私家版オールタイム・裏ベスト(映画)

    邦画裏ベスト5「機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙編」

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     個人的な好みで悪いが、実は、ガンダムシリーズ最初の作品である「機動戦士ガンダム」のうち、最初の66パーセントの部分はあまり好きではない。ではお前はなにが楽しくて「ガンダム」を見ておるんだ、といわれたら、残りの後半34パーセント、ホワイトベースが再び宇宙へ飛び立ってからの、アムロたちがすっかり兵士になってジオン軍の精鋭たちを殺して殺して殺して殺して殺す、サイド3への旅が大好きだからです、と答える。

     だから、この映画も大好きである。単体で好きなのである。難民だ脱走だなどというものはうっちゃって、ひたすらビームとミサイルが炸裂し、物量と物量がドカドカぶつかり合う宇宙の戦いをこれでもかこれでもかこれでもかこれでもかと見せる、それが正しい戦争エンターテインメント映画だと思うし、その点でこれはすばらしい。兵器を奪って脱走なんかしたら、普通は銃殺刑ではないのか、と思っていたわたしにとって、テレビシリーズの中盤と「哀・戦士」はどうも納得いかない作品なのであった。

     まあそれはそれでいい。「めぐりあい」「ビギニング」というふたつの名曲をバックに描かれるソロモンとア・バオア・クーでの大決戦は、当時劇場で見たわたしにとって、すばらしいのひとことだった。内容はみな知っているだろうから省くが、実に美しく見えた。

     しかし、この映画にも不満な点があるのだ。

     どうしてGファイターが登場しないのだ! コアブースターなどでは、ニュータイプが覚醒したセイラさんの破壊力が表現できないではないか! Gファイターがビームをばかすか撃って敵をどかすか殺すから溜飲が下がるのではないか!

     ……いいんだけどね。

     この映画について書いていると、竹熊健太郎先生と相原コージ先生が、不朽の名著「サルでも描けるまんが教室」で、「戦争とてえま」と題して描いたマンガが「真実」であることが実によくわかってなんである。建前として掲げる「表テーマ」と、受け手の興味の中心である「裏テーマ」の存在を喝破したのは恐ろしいまでの冴えであった。当時は大笑いするだけであったが、こうして自身を振り返ると恐ろしさに慄然とする。

     誰の心もわしづかみにする面白さこそが、戦争というもののほんとうの恐ろしさではないか? エンターテインメントとして消費しているうちはいいが、エンターテインメントゆえの勝ち戦を現実と混同し始めると……。

     やはり戦争については厭戦反戦の態度を常日頃から取っておくべきだろう。そうでないと、どこかの国のようになる。

     しかし……ア・バオア・クー攻防戦、美しいんだよなあ。富野監督は「イデオン」でさらに美しい戦争を撮るのだが……戦争の悲惨さを保ったまま、美しい映像が撮れる人はうらやましいよなあ……。

     「プライベート・ライアン」冒頭における恐怖のノルマンディー上陸作戦、そこにも、どこか「グロテスクでヒューマニズムのかけらもないがゆえに美しいと呼ぶしかないなにか」を感じる。

     ヒエロニムス・ボスが幻視したように、地獄というのは美しいものなのかもしれない。
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    ~ Comment ~

    Re: ヒロハルさん

    Gメカ自体が、おもちゃメーカーによるテコ入れでできた代物ですし、劇場版にあたって差し替えられたのも当たり前なのですが、それでもわたしにはどうしても、コアブースターがそんなに強力な兵器だとは思えないのだッ!(笑)

    テレビ版と映画版では、上映時間にかけられるだけの予算も人手も違うし、テレビ版と同じクオリティだったら暴動ものでしょう(^_^;)

    しかし今考えても、当時のガンダムブームは熱かったですね……。

    NoTitle

     Gファイター(Gアーマー)は兵器としてのリアリティを追及すると、ちょいオモチャっぽかったので、映画版ではやめたらしいですね。
     ガンタンクの代わりに、ガンキャノンが二機になったのも同じような理由だそうで。(タンクが宇宙飛んじゃまずいだろって)

     そんな理由もあってか、TV版よりは映画版のほうが断然よくなってますね。
     テレビ版は、どこか幼稚というか、絵も雑。
     赤い彗星もなんか妙にうろたえたりしているし、ララァの私服をキシリアに怒られたりと、あまり格好よろしくありません。

     戦争論への参加は、難しそうなので、やめておきますね
    。笑。

    Re: 安田 勁さん

    まあわたしみたいに美しいだなどとほざけるのは、自分が「外部」にいるからなんでしょうね。

    シューティングゲームで大量殺戮をしているプレイヤーがその光景を美しいと思うように。

    実際にただ中にいたら、それどころじゃありません。熱くて痛くて寒くてひもじくてつらいだけです。やはり厭戦主義で行きたいものですね。

    「めぐりあい」は風呂場でひとりで湯につかっているときよく歌います(笑)

    NoTitle

    「グロテスクでヒューマニズムのかけらもないがゆえに美しいと呼ぶしかないなにか」って、なんか分かる気がする。
    ドイツ兵に胸を刺されるメリッシュ、砲撃で吹き飛ばされるアーシュラ、宇宙空間で花火のように消えゆくMS…

    「戦争が悪いものと考えられている限り、戦争はいつまでものその魅力を持つだろう。戦争が野卑なものと考えられる時、それは人気を持たなくなるだろう。」
    ってオスカー・ワイルドが言ってました。
    なにはともあれ、『めぐりあい』は名曲ですね。

    Re: miss.keyさん

    まあSFでまともに戦争を描こうとすれば、谷甲州先生の「航空宇宙軍史」みたいに、ビームやミサイルではなく「機雷」をばらまくだけ、という地味なものになってしまうでしょうね。

    その中でも戦艦ファンには涙がちょちょ切れる話、「巡洋艦サラマンダー」では、独立を求める外惑星連合軍がレーザー砲なんかを搭載した巡洋艦を作ったはいいものの、追う航空宇宙軍側のほうで、「戦力差がありすぎて、補給物資の移動だけでサラマンダーに勝ってしまった。わたしがやりたかったのはこのようないくさではありません」といわれてしまう始末。

    好きなんだけど、絶版かなあ。もう一度読みたいなあ……。

    Re: オリバーさん

    そういえばわたしも古本屋でも新刊書店でも見たことないですねえ。

    もしかしたらアマゾンではプレミアがついていた、とか?

    個人的なお気に入り戦争映画は、キューブリック監督の「フルメタル・ジャケットです。戦争なんか正気じゃできないことがよくわかります。ドイツ映画の「橋」もいい映画だったなあ。

    Re: 宵乃さん

    あとあのアニメにもうひとつ文句をつけるとしたら、「五十階建てのビルほどの高さがある」宇宙戦艦が、まるでホワイトベースくらいの大きさにしか見えないところがなんかもやもや(^_^;)

    まあ映画の宿命ではありますが(^_^;)

    あとそれから、よかったら相互リンクしませんか? 今日も映画見てきましたので。

    SF戦争にリアリティを求めると最後は何も書けなくなる

     こんにちは。
     ガンダム好きですねぇ。物量対物量のガチンコ勝負。好きですねぇ。特に量産型の権化ザクと間に合わなかった新鋭機ゲルググ、それまでありえなかった革新的形状を戦艦にもたらしたムサイ。そしてコストパフォーマンスをひたすら追求したボール。MSは寧ろ全部ザクでも良かったかも。いあいあ、ボールばっかりの方がよりリアリティあるかも。
     わたしも以前SF宇宙戦争の物語を書きました。が、リアリティを追求すればする程にありえない事が判ってくるのです。
     ガンダムであればMSの必然性に行き付くので、もう物語事態が成立しません。
     銀英伝であれば相対性理論で完璧に破綻します。さあ、アスターテで大勝利。恩賞たっぷり嬉しいなーと帝国に帰ってみたら、既に帰るべき星は数千年前に廃墟になっとりました・・・とかね。
     あとシリウス対地球の戦争とか、無茶言うなです。シリウスの放射するエネルギーは余りにも強烈過ぎて地球程度の公転軌道上の惑星では生存不可能です。主星から離れた惑星となると夏冬が長すぎて人類生存に必要な農作物の生産は不可能です。よって人工コロニーに居住するしかありませんが、そんなもの造るなら何もシリウスじゃなくても良い。我等がSOL太陽のエネルギーですら使いこなせていないのに遠くへ行く必要がないのです。
     包囲についても宇宙戦争では論外です。現代であっても銃器部隊による挟み討ちはタブーとされています。流れ弾で同士撃ちになるからです。宇宙空間であれば、流れ弾は慣性によって永遠に飛び続けます。完全に包囲なんてしたら相手も全滅するかもしれませんが味方も壊滅します。でもって相手の爆発は初速のままに球状に広がりますから、接近しながら攻撃した時点でどちらも生存不可能です。つまり、宇宙空間同士のドンパチは出来ないのです。
     そして一番怖いのが、未知の生命体です。同じアミノ酸を利用して体を構成している生命だとすれば、『宇宙戦争』になる事間違いなし。ただし、『宇宙戦争』で微生物のの被害者は侵略者側でしたが、本来侵略された側も微生物の餌食になります。つまり、異星人とのコンタクトは破滅に直結します。もし生命の居る惑星を見つけたら有無を言わさずアクシズを千発位叩き込みますね。私なら。
     えー、話が随分脱線してしまいましたが、SFの戦争ものって、どうあがいても突っ込まれる運命なのですよ。

    ガンダムですか…関係有りませんが
    安彦良和さんの虹色のトロツキーが
    読んでみたいんですよね、
    じぇんじぇん古本屋に無いんですよね、アレ
    戦争映画なら“禁じられた遊び”かなぁ、それしか思いつかん。
    最近観たのは“サハラ戦車隊”だったりします。
    なんか偏りがあるような…。
    プライベートライアン、観たいんですよね、
    時間が無いんで観れませんけども。

    しつこくてすみません

    >一騎打ちよりも、アノニムな大軍同士が激突して屍山血河するところにロマンを感じる。

    やっぱり男のロマンなんでしょうか。戦士の血が騒ぐのかな?

    >三方向から包囲って、四方向からやらないと包囲にならないんじゃないか、と。

    あの戦艦、逃げるには旋回しなくてはならず、そんなことをしてたらほぼ確実に負けるので、包囲と変わらないような…。窮鼠猫を咬むとも言いますしね。
    戦艦をバックできるように造ればいいのに…とは何度も思いました(笑)

    >現代日本のありかたを描いたとしか思えない自由惑星同盟の日常に、田中先生のすごさを感じるであります。

    古さを感じさせないですよね。原作を読んだことはありませんが、アニメからもただならぬオーラを感じました!

    Re: 宵乃さん

    うーん、個人的には、連邦軍の艦艇からドカドカ発進して数で圧倒するジムとボールの大群にぞくぞくするほうでして。一騎打ちよりも、アノニムな大軍同士が激突して屍山血河するところにロマンを感じる。

    銀英伝は、原作は面白く読みましたが、アニメ版は最初の四話で飽きました(^_^;)

    銀英伝の戦略戦術にもちょっと納得がいかないところがあって、どうして三次元の宇宙での戦いなのに、みんな平面的な作戦をとるのか、という……(^_^;) 三方向から包囲って、四方向からやらないと包囲にならないんじゃないか、と。どうでもいいですが。

    むしろ、銀英伝は、現代日本のありかたを描いたとしか思えない自由惑星同盟の日常に、田中先生のすごさを感じるであります。

    プライベート・ライアンは……やはり感性の違いですかねえ。うーん。

    NoTitle

    美しいですか~、ちょっとわたしにはわからない感覚です。
    どちらかというと一騎打ち的なのが好きなので(笑)
    次々と敵が破壊されていくシーンは、美しさより虚しさを感じます。

    ガンダムって爆発がピンクなのが気になりませんか?
    宇宙の戦争シーンで印象に残ってるのは、「銀河英雄伝説」ですね。戦略、戦術がしっかり描かれるタイプは結構好きです。

    >「プライベート・ライアン」冒頭における恐怖のノルマンディー上陸作戦、そこにも、どこか「グロテスクでヒューマニズムのかけらもないがゆえに美しいと呼ぶしかないなにか」を感じる。

    最近、映画ブログ友達にその作品の話を聞きましたが(わたしは未見です)、冒頭以外は良かったという感じでした。
    やっぱり男性と女性では感じ方がぜんぜん違うんですね~。
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