「ショートショート」
    ホラー

    ホラーが書けない夜

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     冬だというのにまた読みたくなって、W・F・ハーヴィーという作家の「炎天」という短編ホラー小説が収録されたアンソロジーを借りてきた。短い作品なので何度も何度も読んでいるが、これだけ読んでそれでも怖いというのはすごい。

     いい作品を読むと自分もホラー小説を書きたくなってくるというもので、夜の夜中にこうしてパソコンでワードを開いているが、書きたくなってきただけで書けるほど、ホラー小説は甘くはないのであった。なにしろ、面白い作品と面白くない作品が、「怖いか怖くないか」だけで決まってしまうのだ。ユーモア小説が「笑えるか笑えないか」だけで決まってしまうのと同様、厳しいジャンルといえる。

     こういうときは「恐怖」というものはなにか、から考えたほうがいいかもしれない。

     わたしたちはなにが「怖い」のか。

     しばし考えた末、ホラー小説における「怖さ」のほとんどは「悪意」ではないかという結論に達した。「人間が怖い」タイプのホラー小説は「読者が感情移入するなにかに対して悪意を持っている人間が怖い」わけであり、「怪物が怖い」タイプのホラー小説は「読者が感情移入するなにかに対して悪意を持っている怪物が怖い」のであり、「なにがなんだかよくわからんけど怖い」タイプのホラー小説は、「読者が感情移入するなにかに対して悪意を持っている運命が怖い」と考えると、なんとなく腑に落ちた気がする。

     ホラーとギャグが紙一重というのは、同じシチュエーションでも「悪意」が作り手と読み手のどちら側にあるか、で変わってくるからだろう。前に清水義範先生の短編で、雑誌掲載時に腹を抱えてバカ笑いしながら読んだ小説が、のちにエッセイで「この恐怖小説は」と書かれていたのを見てびっくりしたのを覚えている。

     よし。これで哲学的な定義みたいなものはできた。それを実践に移せばホラー小説が書けるはずだ。……書けるはずだがやっぱり書けない。現実の前に哲学は無力である。

     そもそも、悪意、とはなんだ。昔は、それがわかっていたような気がする。まだ幼かったわたし、少年のころのわたし、大学で書物と悪戦苦闘していたころのわたしなら。

     今はそれがわからなくなっている。一年前、政府主導で、国民全員の脳になにかの金属片が埋め込まれてから、誰も自分から能動的に「悪意」というものを持つことができなくなっているのだ。

     わたしにできることは、過去のホラー小説を読んでおぼろげながらに怖さを感じることくらいだ。

     パソコンのページは白いままだ。ホラー小説は、いっこうに書ける感じがしない……。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん、

    未知の者はその裏に「悪意」を隠している、と考えることで人間は進化してきましたからねえ……。

    もうこれはどうしようもないですな(^_^;)

    パソコン直りましたか。見に行きますね~(^_^)/

    NoTitle

    未知なもの・・・というものが恐怖というのもありますよね。
    どうなるかわからないというのも。
    まあ、視点の問題ですが。
    恐怖やホラーが書ける人はすごいなと思います。
    ・・・というのも、書くと読むで視点が変わりますからね。

    ようやく戻ってきました。お待たせしました。。。
    またコメントさせていただきます。

    Re: limeさん

    基本的にエッセイは、日記をつけるくらいで極力書かないことにしています。

    エッセイを書きはじめるとそちらのほうばかりになってしまいそうで。

    そしてエッセイも難しいからなあ。映画についての感想文を書くだけであっぷあっぷ。

    ショートショートもあっぷあっぷ(笑)



    怖いものというのは、なんだかんだいっても、「死」に直結するようなものだと思うであります。「悪意」はその象徴というか、道ですね。

    ブラックジョークは、不謹慎であれば不謹慎なほど面白いですけれど、不謹慎なほど怖い。筒井康隆先生が「不謹慎な笑い」を追求した結果怖くなってしまうのに対し、阿刀田高先生は「怖い話」を書こうとして、「不謹慎な笑い」が生まれてしまうのではないかな、と思います。

    太宰治先生はどっちだろ。

    Re: 面白半分さん

    えー、怖くていいホラーじゃん、「炎天」(^^)

    個人的には「八月の熱波」よりは「炎天」のほうが恐怖を刺激する訳だと思います。

    ネットサーフィンしていたら「ハーヴィーの邦訳短編集を出せ!」という意見がありましたが、同意ですなあ。国書刊行会さんか論創さんに根性を見せてもらいたいものです。寡作だそうだからすぐに全集もできると思うんだけど(^^)

    Re: レルバルさん

    そういうきみには、筒井康隆大先生のギャグ小説の傑作、

    「バブリング創世記」をおすすめしよう。

    脳味噌がシェイクするぜベイベー!(笑)

    Re: ダメ子さん

    ストーリーのおもしろさで勝負するホラーがあってもいいことはもちろんですが、

    「恐怖」を感じない小説をホラーと読んでいいのかはどうかと(^^;)

    ストーリーがなくて記号の羅列が書かれているだけでも、それを読んで混じりけのない「恐怖」を感じたら、それはホラーだと思います。

    逆に、ホラーっぽいけど「怖くない」作品があったら、それは「ミステリ」とか「ファンタジー」とか「SF」とか呼んだほうがいいような……。

    Re: カテンベさん

    ミザリーに出てくるそういうおばちゃんには埋め込まれる金属片もそれなりに大きくなって……。

    嗚呼ディストピア(^^)




    NoTitle

    いつも、「あれ、これはエッセイかな?」と思って読むと、SSなのですよね。
    ちゃんとオチが入ってて。

    何を怖いと思うか。
    結構そこのところは、人間、似てるような気がします。
    悪意、そして、理解できないもの。

    私は昔、筒井康隆や、阿刀田高が、怖かったなあ・・・。
    笑っていいのか気持ち悪がっていいのか、その中間の不快さが、怖かったです。
    幽霊ものって、そう考えるとあまり怖くない・・・?
    いや、やっぱり怖い^^;

    NoTitle

    "現実の前に哲学は無力"
    なかなかいいフレーズですなあ。

    さて私としては”八月の熱波”のタイトルでおなじみの「炎天」ですが
    読むきっかけを与えてくれたのはポール・ブリッツさんです。

    よくもこんな怖い話を読ませやがって!!!
    ってかんじですね。


    ちなみに
    このコメントの認証用キーワードが
    ”きゅうきゆうきゆうきゅう”となりましたが字ズラがなぜかコワイ

    NoTitle

    ホラーも、ほら。
    ストーリーがないとわからないですってはい!!

    NoTitle

    ホラーにストーリー性を求めてしまう私は珍しいのかな?
    もしやチップが埋められてるんじゃ…

    理解を越えたものに対する感情というものは害があるかないかは別にして恐怖に似たものをおぼえたりするものなんでしょうね
    スティーブン・キングのミザリーに出てくるアニーみたいに、本人的には至極真っ当な行為なんだけど、てなのもこわいですよねー

    Re: ツバサさん

    どうやって楳図かずお先生はあんなに怖いマンガを量産できたのか不思議です。やはり天才なんだろうな……。

    わたしも精進しよう。うむむ。(^_^;)

    NoTitle

    確かにホラー作品は書くのが難しそうですもんね。
    「怖い」というテーマが決まっている訳ですが、
    その「怖い」と感じさせるまで、
    どんな表現や状況を作る出すというのも大変そうですしね(・∀・;)

    Re: 火消茶腕さん

    家族が図書館でモダンホラー小説のアンソロジー借りてきまして。

    横から読む時間はなかったのですが、タイトルと作者名を眺めているとなぜか無性に怖い話が書きたくなりまして。

    でもホラー小説って、難しいでしょう。定義を明確にしたら書けるかな、とうんうんうなりながらパソコンに向かっていたら、このオチが思いついたのです。

    ラッキー、やったぜ、と思ったときにはすでに夜どころか夕方だったという(笑)

    この作品に影響を与えたのがあるとすれば、竹本健治先生の「恐怖」という作品ですね。なにかのアンソロジーに入っていたはずですが、興味があったら探してみてください。傑作短編ホラーです(^^)

    NoTitle

    読ませていただきました。
    大変素晴らしい作品だと思いました。
    ホラーが書けないと言っている人の作品はホラーじゃないはずなのに。
    そのパラドックスが素敵です。
    誰も自分から能動的に悪意が持てなくても、他人から受動的に悪意を待たされることはできる、と解釈していいんでしょうか。
    ではその受動的に人々に悪意をもたせる人はそれを善意でやる、ということですかね。面白い。
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