私家版オールタイム・裏ベスト(映画)
洋画裏ベスト4「名探偵再登場」
ミステリ映画で名作とされているブラック・コメディに、「名探偵登場」という作品がある。わたしが大嫌いな映画だ。
謎解きミステリからハードボイルドに至るまでのさまざまな名探偵たちをサカナに、クローズド・サークルでの殺人事件において皮肉とおちょくりと常に観客の予想を外してくる展開で笑わせてくれる……はずなのだが、わたしはあの映画を見て腹立たしさしか覚えなかった。五里霧中で右往左往する探偵たちの、どこが「名探偵」なのだ。オチも納得いかないぞ。理不尽だ。ミステリは割り算の美学、引き算の美学なのだ。そこの基本的なところをおちょくられては、ミステリファンとして複雑な感情を抱かざるを得ない。
というわけで、この映画も時間つぶしのつもりで見たが、けっこう面白くて記憶に残ってしまった。
内容は、ピーター・フォーク演じるタフガイのハードボイルド探偵が、ハードボイルド映画をおちょくったような事件に巻き込まれるというものである。
嬉しいことに、この映画では、探偵は有能で、事件もきちんと収斂し、そして最後のオチもきちんとギャグになっているのだ。意外性ばかりを狙った「名探偵登場」よりはこっちのほうがだんぜん好みである。
女たちからなぜかモテモテのピーター・フォークだっていいじゃないか。
ピーター・フォークといえば「刑事コロンボ」だが、本人はこういう役をやりたかったんだろうな。「新・刑事コロンボ」の某回、いつもの倒叙名探偵ものではなく、本格ポリスアクション映画になってしまってファンのひんしゅくを買った回を考えると、そう思えてならない。
なぜかモテモテといえば、渥美清も「あいつばかりが何故もてる」という映画に主演していたそうだなあ。見たことはないけれど。「コロンボ」にしろ「寅さん」にしろ、一度はまり役を得てしまったら、二度とそのイメージからは逃れられないのだろうか。そういやあ、テレビでスーパーマンを演じたジョージ・リーヴスはスーパーマン以外の役をやらせてもらえず自殺したし、イリヤ・クリアキンを演じたデヴィッド・マッカラムは……レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーは……以下延々と続きそうなのでやめておく。
「コロンボ」の先入観を取り払ってしまえば、ピーター・フォークは好演していると思う。くだらないギャグもハードボイルドファンのツボをついてくるし、そう酷評されるべき映画だとも思えないのだが、どこを見ても「名探偵登場」のほうが評価が高いんだよなあ。そりゃスターはぞろぞろ出てくるし、予算もかかっていると思うけれど、どうも納得がいかない。
ところで、これを書くにあたってウィキペディアで調べて初めて知ったのだが、「名探偵登場」の最初のバージョンでは、最後に突然、ホームズとワトスンが登場して謎を解くのか。それだったら話はわかる。というか監督はどうしてそのバージョンを押し通せなかったんだまったく。
脚本に口出ししたスターのバカどもめ、と小声でつぶやいてしまうわたしは、やはり映画というものがわかっていないのだろうか。うむむ。
謎解きミステリからハードボイルドに至るまでのさまざまな名探偵たちをサカナに、クローズド・サークルでの殺人事件において皮肉とおちょくりと常に観客の予想を外してくる展開で笑わせてくれる……はずなのだが、わたしはあの映画を見て腹立たしさしか覚えなかった。五里霧中で右往左往する探偵たちの、どこが「名探偵」なのだ。オチも納得いかないぞ。理不尽だ。ミステリは割り算の美学、引き算の美学なのだ。そこの基本的なところをおちょくられては、ミステリファンとして複雑な感情を抱かざるを得ない。
というわけで、この映画も時間つぶしのつもりで見たが、けっこう面白くて記憶に残ってしまった。
内容は、ピーター・フォーク演じるタフガイのハードボイルド探偵が、ハードボイルド映画をおちょくったような事件に巻き込まれるというものである。
嬉しいことに、この映画では、探偵は有能で、事件もきちんと収斂し、そして最後のオチもきちんとギャグになっているのだ。意外性ばかりを狙った「名探偵登場」よりはこっちのほうがだんぜん好みである。
女たちからなぜかモテモテのピーター・フォークだっていいじゃないか。
ピーター・フォークといえば「刑事コロンボ」だが、本人はこういう役をやりたかったんだろうな。「新・刑事コロンボ」の某回、いつもの倒叙名探偵ものではなく、本格ポリスアクション映画になってしまってファンのひんしゅくを買った回を考えると、そう思えてならない。
なぜかモテモテといえば、渥美清も「あいつばかりが何故もてる」という映画に主演していたそうだなあ。見たことはないけれど。「コロンボ」にしろ「寅さん」にしろ、一度はまり役を得てしまったら、二度とそのイメージからは逃れられないのだろうか。そういやあ、テレビでスーパーマンを演じたジョージ・リーヴスはスーパーマン以外の役をやらせてもらえず自殺したし、イリヤ・クリアキンを演じたデヴィッド・マッカラムは……レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーは……以下延々と続きそうなのでやめておく。
「コロンボ」の先入観を取り払ってしまえば、ピーター・フォークは好演していると思う。くだらないギャグもハードボイルドファンのツボをついてくるし、そう酷評されるべき映画だとも思えないのだが、どこを見ても「名探偵登場」のほうが評価が高いんだよなあ。そりゃスターはぞろぞろ出てくるし、予算もかかっていると思うけれど、どうも納得がいかない。
ところで、これを書くにあたってウィキペディアで調べて初めて知ったのだが、「名探偵登場」の最初のバージョンでは、最後に突然、ホームズとワトスンが登場して謎を解くのか。それだったら話はわかる。というか監督はどうしてそのバージョンを押し通せなかったんだまったく。
脚本に口出ししたスターのバカどもめ、と小声でつぶやいてしまうわたしは、やはり映画というものがわかっていないのだろうか。うむむ。
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むむむ。
だんぜん私は「名探偵登場」派なんです。
(これもDVD持ってるんですぜ)
”再登場”はその後に見たのですが
確か字幕放送で
ピーター・フォークの声が甲高いのでびっくりした覚えがあります。
だんぜん私は「名探偵登場」派なんです。
(これもDVD持ってるんですぜ)
”再登場”はその後に見たのですが
確か字幕放送で
ピーター・フォークの声が甲高いのでびっくりした覚えがあります。
- #12259 面白半分
- URL
- 2013.12/18 21:15
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Re: 面白半分さん
そういやピーター・フォークの声、聞いた覚えがないなあ。たいてい吹き替えで。うむむ。