「ショートショート」
    恋愛

    坂道・あるいは恋が終わるまでの凝縮された十秒

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     その日ぼくは自転車を押して急な坂道を登っていた。いつもここですれ違うあの娘に、今日こそ告白するのだ。ほら、上から人影が下りてくる。間違いない、あの娘だ。ぼくは声をかけようとして、その胸に黒い縁取りの誰かの写真が抱かれていることに気づいた。新聞に大きく載っていた、この町の踏切で子供を助けようとして死んだ大学生の写真だった。あの娘は涙ひとつ見せてはいなかったが、その顔は紙のように白かった。ぼくはなにか声をかけようとしたが、できなかった。立ち尽くすしかできないぼくの横をあの娘は振り向きもしないで下りていった。下の方で車の扉が閉まる音と、発車する時の音が聞こえた。ぼくにはなんとなく、あの娘がこの町へ戻ってくることは二度とないことがわかった。その瞬間、ぼくの初恋は終わった。
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    ~ Comment ~

    Re: ヒロハルさん

    そうおっしゃっていただけると嬉しいであります。

    こういう「瞬間」をとらえるのはかなり難しくて……精進します。(>_<)ゞ

    Re: 矢端想さん

    こういう世界とは小説とゲームに逃避して縁をもたなかったため、こんな大人になってしまいました。とほほ(^_^;)

    Re: カテンベさん

    これはどんな形で片思いが破れるのがいちばんドラマチックか、と思って書きました。

    そのせいでずいぶんと不自然に……(^_^;)

    Re: 火消茶腕さん

    わたしの最初のイメージでは、大学生はこの少女の恋人、というものだったのですが、書いているうちにリアルじゃなくなってきたので、「適当にごまかした」という次第であります。

    スミマセン(^_^;ゞ

    Re: 山西 サキさん

    究極に短いショートショート、というジャンルがあります。いちばん有名なのは、たしかフレドリック・ブラウン先生の「地球最後の男が、ひとり机に向かっていた。そのとき、ドアにノックの音が……」というものでしょうね。ああいうのにあこがれて、贅肉を徹底的に取り除いた掌編を書こう! と思って書いたのがこれです。

    思っていたより長くなっちゃった。(^_^;)

    NoTitle

    これはちょっと悲し過ぎですね。
    十秒というわずかな時間にとても深いドラマを見たような気がしました。

    NoTitle

    これも立派な「恋愛経験」。

    ひとはこうして大人になってゆくのだなあ・・・。

    恋の進展がなんもないうちに経験値を稼いでしまった風ですね

    行き先がなくなってしまった、ぐわ〜っと膨らんだ想い、なんてもんも、相手の心情を思たらしゃあないよね〜

    NoTitle

    読ませていただきました。
    この話はどう解釈すればいいのでしょうか。
    普通に考えれば、僕は初恋を経験している最中なので中学生、相手の娘は同じ中学生から高校生位だと思うんです。そして黒縁の写真を胸に抱えているなら、死んだ大学生の肉親、つまり妹だと思うのですが、違うんでしょうか。そしてこの街に二度と戻ってこないなら、死んだ大学生がただ一人の肉親で、一人になったので遠い親戚に身を寄せる予定、でいいんですか?
     そういう解釈ならいつか巡り会える可能性もあるのかなあ、と思うんですが、初恋は実らないでしょうからねえ。

    NoTitle

    うそ!
    うそですよね?
    そんな事って、あるんでしょうか?
    短いですけど、(短いだけに)衝撃でした。
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