「ショートショート」
    ユーモア

    用途

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     自他ともに認める天才学者である鰓井恵来博士の研究室へ遊びに行ったぼくは、テーブルの上になにか粉のようなものが入ったシャーレが乗っているのに気づいた。

    「博士、なんですかこの粉は?」

     鰓井恵来博士はそっくり返った。

    「わしの大発明じゃ」

    「なにに使うんです」

    「どうやって使うのか、を示したほうが早いじゃろうな。きみ、そこのポットと電熱器でお湯を沸かしてはくれんか」

    「かまいませんが」

     ぼくはおんぼろなやかんに水を入れると、IHヒーターのボタンを押した。前にきれいなフラスコがあったのでそれでお湯を沸かそうとしたところ、残っていた薬品でお湯と実験室がとんでもないことになってしまって以来、お湯を沸かすのはこのやかんと決まっていたのだ。

     博士はとなりの部屋でなにかを探しているようだ。

     しゅんしゅんとお湯が沸騰したのを確認して、ぼくはヒーターのスイッチを切った。

    「沸きましたよ」

    「うむ。それでいい」

     博士が持ってきたのは、湯呑みと急須、それに緑茶と書かれた瓶だった。

    「この粉は、お茶と関係があるんですか?」

    「まあ見ていろ」

     ぼくが沸かしたお湯で、博士はお茶を入れだした。ぼくは粉の効用が知りたくてうずうずしていた。

     こぽこぽこぽ、と音を立てて、湯呑みにいい香りの緑茶が注がれた。

    「ここでこの粉の出番になる」

     博士はシャーレを取り上げた。

    「この粉を入れるとおいしくなるんですか?」

    「いや。味には関係ない」

     博士はシャーレの蓋を開けると、さじをとり、細心の注意を払って粉をお茶に入れた。

    「どうじゃ?」

     ぼくはなにがどうなのかわからなかった。困惑しているぼくに、博士は苛立った調子でいった。

    「お茶はどうなったかと聞いておる」

    「濁った以外に、なんの変化もないですけど」

    「それでいいんじゃ」




     ワープロがわりのパソコンの前に座ったこの小説の作者は、そこで、ふっ、と息をついた。

    「……うむ。我ながら、便利なものを考え出したものだ。この粉の調合法は、ブログで漫画や小説を書いている友人には、秘密にしておこう」

     この小説の作者はのびをしてから原稿をアップすると、晴れ晴れとした顔で寝床に向かったということである。
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    ~ Comment ~

    Re: 山西 サキさん

    材料は、論理学の教科書一冊と、国語辞典を一冊です。これを粉末にしてよく煎じ、できたエキスをフリーズドライにすればできあがりです。これを使えば、なんの意味もない名詞や動詞や形容詞を適当な三段論法でつないで、いかにも深いことをいっているかのような……。
    (°°☆\(^_^;)エエカゲンニシナサイ

    NoTitle

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    あぁ!なるほど!お茶を濁す!
    これはいいです。とても気に入りました。
    (サキの頭では時間がかかりましたけど……)
    でも、作り方ぜひ教えて欲しいです。

    Re: ツバサさん

    ほしい?(笑)

    NoTitle

    なるほど、粉の正体はお茶を濁す粉だったという話なんですね~。
    その調理法を教えるとお茶を濁せるから、
    漫画や小説を書いている友人には秘密という(・∀・)

    Re: 矢端想さん

    しゃあない。なにかで、お茶を濁そう……。

    Re: ダメ子さん

    わかりやすいネタだと思ったんだがなあ……。

    NoTitle

    ほら、みんなコメントする言葉を失って困ってるじゃないすか!
    どうすんですかポール先生!

    NoTitle

    なかなかわからなかったのは
    上手くごまかされた?
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