「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢逐人
夢逐人 第二部 サヤカ 7
あたしは乱暴に腰を下ろした。
しばらく続く無言の時間。
先に口を開いたのは、西連寺望のほうだった。
「昨日、アキラちゃんといっしょにいた女の子だね」
そのいいかたが、あたしにはかちんときた。
「アキラちゃん?」
あたしの顔を見た後、顔をこわばらせていいなおした。
「迫水さん、です」
ええい、この男には、ついているものがついているのか。
「単刀直入に聞くわよ。あんた、どこでアキラと知り合ったの?」
え、とか、ああ、とか、西連寺望はいった。
「……その前に、お名前を教えてくれませんか?」
あたしはいなされたように感じて、心の中で舌打ちをした。
「蓉秀女子高二年、国枝沙矢香」
「国枝さん……ああ、『友原のビビアン・リー』。本当だ、ビビアン・リーにそっくりだ」
「根性とキレやすさはもっと似てるわよ」そうは思わないが、こういっておいたほうが脅しになるかも知れない。「今度こそ、あなたが答える番。いったい、アキラと、どこで知り合ったの?」
西連寺望の口が動いた。読唇術など知らないあたしだったが、なにをいおうとしているのかは、電光のように頭にひらめいた。
「……夢?」
西連寺望は、申し訳なさそうにうなずいた。
「……夢」
「ふざけないで」
あたしが、テーブルを叩きかけたとき、タイミングよく、店員が注文品を持ってきた。季節ものの、ナンタコスとハンバーガー。
店員に対し、にこやかに一礼し、去って行ったのを確認するや、西連寺望に目を戻し、思い切りにらみつけた。
完全に、西連寺望は、蛇ににらまれたカエル状態だった。
その顔は、もう、蒼白である。
「ふざけてなんかいません」
勇気を振り起こすかのように、震え声で西連寺望は抗弁した。
「小学四年生のころだったのですが……」
その語ることを聞いて、あたしは背筋が冷えてくるのを感じた。
それは、かつて小学生のころに、アキラがあたしに語ってくれた最初の夢と、内容がそっくりそのまま同じだったからだ。確かに、そこでは、アキラは、『ノゾミちゃん』という女の子を見た、といっていたのだが……。
「この夢を見てしばらくの後、ぼくは両親に連れられて京都に行ったんです」
なおも西連寺望は告白を続けていたが、耳はさっきの話の衝撃からまだ回復してはいなかった。あたしは頭をぶるんと振った。ナンタコスなど、もうどうでもよく、存在すら忘れていた。
この男とアキラはあたしをかついでいるのだ。
「正直にいって。あなたは、本当は、アキラとどこかで逢っていて、そこで口裏を合わせたんでしょう?」
「そんなこと」
一瞬、声が高くなったが、すぐにもとの高さに戻った。
「アキラ……迫水さんが、そんな嘘をつく人だと思いますか? ぼくならいくら疑ってもらってもけっこうですが」
あたしは、つまった。確かに、アキラは、ばれないような嘘をつけるほど演技がうまくはない。
しばらく続く無言の時間。
先に口を開いたのは、西連寺望のほうだった。
「昨日、アキラちゃんといっしょにいた女の子だね」
そのいいかたが、あたしにはかちんときた。
「アキラちゃん?」
あたしの顔を見た後、顔をこわばらせていいなおした。
「迫水さん、です」
ええい、この男には、ついているものがついているのか。
「単刀直入に聞くわよ。あんた、どこでアキラと知り合ったの?」
え、とか、ああ、とか、西連寺望はいった。
「……その前に、お名前を教えてくれませんか?」
あたしはいなされたように感じて、心の中で舌打ちをした。
「蓉秀女子高二年、国枝沙矢香」
「国枝さん……ああ、『友原のビビアン・リー』。本当だ、ビビアン・リーにそっくりだ」
「根性とキレやすさはもっと似てるわよ」そうは思わないが、こういっておいたほうが脅しになるかも知れない。「今度こそ、あなたが答える番。いったい、アキラと、どこで知り合ったの?」
西連寺望の口が動いた。読唇術など知らないあたしだったが、なにをいおうとしているのかは、電光のように頭にひらめいた。
「……夢?」
西連寺望は、申し訳なさそうにうなずいた。
「……夢」
「ふざけないで」
あたしが、テーブルを叩きかけたとき、タイミングよく、店員が注文品を持ってきた。季節ものの、ナンタコスとハンバーガー。
店員に対し、にこやかに一礼し、去って行ったのを確認するや、西連寺望に目を戻し、思い切りにらみつけた。
完全に、西連寺望は、蛇ににらまれたカエル状態だった。
その顔は、もう、蒼白である。
「ふざけてなんかいません」
勇気を振り起こすかのように、震え声で西連寺望は抗弁した。
「小学四年生のころだったのですが……」
その語ることを聞いて、あたしは背筋が冷えてくるのを感じた。
それは、かつて小学生のころに、アキラがあたしに語ってくれた最初の夢と、内容がそっくりそのまま同じだったからだ。確かに、そこでは、アキラは、『ノゾミちゃん』という女の子を見た、といっていたのだが……。
「この夢を見てしばらくの後、ぼくは両親に連れられて京都に行ったんです」
なおも西連寺望は告白を続けていたが、耳はさっきの話の衝撃からまだ回復してはいなかった。あたしは頭をぶるんと振った。ナンタコスなど、もうどうでもよく、存在すら忘れていた。
この男とアキラはあたしをかついでいるのだ。
「正直にいって。あなたは、本当は、アキラとどこかで逢っていて、そこで口裏を合わせたんでしょう?」
「そんなこと」
一瞬、声が高くなったが、すぐにもとの高さに戻った。
「アキラ……迫水さんが、そんな嘘をつく人だと思いますか? ぼくならいくら疑ってもらってもけっこうですが」
あたしは、つまった。確かに、アキラは、ばれないような嘘をつけるほど演技がうまくはない。
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~ Comment ~
NoTitle
夢は日本ではよくよく考えさせますよね。
儚いは人に夢と書く。
なかなか夢でもうまくいかないものって。。。
あまり話と関係ないですね。すいません。
儚いは人に夢と書く。
なかなか夢でもうまくいかないものって。。。
あまり話と関係ないですね。すいません。
- #13089 LandM
- URL
- 2014.03/27 20:05
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Re: LandMさん
この小説ではそんなことはない、と思うのですが……(^_^;)