FC2ブログ

    私家版オールタイム・裏ベスト(映画)

    邦画裏ベスト7「がんばれ!! タブチくん!!」シリーズ三作品

     ←ホラーが書けない夜 →邦画裏ベスト8「恐竜・怪鳥の伝説」
     正直にいう。この作品大好きである。この映画によりはじめていしいひさいち先生の作品に触れ、腹を抱えて大笑いした。

     だが、そんな作品がなぜ「裏ベスト」なのか?

     答えは簡単である。わたしはこの作品を当時の劇場で見たわけではないからだ。この作品、時事ネタのかたまりで、この映画を見るたびに、当時のプロ野球界をよく知ってさえいたらもっと面白かったのに、という思いから逃れられないのである。

     いしい先生のマンガだから、繰り出されるギャグはめちゃくちゃ面白い。よくもこんなバカなことを次々と考えられるものだ、と思う。

     声優のキャスティングもすばらしい。西田敏行氏の演じるタブチは、善人タブチとしてまさにぴったり、適役である。

     しかし、この映画を見ることによって、「がんばれ!! タブチくん!!」を読んだ気になっていたのではないか、という疑念がぬぐいきれないのである。

     原作者のいしいひさいち先生は熱心なヤクルトスワローズファンであることは有名である。もともと、そのマンガの中に出てくるタブチ選手は、「阪神の」、「作者として嫌いにもほどがある選手」であることに意味があった。初期のマンガにおいては、田淵選手はすさまじいまでのデフォルメがほどこされ、悪意の象徴みたいにして描かれていた。

     しかし今、いしい先生のマンガに出てくる田淵選手は、すっかり毒抜きがされた「タブチ」というキャラクターになっている。まさに西田敏行氏の声がぴったり来る、「善人」タブチである。

     そうした「タブチ」というキャラクターの転回点が、あのマンガのヒットと、この映画「がんばれ!! タブチくん!!」にあるのではないかと考えると、善人として描かれているこの映画のタブチ選手の一挙一動に、原作者であるいしい先生の「苦悩」が見出されるように思えるのである。

     この視点に立って、もう一度この映画を見ていると、爆笑に次ぐ爆笑のシーンのひとつひとつに、いわくいいがたいなにかがにじみ出てくる。それは、ヒロオカ監督にしろ、ヤスダ投手にしろ同じである。

     映画という「祭りの時間」が終わった後の、ピークが過ぎ去った選手たち、その運命を考えると、第二作と第三作のエンディングで流される「がんばれば、愛」の印象は重い。そして映画封切りから三十年の年月が流れた今、この映画を見て感じられることは、「寂しさ」なのである。笑いながらも、どうしようもない寂寥感が、見るものにのしかかってくる。そしてそれは、傑作テレビシリーズ「おじゃまんが山田くん」や「ののちゃん」はもちろん、駄作のきわみといえる「ホーホケキョ となりの山田くん」を見てもわからない寂寥感なのである。

     映画は楽しいにこしたことはない。だが、楽しい時間が「どんどん減っていく」ことを見るものに気づかせてしまう喜劇映画は、喜劇として深刻な弱点を持っているといえるのではないか。そういう意味で、裏ベストに入れた。悩んだのだが。
    関連記事
    スポンサーサイト






    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    【ホラーが書けない夜】へ  【邦画裏ベスト8「恐竜・怪鳥の伝説」】へ

    ~ Comment ~

    Re: レバニラさん

    いや、別にそこまで亀裂が走ることでもないと思うのですが。

    「タブチくん」って、「1回表」から「延長戦」までを2時間の間にやるわけではないですか。

    見てるうちに、「あっもう7回だ」「もう8回だ!」となってしまい、楽しい時間が終わりに近づいてくることが否応なく突きつけられてしまうわけですよ。

    1クール13話30分のシリーズ番組なんかだったら、一話の時間が長いから、それなりに満足して見られるし、ショートコント形式でも「いまどこらへん」ということがわからないつくりだったら、気が付いたときには終わっていた、ああ面白かった、となりますが、この「タブチくん」ではそこらへんがいつも残念に思えて……。

    面白い本の残りページが減っていくのが残念だ、という気持ちと似たものがあります。

    そのへんについてもうちょっとお話して、意見の違っているところと話が合うところを明確にしておきたいですね。

    この「裏ベスト」で取り上げている映画はいずれも、好きな作品とか印象に残って離れない作品だけど、なにかもやもやとして素直に好きというのにはためらいがある、というやつばかりで、そのもやもやを言葉にしようとして四苦八苦しているというところです。

    だから自分のネガティブなところと対決しなければならないのですが、それもうまくいっているかどうかわかりません。

    夜も遅いのでここまでで……。

    NoTitle

    >楽しい時間が「どんどん減っていく」ことを見るものに気づかせてしまう喜劇映画は、喜劇として深刻な弱点を持っているといえるのではないか
    う~ん・・・流石にそういう心境まで理解出来ないのは、俺がまだ若い、そして青い証拠なのか、
    タブチくんと同じように、当初は過激な路線を踏んで漫画誌・アクションで活躍していた「ルパン三世」や「クレヨンしんちゃん」が、マイルド路線にシフトすると同時に国民的人気シリーズに変わっていったのは幸か不幸か。
    どんな路線に行くにしろ「これはこれで面白い」と簡単に受け入れてしまった俺には一体、この世界がどう見えているんだろう。

    少なくとも、この辺りでポールさん、アンタとは進むべき道を違えてしまったようだ。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【ホラーが書けない夜】へ
    • 【邦画裏ベスト8「恐竜・怪鳥の伝説」】へ