「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 23-4
「あまり早く行くな、桐野さん。つまづいたりぶつかったりすると危険だ」
わたしは余目のその忠告を心ここにあらずで聞いていた。この奥底に、わたしと『闇は千の目をもつ』を呼ぶなにかが潜んでいるのだ。それはただのペンなのか、それとも別のものなのかはわからなかったが、今は心に感じる呼び声のほうが快かった。
「なんだこりゃ」
余目が、不満そうにつぶやいた。
「もう行き止まりかよ」
島田春江が、袖口を引っ張った。
「完全な行き止まりじゃないですよ。奥の岩に、なにか透き間のようなものが開いています」
「それでも人間は通れんだろう。ヨガの行者が関節を外して身体をばらばらにして動き回ったらなんとか……ならんな。頭のほうが大きいからな」
二人のやり取りなど、どうでもよかった。わたしは、暗視力でもあるかのように、洞窟の隅に落ちていた一本の細長いペンを見つけていたからだ。
手の中では、『闇は千の目をもつ』が、歓喜に踊るかのようにのた打ち回っていた。わたしもまた、歓喜にのた打ち回りたかった。この身体の痛みさえなければそうしていただろう。
「ペンだ……。片割れだ……」
わたしの漏らした言葉に、余目と島田春江が反応した。
「どこだ、桐野!」
「どこなの?」
わたしが手を伸ばして、そこに近づこうとしたとき。
島田春江が、声を上げた。
「なにか……なにかいる……!」
「なにかってなんだ、島田さん!」
余目が、懐中電灯であちらこちらを照らしながら叫んだ。声が洞窟の壁に反響してわんわんと響いた。
「なにか……数多くのものが……こちらを見ているような……」
わたしは顔を上げた。
見た。
闇の中から、一千の光る目がわたしを見据えていた。
「目だ! 一千の目だ! 輝く一千の目がわたしたちを!」
「目?」
わたしの言葉が引き金になったかのように、島田春江と余目の身体が凍りついた。余目はなんとか正気を保っていたようだったが、島田春江には強烈な印象だったようだ。
「あああああ!」
島田春江が叫んだ。
「見えるわ! あれは……あれは……!」
余目が緊張した声で語った。
「ネズミだ……ネズミの大群だ」
光る数百匹のネズミの目!
わたしは余目のその忠告を心ここにあらずで聞いていた。この奥底に、わたしと『闇は千の目をもつ』を呼ぶなにかが潜んでいるのだ。それはただのペンなのか、それとも別のものなのかはわからなかったが、今は心に感じる呼び声のほうが快かった。
「なんだこりゃ」
余目が、不満そうにつぶやいた。
「もう行き止まりかよ」
島田春江が、袖口を引っ張った。
「完全な行き止まりじゃないですよ。奥の岩に、なにか透き間のようなものが開いています」
「それでも人間は通れんだろう。ヨガの行者が関節を外して身体をばらばらにして動き回ったらなんとか……ならんな。頭のほうが大きいからな」
二人のやり取りなど、どうでもよかった。わたしは、暗視力でもあるかのように、洞窟の隅に落ちていた一本の細長いペンを見つけていたからだ。
手の中では、『闇は千の目をもつ』が、歓喜に踊るかのようにのた打ち回っていた。わたしもまた、歓喜にのた打ち回りたかった。この身体の痛みさえなければそうしていただろう。
「ペンだ……。片割れだ……」
わたしの漏らした言葉に、余目と島田春江が反応した。
「どこだ、桐野!」
「どこなの?」
わたしが手を伸ばして、そこに近づこうとしたとき。
島田春江が、声を上げた。
「なにか……なにかいる……!」
「なにかってなんだ、島田さん!」
余目が、懐中電灯であちらこちらを照らしながら叫んだ。声が洞窟の壁に反響してわんわんと響いた。
「なにか……数多くのものが……こちらを見ているような……」
わたしは顔を上げた。
見た。
闇の中から、一千の光る目がわたしを見据えていた。
「目だ! 一千の目だ! 輝く一千の目がわたしたちを!」
「目?」
わたしの言葉が引き金になったかのように、島田春江と余目の身体が凍りついた。余目はなんとか正気を保っていたようだったが、島田春江には強烈な印象だったようだ。
「あああああ!」
島田春江が叫んだ。
「見えるわ! あれは……あれは……!」
余目が緊張した声で語った。
「ネズミだ……ネズミの大群だ」
光る数百匹のネズミの目!
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~ Comment ~
>神田夏美さん
タイトルをつけたときからこういうシーンを持ってこようという頭はありました。というよりそれ以外はなにも決まっていなかった(^^;)
まずラストシーンを考えて、そこに持ってくるという執筆方法なので、ここらへんは詰め将棋でいかに余り駒をなくすかというようなことしか考えていませんでしたね。
うまく着地ができましたらごかっさい。
タイトルをつけたときからこういうシーンを持ってこようという頭はありました。というよりそれ以外はなにも決まっていなかった(^^;)
まずラストシーンを考えて、そこに持ってくるという執筆方法なので、ここらへんは詰め将棋でいかに余り駒をなくすかというようなことしか考えていませんでしたね。
うまく着地ができましたらごかっさい。
こんばんは、ちょっとここのところ忙しくてご無沙汰してしまいました<(_ _)>
なるほど、「闇は千の目を持つ」というタイトル……今まで気にしていなかったのですが、ここでこう出してくるとは流石ですね。
一千のネズミ……桐野さんたちはここをどう切り抜けるのでしょう。ペンと再会できた本はこの後どうなるのでしょう。
いよいよクライマックスも近づいてきましたので、ドキドキしながら読み進めさせて頂きます!
なるほど、「闇は千の目を持つ」というタイトル……今まで気にしていなかったのですが、ここでこう出してくるとは流石ですね。
一千のネズミ……桐野さんたちはここをどう切り抜けるのでしょう。ペンと再会できた本はこの後どうなるのでしょう。
いよいよクライマックスも近づいてきましたので、ドキドキしながら読み進めさせて頂きます!
>ネミエルさん
ネズミお嫌いですか。それは……(しまった。よかったと書いたらなんだしなあ。ええとごにょごにょ(爆))
本がのたうち回るシーンは、ぜひとも実写でCGを駆使してやりたいですね(^^) そんな技術もコネもないですけど(爆)。
ネズミお嫌いですか。それは……(しまった。よかったと書いたらなんだしなあ。ええとごにょごにょ(爆))
本がのたうち回るシーンは、ぜひとも実写でCGを駆使してやりたいですね(^^) そんな技術もコネもないですけど(爆)。
ネズミっ!?
えぇっ、ネズミ!?
僕ネズミは…(((ToT)))ガクガウブルブル
本がのたうち回るってどういう状況なんでしょう?w
見て見たいような怖いようなw
えぇっ、ネズミ!?
僕ネズミは…(((ToT)))ガクガウブルブル
本がのたうち回るってどういう状況なんでしょう?w
見て見たいような怖いようなw
- #184 ネミエル
- URL
- 2009.09/04 20:17
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Re: 椿さん
……ほかに怖がるところはこの小説ないような(笑)