「ショートショート」
    その他

    ビジネスチャンス

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    「ビジネスチャンスだ」

     食品会社の社長室で、おれは机を叩いて叫んだ。

    「これは天が与えた千載一遇のチャンスだ!」

    「あのー、社長」

     野暮ったい恰好をしたおれの秘書が、呆れたような声を出した。

    「うちの取引先のホテルは、ことごとく契約打ち切りをしてきましたよ。まあしかたがないとはいえ、この逆風の中で……」

    「逆風が吹いたら三角帆を上げればいいんだ! まあ任せろ、さっそくだが、すぐにレトルト会社と、ネット通販会社に連絡を取ってくれ。ネット通販会社が取り扱っている商品は、怪しげであれば怪しげであるほどいい」

    「何をたくらんでいるんです……?」

    「そのくらい自分の頭で考えろ! ほら、さっさと働け!」



    「大当たりしましたね、あの食品」

     おれは秘書の手渡してくれた水割りを手に、パーティー会場を見渡した。

    「当然だ。ホテルに偽装食品を卸していたときは、いつばれるかと思っていたが、あのニュースを聞いたときに、ぱっとひらめいたんだ。『一流ホテルが認めた「もどき食品」! ホテルの味を、格安簡単に! とびこが! エビが! 牛肉が!』 格安でネット通販で流せば、最初は興味本位で買ってくれた客も、リピーターになってくれると踏んだんだ。なにせ味はマジで『一流ホテルが認めた』ものなんだからな」

     おれはちらりと時計を見た。はっとしたように秘書も時計を見た。

    「すみません、社長。もうそろそろ出ませんと、飛行機のお時間が」

    「うむ。おれたちの前には、無数のマーケットが広がっているんだ」

     そうだった。中国、韓国、東南アジア……安全でうまい「もどき」食品のノウハウを知りたい国は、いくらでもあるのだ。

     そのとき、秘書の携帯が鳴った。

    「……失礼します、社長。はい。はい。ええっ!」

    「どうした?」

     秘書は泣きそうな顔になった。

    「社長、原発でさらなる事故です。風評を恐れて、訪問予定先が、次々とキャンセルの連絡を……」

     おれは大声で叫んだ。

    「ビジネスチャンスだ!」

     秘書が、期待に満ちた瞳でおれを見た。

     残念ながら、どうしてこれがビジネスチャンスにつながるのか、おれはわからなかった。

     だがしかし、強烈なショックというものは、比例するだけのエネルギーを持っているものだ。エネルギーをうまく使えれば、莫大な利益を上げられるチャンスが……。

     おれは脳細胞をフル回転させて考え始めた。



     この騒ぎで儲けるためのアイデアが出たときには、すでに第三次世界大戦が始まった後だった。

     アイデアは無駄になってしまったが、当然のごとく、おれはコンバット・レーションを作る工場を買って、大儲けした。

     世の中、頭を使ったやつの勝ちというものだぜ。

     あと、残る問題は、戦争が終わったいま、目の前にある十三段の階段を、戦犯として登らなくてはならないというささいなことだけだが……まあ、これまでもなんとかなったことだし、これもひとつのビジネスチャンスになるんじゃないかな。

     たぶん……。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    でも起業はハズレの多いバクチみたいなもんだからなあ。

    商売では新機軸をひた走るより、ひたすら猿真似に徹して実利を稼ぐのがいいのかもしれません。

    NoTitle

    他人の事故にほくそ笑む企業。
    「やはり自分は正しかった」と笑う企業がどこかにいる。
    時代が変わりつつありますね。
    これからも日本も色々な意味で楽しみです。
    エネルギーにしても、他の問題にしても。

    Re: かえるママ21さん

    世の中には、ヒマな研究者がいて、死刑のあらゆる方法について、

    「どれが一番苦痛が少ないか」を調べたそうであります。

    結論は、毒物の注射、ということになったとか。たしかいつかのイグ・ノーベル賞を取っていたはずなのですが。

    NoTitle

    へんな観点からの感想ですが、日本の場合の死刑というのは、無痛であの世へ行けるらいしので、神の世界に無痛で旅立てるということが、幸運と思えるかえるままです・・・

    Re: けいさん

    哲学を学んだボードゲームファンはもっとメーカーも採用していいような。

    偏見のない目でものを見ることに慣れているから、誰も思いもしないところからアイデアを取り出してくる。

    浮かんだアイデアは、哲学で培った論理的思考力で具体的な形にすることができる。

    ゲームの経験から、リスクとリターンを冷静に判断し、売り込みにしても、他者との交渉はお手のもの。


    ……これでカネを儲ける才能さえ備わっていれば(笑)

    Re: 矢端想さん

    わたしの考える商売のアイデアなんて、ドロンボーのインチキ商売みたいなものですよ。(^_^;)

    だいいち商才があったらわたしの同人誌も(´・ω・`)

    Re: 火消茶腕さん

    そういやラリー・ニーヴン先生のSFにあったなあ。

    移植用の臓器が不足する未来社会で、富裕層が臓器を得るために、

    「交通違反でも死刑」にしてしまう世界……(^^)

    NoTitle

    ありゃりゃ。
    けど、頭良いですね。

    ポジポジの発想がやはりチャンスを生むのではと。
    脳は生きているうちに使わねば。

    NoTitle

    ポールさん、商売の才覚があると思うんだけど・・・残念だなあ。

    いいことを思いつきました。
    そういう「儲かる商売の発想術」みたいのをビジネス書として出すのはどう?今一番売れるタイプの本です。読者に理解できない小難しそうな言葉を適当にちりばめながらハッタリかましてその気にさせる。著者はいかにも「成功者」を装って演じ切ること。著者の肩書がないと説得力がないから、そこはデッチ上げで。「〇〇大学哲学科(中退)」と書くだけでもわけわからん市民は騙されること請け合い。

    世の中は頭使って楽して儲けた奴が勝ちw

    NoTitle

    読ませていただきました。

    最近の偽装食品の話題をうまく料理していて感心しました。

    戦犯の臓器はオークションにかけて売るようにするのはどうでしょう。

    ビジネスチャ~ンス!
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