてこうなってしまいました(^^;)

    ちょっと心残りがある作品なのですが、喜んでもらえて嬉しいです(^^)

    NoTitle

    すごい大ネタを放り込んできたな、と思ったら
    そう来ましたか。
    ・・・・・・こんなの大好きです!

    Re: limeさん

    ラリー・ニーヴン御大に、

    「魔術師どの! 夏というのに、この洞窟は涼しくて気持ちいいですなあ」

    「便利な悪魔をつかまえましてな。おい、マクスウェル」

    というショートショートがあります。

    マクスウェルの悪魔は、分子に影響を与えるたび、それについての「情報」を消費し、補うためにエネルギーを使うので、熱力学の第二法則を崩すことにはならないそうであります。われわれの脳味噌や、コンピュータのやっている仕事は、エネルギーを情報に転換するということだそうですな。

    夢も希望もない話ですが、最後にはボルツマンの「宇宙の熱的死」にいっちまうのかなあ。ボルツマンは悩みすぎて自殺してしまったそうですが。

    NoTitle

    まさかのオチ(笑)
    でも、反エントロピーか・・・。
    その世界が、ちょっと想像できないんだけど、そういえばホーキングは、ある時点から時間は逆回転して巻き戻ってクラッシュして終わる・・・とかも行っていましたね。
    それも何か、エントロピーと関係してるのでしょうか。
    時間の矢の反転。
    ・・・時間が戻る・・・。
    お肌が・・・。

    どこかに、マクスウェルの悪魔がいたら、こっそり連れて帰りたいです。

    Re: かえるママ21さん

    自慢じゃないがダジャレは大好きです(^^)

    オヤジになったんだなあ……(じっと手を見る(汗))

    NoTitle

    わはははは

    今日は笑いました。おもしろーい。
    難しい事は分かりませんが
    ダジャレもありの、SFは想像してませんでしたよ。

    Re: 矢端想さん

    そのことについては、ざっと見ただけでも

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E9%80%B2%E5%8C%96#.E5.8C.96.E5.AD.A6.E9.80.B2.E5.8C.96.E8.AA.AC

    これだけの仮説が乱れ飛んでいるんだから聞かれても困る、というのが現状であります(^^;)

    個人的には、そのうち「化学進化仮説」のうちのどれかが立証され、ステイシスな状態からアクティブな状態に移るのに太陽エネルギーや地熱による影響があった、という結論に落ち着くのではないかと思っております。

    むろんすべては必然的に起こったことであり、「神すなわち自然」の内的必然性により小一時間えっとあのどこ行くの?

    NoTitle

    なるほど、そう言われれば説得力ありますな。
    進化を促す外的要因を「神」と呼ぶなら「太陽信仰」というのはかなり本質を見抜いたものと言えます。

    ・・・それじゃあ、太陽エネルギーが能動的に、それ自体を生命活動のエネルギーに変えるための最初の有機物の天文学的な分子配列による複雑系の構築を自ら行ったのかと小一時間(略)

    Re: 矢端想さん

    えー、マジレスしますと、「進化」も、熱力学の第二法則には違反していません。

    どこからも影響を受けない「閉鎖系」で、エントロピーが下がったら、たしかに熱力学の法則に反していますが、地球は閉鎖系ではないのであります。

    地球の生命の進化というものは、地球にふりそそぐ「太陽エネルギー」を使って、自分のエントロピーを減少させる作業であって、トータルで見ればエントロピーが低下した以上のエネルギーを使っているのであります。われわれが呼吸をするのも、飯を食うのも、成長するのも、こうやってブログ小説などを書くのも、もとをたどればほぼすべて「太陽エネルギー」に由来するものなのであります。

    そして最も効率のいい形で太陽エネルギーを利用している生命体こそが、あの「ウルトラマン」なのであります(ウソ)。

    Re: カテンベさん

    そこらへんは、深夜に脂汗を流しながらスマホを握りしめていたのでものすごくいいかげんです(^^;) エントロピーで貿易ができたらおもしろいんじゃないかな、と思っただけですので。並行宇宙を介した温度差発電というか。

    オチは……「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」を聴いていて思いつきました。そうだおれにはダジャレがあったんだ、と(笑)

    使いすぎには気をつけないとなあ。

    NoTitle

    ギャフン!やられた!地口かよっ!なーんだ。

    「進化」という現象を最もよく説明し切る概念が「反エントロピー」です。
    エントロピー増大論では説明しきれないこの現象をどう解釈するかが「進化論者」と「創造論者」の分かれ目ではないでしょうか。

    結局その世界の法則通りになってしまって意味をなさないような気もするけど。
    他の世界から持ち込まれると世界の法則をねじ曲げられるんやろか?

    そんなオチだなんて、うふ〜(o^^o)ですね
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