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    みんしゅしゅぎ

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     ぼくとそうたくんとがんちゃんがこうえんにあそびにいったとき、みちのとちゅうでこしをさすっているおばあさんとであった。そばにはおおきなにもつがあった。

    「どうしたの?」

     ぼくがたずねると、

    「てしがわらさんのところへいくとちゅう、みちにまよって、にもつがおもくて……」

    「てしがわら?」

    「あっ、そのいえ、おれ、しってる。むずかしいじをかくうちだよね」

     がんちゃんがいった。

     そうたくんはめがねをずらした。

    「じゃあ、ぼくたちでおくっていってあげようよ」

     ぼくもうなずいた。

    「うん、そうしよう!」

     ぼくとそうたくんはにもつをもって、がんちゃんはおばあさんのてをひいて、いっしょにてしがわらさんのところへいった。

     いえにつくと、おばあさんをみて、てしがわらのおじさんはとてもよろこんだ。

    「やあ、せんせいじゃないですか! でんわをひとつくれれば、むかえにいったのに。きみたちも、せんせいをここまでおくってきてくれて、ありがとう。ちょっとまっていてくれたまえ」

     おじさんはいえにはいり、おおきなおまんじゅうがはいったふくろをもってきた。

    「わたしがたべるつもりだったのだが、きみたちにあげよう。ちょうどみっつはいっているはずだ」

     ぼくたちもよろこんだ。おいしそうなおまんじゅうだったからだ。

     あそぶまえにこうえんでたべよう、ということになって、ぼくたちはきたみちをもどりはじめた。

    「あれ?」

     こうえんで、そうたくんが、ふくろのなかをのぞいていった。

    「おまんじゅう、よっつはいっているよ」

    「ほんと?」

     ほんとうだった。おまんじゅうはよっつはいっていた。

    「おじさんがまちがえたんだ。いっこかえしにいかなくちゃ」

     そうたくんはいった。

    「おれがみちをしっていたからもらえたんだ、そのひとつはおれにくれよ」

     がんちゃんがいった。

    「あまったおまんじゅうもさんにんでわけて、たべようよ」

     ぼくはそうていあんした。

    「よし」

     そうたくんはいった。

    「ここはみんしゅしゅぎできめよう」

    「みんしゅしゅぎ?」

    「そうだよ。みんなでよくはなしあって、さいごに、さんせいするひとがいちばんおおかったいけんをさいようするんだ」

     ぼくは、それはとてもいいことだとおもった。

    「さんせい!」



     そして。

     けっきょく、ぼくはおまんじゅうをたべられなかった。そうたくんも、たべられなかった。

     はなしあっているうちに、がんちゃんが、ぼくたちをぶんなぐって、おまんじゅうをぜんぶもっていっちゃったからだ。おまんじゅうをふたつたべるより、よっつたべたほうがおいしい、というのが、がんちゃんのかんがえだったらしい。

     みんしゅしゅぎなんて、もう、こりごりだ!



     教訓:民主主義を機能させるためには、「公正な判断をする、腐敗していない、信頼できる政府」と、「投票者の安全が保護された、公正な、信頼できる選挙制度」のふたつがたとえファンタジーとしてであっても、選挙民の間で認識として共有されていなければならない。それがない場合は、たとえ有権者が三人しかいない場合でも機能不全を起こす。三人ですらそうなんだから、政府や投票行為に対して信頼なんかまったく存在しない国に、いくら形ばかりの選挙制度と投票箱を持って行っても……。民主主義は決して楽な政体ではないのだ。
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    ~ Comment ~

    Re: いもかるびさん

    本来的には、「多数決」は最後の手段で、基本は「全員同意」であるべきなんですが……世界中そろって「多数派独裁」になりつつあるように思えるのが怖いであります。

    小学校の教育を甘く見てはいけません。なんでもあのころさんざんやらされた「グループ学習」は、「ブレーンストーミング」の練習であり、「ベンチャープロジェクト」を立ち上げることの練習だったそうですから……。

    まんじゅうはこわい

    なんとなくですが
    多数決でなくて意見をたくさん出してその真ん中を取る
    というほうが本来の日本人らしい考え方のような気はします。

    がんちゃんみたいな考えを思いつける人自体少ないんじゃないでしょうか
    なんとなくですが彼のタイプの人は途中まですごい事をなしつつも
    最後足元をすくわれるイメージがあります


    そういえば私もそうたくんぐらいの時分には
    やたらと多数決を取らされた記憶がありますが
    あれはみんしゅしゅぎの概念を頭にたたき込ませる為だったんでしょうか

    お饅頭のてっぺんに一本ずつお子様ランチの旗でも刺して勉強してみるとか

    Re: LandMさん

    その「数」の持つ力をうまくコントロールして国をより良い方向に導こうとするのが民主制というものなのですが、「数」が暴走するとろくなことにならないのはナチスや旧ソ連を見ていればよくわかります。

    「多数がいいといえばユダヤ人を虐殺してもいい!」とか、

    「多数がいいといえば反革命分子をシベリア送りにしてもいい!」とか、

    為政者がそんなことを唱え出したら、危険信号というかディストピア一直線ですね。とほほ。

    Re: かえるママ21さん

    畢竟、民主主義というのは、「自分たちの声で国政が変わる」と人々に幻想を抱かせることにより、暴動や反乱の抑制をするくらいの効果しかないのかもしれません。幻想を維持することによって、実際に国政が変化するわけですから、幻想は現実とひとつになり、統治するものも統治されるものもみんな幸福になれる、という。

    情報公開も、権力の分散も、そうした幻想の維持に役立つならばいいのですが、中途半端に公開したり分散させたりすることにより、「なんだ政府はおれたちのことをほっといてこんなことをしていたのか」とか「地方から国政を牛耳ろうとする某都知事みたいなやつ」が出現したりすると、政府に対する信頼が失墜、幻想が崩壊して全体主義や僭主政に行きかねない……民主主義はほんとコントロールが難しい政体であります。

    Re: カテンベさん

    その可能性もありました。今回は軍事バランス(^^;)のせいでたまたまそうならなかっただけで。

    多数派の独裁は、民主主義というよりむしろ全体主義なのですが、「多数決で勝ったほうがなにをしてもいいんだろ」と誤解している人間が多いこと……例えばタイの騒動みたいなものも、そこに原因があるのではと考えています。民主主義の陥りがちな陥穽のひとつですね。とほほ。

    Re: 黄輪さん

    現に歴史ではワイマール共和国がナチスを産んだりしてますし、民主主義で国家を運営していくのは、綱渡りも同然だと思うのですが、みんなが綱を渡っている感覚をなくしたのか、為政者自らが民主主義を、多数派が独裁的に支配する「全体主義」へと変えていっている国もありますし……どこの国とはいいませんが。

    そういえば、前に二次でモールさんに「民主主義はわれらの世界では危険思想だ」なんてことを語らせましたが、こういうことも考えてのことであります。うまく運営すればこれ以上の政体はないのですが、綱から落ちたらあっという間に奈落の底、衆愚制から僭主制に……。

    NoTitle

    数も力です。
    結局のところ。
    力がものを言うのは間違いないですね。

    NoTitle

    表向き民主主義であっても「絶対的権力は絶対的に腐敗する」(byジョンアクトン)
    権力を集中させない、情報開示(閉鎖的にならない)これは徹底しなくては真の民主主義は難しいですよね。

    形だけの民主主義が成立してると
    3つは分けにくいから、しんどい思いをした、荷物をもったぼくとそうたくんだけでわけるよー、てな逆の展開もあったのかも
    多数派が少数派をけちょんけちょんに、てなのもありがちですもんねー

    NoTitle

    イスラム圏や東南アジアなど、それまで民主制が根付いていなかった国でアメリカ主導の元で民主制を採らせた途端、過激派が「圧倒的多数の支持」を得て選挙に当選し、
    そして「公正に選ばれた政府」の意向により、即、民主制撤廃、……なんていう動きが多く見られるそうですからね。
    民主主義というものはほとんど幻想、理想論でしかないのかも知れません。
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