「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢逐人
夢逐人 第三部 ノゾミ 3
三十分くらい待った。正座することには慣れていたので、足はまったく苦痛ではなかったが、心の奥から這い上がってくる恐怖感と戦うのは、けっこうつらかった。
道場の入り口のほうから、ばたばたという足音と話し声が聞こえた。
「……っぱりやだよこんな服! もっと……」
「……ういって何時間待たせる気だこのバカ者!」
「でも……」
「観念せい!」
目を開けて、首をひねり、後ろを見た。
そこには、スポーティーなジャンパーに、ジーンズ姿のアキラちゃ……いや、迫水さんがいた。ここに入るときに、頭を下げるのを忘れていないのは、やはり神社の子供であるからだろうか。
迫水さんは、ぼくと目を合わせると、真っ赤になった。
「ええと、あの、その、ぼくは」
「いやそんな、ぼくこそ、あの、その」
どっちがどっちの言葉をしゃべっているのかもわかりはしない。
老人は、あきれたようにいった。
「いったい、お主ら、なにをやっておるんじゃ」
そのままぼくの前に正座すると、左隣に、なにかをとん、と置いた。
よく見るとそれは日本刀だった。
五メートルで二秒。
ぼくは、卒倒しそうになったが、そこで迫水さんがいった。
「おじいちゃんも、西連寺さんを変におどかすのはやめてよ!」
「だったら、お前も、きちんとこの者の話を聞かんか。わかったら、さっさとわしの隣に座れ」
迫水さんは、すっ、と、無駄のない動きで、老人のそばに正座した。
「西連寺望といったな。さて、なにをしに来たのか、話してもらおうか。全部じゃぞ。もし、偽りなり、たばかりなりあったとしたら……」
老人は、日本刀を、目にもとまらぬ速さで、するりと抜いた。
ぼくの目は、その刃に、釘付けになった。国枝さんは嘘をいっていなかった。この距離では、二秒どころか、一秒とたたないうちに、首と胴体が離ればなれになってしまいかねない!
老人は、刀を鞘に戻し、ぼくに向かってあごをしゃくった。
「でも、晶さん一人にでないと……」
老人は柄に右手をかけた。
ダメみたい。
がんばれ、ぼく。
「実は……」
ぼくは話し始めた。
最初にぼくがやったことは、鞄を開いて、新聞を次から次へと出すことだった。
「この事件、知っているでしょう?」
地域面を開く。
そこには、どの新聞にも、一つの記事が大きく載っていた。
『女子高生、謎の失踪』
「沙矢香……」
迫水さんが、小さくつぶやいた。
道場の入り口のほうから、ばたばたという足音と話し声が聞こえた。
「……っぱりやだよこんな服! もっと……」
「……ういって何時間待たせる気だこのバカ者!」
「でも……」
「観念せい!」
目を開けて、首をひねり、後ろを見た。
そこには、スポーティーなジャンパーに、ジーンズ姿のアキラちゃ……いや、迫水さんがいた。ここに入るときに、頭を下げるのを忘れていないのは、やはり神社の子供であるからだろうか。
迫水さんは、ぼくと目を合わせると、真っ赤になった。
「ええと、あの、その、ぼくは」
「いやそんな、ぼくこそ、あの、その」
どっちがどっちの言葉をしゃべっているのかもわかりはしない。
老人は、あきれたようにいった。
「いったい、お主ら、なにをやっておるんじゃ」
そのままぼくの前に正座すると、左隣に、なにかをとん、と置いた。
よく見るとそれは日本刀だった。
五メートルで二秒。
ぼくは、卒倒しそうになったが、そこで迫水さんがいった。
「おじいちゃんも、西連寺さんを変におどかすのはやめてよ!」
「だったら、お前も、きちんとこの者の話を聞かんか。わかったら、さっさとわしの隣に座れ」
迫水さんは、すっ、と、無駄のない動きで、老人のそばに正座した。
「西連寺望といったな。さて、なにをしに来たのか、話してもらおうか。全部じゃぞ。もし、偽りなり、たばかりなりあったとしたら……」
老人は、日本刀を、目にもとまらぬ速さで、するりと抜いた。
ぼくの目は、その刃に、釘付けになった。国枝さんは嘘をいっていなかった。この距離では、二秒どころか、一秒とたたないうちに、首と胴体が離ればなれになってしまいかねない!
老人は、刀を鞘に戻し、ぼくに向かってあごをしゃくった。
「でも、晶さん一人にでないと……」
老人は柄に右手をかけた。
ダメみたい。
がんばれ、ぼく。
「実は……」
ぼくは話し始めた。
最初にぼくがやったことは、鞄を開いて、新聞を次から次へと出すことだった。
「この事件、知っているでしょう?」
地域面を開く。
そこには、どの新聞にも、一つの記事が大きく載っていた。
『女子高生、謎の失踪』
「沙矢香……」
迫水さんが、小さくつぶやいた。
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沙矢香!気になります。
早く真実が知りたい。
まるで、スピードラーニング誘拐事件みたいだったもの。
早く真実が知りたい。
まるで、スピードラーニング誘拐事件みたいだったもの。
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Re: 山西 サキさん
まあ、最後には落ち着くところに落ち着くはずなのですが、なにせ書いたのが6年前だからなあ……(^_^;)