「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 25-1
25
「よお。退院おめでとう」
病院で、余目が声をかけてきた。すでにあの伝染病棟の、ガラス越しの対面室ではない。
「おかげさまで」
わたしは答えた。
時計を見ようとして、わたしの時計では今が何日なのかわからないことを思い出した。
「余目さん、今日は何日です?」
「お前さんがあの大冒険をやってから二週間というところだよ」
「二週間ですか」
わたしは、ほっと息をついた。二週間。長いようで、短い間だ。それでも、わたしには非常に長く感じられたことは事実だ。
「高宮さんは? 椎葉老婦人は? それから、あの……」わたしは名前を探し、自分が知らないことに気づいた。「四人目のペスト患者は?」
「心配するな」
余目はいった。
「無事だ。お前さんと同じだよ。病状は快方に向かい、リンパ腺の腫れもひいていて、もうほとんどわからなくなっているそうだ。当然ながら病原菌も病原体も発見されていない。医者は目を白黒させていたぜ。やっぱり精神的なものだったのかってな」
「ということは?」
「おっつけ退院だろうな。なにせ、こんなところに足止めを食わせておくだけの理由がないんだから」
余目は、軽くわたしの肩を叩いた。
「お前さんと同じだよ。わかっているんだろう? 曲がりなりにも医者なんだからな」
わたしはうなずいた。そうだ。わかっていたことだ。
「さっさと、この陰気くさい病院を出ようぜ。そしてどこかで飯でも食おうや」
「おごってくれませんかね?」
わたしの言葉に、余目は情けなさそうに首を振った。
「大野先生から毎月あれほどもらっているのに? 貧乏根性もいいかげんにしろよ、桐野さん」
「お祝いのしるしとでも思って許してくださいよ、余目さん」
「それじゃあ、よその店はなしだ。この病院の食堂を使おう。そこでもラーメンや野菜炒めは食えるだろう。いいよな?」
「かまいません。無性に腹が減っていて、今なら牛一頭でも食べられそうです」
「薬が効きすぎたようだな」
余目はにやりと笑った。
「いいだろう。おごってやる。ただし、メニューの選択はおれに任せてもらうぞ」
「かまいません」
「さてと」
余目は八宝菜を前にして手をさすった。
「よお。退院おめでとう」
病院で、余目が声をかけてきた。すでにあの伝染病棟の、ガラス越しの対面室ではない。
「おかげさまで」
わたしは答えた。
時計を見ようとして、わたしの時計では今が何日なのかわからないことを思い出した。
「余目さん、今日は何日です?」
「お前さんがあの大冒険をやってから二週間というところだよ」
「二週間ですか」
わたしは、ほっと息をついた。二週間。長いようで、短い間だ。それでも、わたしには非常に長く感じられたことは事実だ。
「高宮さんは? 椎葉老婦人は? それから、あの……」わたしは名前を探し、自分が知らないことに気づいた。「四人目のペスト患者は?」
「心配するな」
余目はいった。
「無事だ。お前さんと同じだよ。病状は快方に向かい、リンパ腺の腫れもひいていて、もうほとんどわからなくなっているそうだ。当然ながら病原菌も病原体も発見されていない。医者は目を白黒させていたぜ。やっぱり精神的なものだったのかってな」
「ということは?」
「おっつけ退院だろうな。なにせ、こんなところに足止めを食わせておくだけの理由がないんだから」
余目は、軽くわたしの肩を叩いた。
「お前さんと同じだよ。わかっているんだろう? 曲がりなりにも医者なんだからな」
わたしはうなずいた。そうだ。わかっていたことだ。
「さっさと、この陰気くさい病院を出ようぜ。そしてどこかで飯でも食おうや」
「おごってくれませんかね?」
わたしの言葉に、余目は情けなさそうに首を振った。
「大野先生から毎月あれほどもらっているのに? 貧乏根性もいいかげんにしろよ、桐野さん」
「お祝いのしるしとでも思って許してくださいよ、余目さん」
「それじゃあ、よその店はなしだ。この病院の食堂を使おう。そこでもラーメンや野菜炒めは食えるだろう。いいよな?」
「かまいません。無性に腹が減っていて、今なら牛一頭でも食べられそうです」
「薬が効きすぎたようだな」
余目はにやりと笑った。
「いいだろう。おごってやる。ただし、メニューの選択はおれに任せてもらうぞ」
「かまいません」
「さてと」
余目は八宝菜を前にして手をさすった。
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病気おさまりましたか~
よかった、よかったです。
そして、僕にその病気が移ったら
僕は旅に出なきゃいけないんですね、わかります。
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僕は旅に出なきゃいけないんですね、わかります。
- #201 ネミエル
- URL
- 2009.09/10 00:29
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旅に出ただけではおさまりません。
桐野くんの起死回生のアイデアは今日以降の節で……。