「夢逐人(オリジナル長編小説)」
    夢逐人

    夢逐人 エピローグ 2

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    「国枝さんだけど」

     西連寺くんが口を開いた。

    「……」

    「なんとかしてあげなくちゃいけない、と、思うんだ」

    「それはぼくも感じているよ。明日、学校に来られれば、そのとき。そうでなくても、放課後。手紙も書くし、電話もかける」ぼくは早口でいった。「そっとしておいたほうがいいのかもしれないけど、そうして見守るだけなんて、ぼくには、できそうもない。なにかしてるほうが、性に合ってる」

    「迫水さんらしいね」

    「でも、なんてなぐさめればいいか、わからない。それも、本当だよ」

    「迫水さん」

     西連寺くんは、ぼくのほうを見た。

    「ぼくは、迫水さんのおじいさんがいったことを、一生懸命考えていた。そうして、ひとつの結論に至ったんだ」

    「おじいちゃんがいったこと?」

     ぼくは、首をひねった。

    「迫水さんは、眠っていたから、知らないよ。いい、迫水さんのおじいさんは、こう、いったんだ」

     西連寺くんは、二人の老人のやりとりを、手短に、話してくれた。

    「嬉しい?」

     ぼくは、祖父の最後の言葉を聞いて、首をひねった。

    「とても喜んでいる。嬉しくて仕方がない。感謝する。君のおじいさんは、そういったんだ。なぜか。ぼくは、考えた」

    「それで?」

    「ぼくは、君のおじいさんから教えられた、夢逐人の口伝で、武甕槌神が、わざといわなかったことに気づいたんだ」

    「どういうこと?」

    「うちの祖父たちは、自分たち、きっと、『夢鬼』だね、の、仲間を増やすために、君を取り込もうとした。そこでだ。もし、夢逐人を、夢鬼にすることができるのなら、夢鬼を、夢逐人にすることもできるんじゃないか」

    「えっ」

     ぼくには、逆立ちしても出てこない発想だった。

    「それは、現に、実例がある。国枝さんだ」

    「沙矢香?」

    「そうだよ。国枝さんは、君の刀で斬られることで、夢鬼の手先から、ふつうの人間に戻った。迫水さんは、やったんだよ」

     ぼくは、呆然としながら話を聞いていた。だが、呆然とするには、ちょっとまだ早すぎたようだ。

    「さらに、ぼくは考えたんだ。迫水さんが、夢で助けたり、夢鬼が、凶夢で狙ったりした人たちは、精神が不安定な人なんかじゃなくて、夢の中で、ある種の力を持っている人達かもしれない。すると、こういうことになる。迫水さんが、夢で逢った人達も、夢逐人になれるんじゃないか。いや、もっと尖鋭的にいってしまえば、夢逐人は、原理的には、誰でもなることができるものなんじゃないのか、ってね」

    「!」

     ぼくの目の前で、新しい道が急に開けたような気がした。数日前、祖父に聞かされた、義務と責任と、そして孤独さとは、かけ離れた考え。

    「無責任で、裏づけがなにもない話かも知れない。だけれどぼくには、迫水さんのおじいさんがいったことをもとにすると、こうとしか考えられない」

    「ありがとう」

     ぼくはいった。

    「沙矢香も、ぼくと同じような、夢逐人になれればいいんだ。そうすれば、すべてうまくいく」

    「国枝さんは、もうなっているんじゃないかと、ぼくは思う。蝶になって、夢鬼に対抗したんだから」

    「そして西連寺くんも」

    「『闇切』を振れたんだから、ぼくにも、資格があるかもね」

    「そして、ゆくゆくは、全ての人達が……そこまで行くと、怪しげな宗教かな」

     西連寺くんは、首を振った。

    「宗教でいいじゃない。自分がどこにいるか、わかっているでしょう? 神社だよ。宗教法人も宗教法人じゃないか」

    「そうだね」

     ぼくと、西連寺くんは、顔を見合わせてくすくす笑った。

     笑うだけ笑うと、ぼくたちは、顔を上げた。

    「流れ星はないかな」

     ぼくがいうと、西連寺くんは、首を振った。

    「見えないね。街が明るすぎるんだ」

    「そういうものなの?」

    「うん。細かいものは、結構な頻度で見られるらしいけど、ここまで空が明るいと、肉眼では見つけづらいんだ」

     西連寺くんは、残念そうにいった。

     ぼくは、空を見上げていった。

    「じゃあ、その、見えない流れ星に」

    「見えない流れ星に?」

    「ふふ」

     西連寺くんの顔を見て、かすかに笑みを浮かべる。

     空のどこかに、金色の線が疾ったような気がした。

     ぼくは目を閉じた。
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    Re: 椿さん

    楽しんでくださってありがとうございます。

    こういったもろもろの謎については、これよりおいおい明らかに……なるんじゃないかなあ、たぶん……弱気(笑)

    NoTitle

    最後まで拝見しました。とても面白かったです。

    ここのエピローグを読んでの感想は、やはり「この先を見たい!」に尽きますね。

    晶ちゃんと望ちゃんがどうなるのか。
    望ちゃんのおじいさんはどうして夢鬼となっているのか。
    望ちゃんがおじいさんと姓が違う理由、わざと「柔弱に」育てられた理由は。
    望ちゃんは強い夢逐人になれるのか(笑)

    気になってたまりませんので、続編の方に速攻行かせていただきます。

    沙矢香ちゃんの結末にはホッとしました。晶ちゃんに切られた時は、ヒヤッとしましたので。
    これからの沙矢香ちゃんにも期待します。

    面白い物語、ありがとうございました。

    Re: 山西 サキさん

    やっぱり欲求不満になりますか(汗)

    こりゃあ続きを書かなくちゃダメかなあ。

    記憶は大マゼラン星雲のかなただけど……(^_^;)

    NoTitle

    設定が少しわかりづらいところがあって、夢鬼や夢逐人もなんとなくぼやっとしたまま終わってしまったような印象です。
    ちょっと欲求不満になりますね。
    せっかく3人のキャラが立ってきて、晶と望が同じ屋根の下に暮らさざるを得なくなって、さあというところでエンディングなんですもの。
    でもサキはこの3人のキャラ大好きですよ。意外性たっぷりですもんね。
    男の子のような女の子ってキャラとして大好きですからね。
    この2人良い雰囲気なのになぁ……。

    Re: カテンベさん

    そこらへんのつじつま合わせも考えていたらしいのですが、片道14万8000光年の大マゼラン星雲のかなたに……(^_^;)

    Re: 宵乃さん

    ちょうどそのあたりは、所用で東京に出ているので見ることができません(つд`)

    体力が残っていたら連休中に見ようと思います。

    おー、なんてこったい

    ええこと、気ぃついた、てなったけど、対抗するための武器は今のとこ、刀3つあるだけやから、3名様までしかあきませんねぇ

    一度被害者になって助けられた人は、いずれまた、同様のことに巻き込まれるんでしょうけど
    無手では対抗できないでジリ貧なんでしょから、そんなことを知らずにいるよりもつらいかも。

    NoTitle

    おはようございます!
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    開催期間は4月25日(金)~27日(日)。
    よかったら今月もみんなと一緒に映画を楽しみましょう♪
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