「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 ノゾミ 2-2
「ほんとうの話だ。嘘でもなんでもない。実力が違いすぎる」
そう付け加えた武博おじさんに、迫水さんが叫んだ。
「で、でも、父さん、父さんはあの……高木さんに、何百回となく攻撃をかけていたじゃない!」
「見えたか。そこまでできるようになっていたなら、目録を許したお前のおじいちゃんの判断はやはり間違っていなかったようだな」
そういってわずかにほほ笑むと、武博おじさんは続けた。
「わたしの繰り出した、その何百回の攻撃のひとつひとつを、高木さんは予測したように受けていた。容易に受けられることを示したうえで、そして食らっていたんだ。よほど、実力に開きがないとできないことだ。わたしは父さん……おじいちゃんに、免許を返上せねばならないかもしれない」
武博おじさんは目を閉じた。悔し涙なのか、一筋の細い涙がつうっと頬をつたった。
その場にいた、ぼくも、冴子おばさんも、迫水さんも、次になにが起こるのかをはっきりと理解し、素早く行動に移った。
武博おじさんの目から、涙が滝のようにどばっと流れ落ちた。
「あきらああああ! おとうさんは、おとうさんはあああああ!」
慣れているのか、冴子おばさんの動きは素早く、武博おじさんの背後に回ってはがいじめにした。冴子おばさんが武術の達人だという話は聞いていないから、これは武博おじさんが隙だらけになってしまったことを意味するのだろう。
ぼくはかなわぬまでも、障害物になれればいい、という思いで、武博おじさんと迫水さんとの間に割って入った。
迫水さんは、頭が痛くなったのか、眉間を押さえていた。
「あきらああああ! あきらああああ!」
「あなた! しっかりしてください! 晶はもう、ひとり立ちできる立派な大人です! ……江戸時代以前は」
冴子おばさんも、変なところに律儀だ。
だが、隙だらけとはいえ、さすが鹿澄夢刀流免許の剣術家、力は半端ではなかった。取りすがる冴子おばさんを振り切り、涙と鼻水でよく前も見えなくなっているだろう状態のまま突進してきた。
当然、間にはぼくがいるわけで。
ぼくは、むんずとばかりに腕をつかまれ、抱き寄せられ、ほおずりされた。
「あきらあああああ! あきらあああああ! ……ん?」
武博おじさんは正気に戻ったようだ。
「晶じゃないな。お前は誰だ!」
「青啓高校二年男子、西連寺望です」
冴子おばさんと迫水さんはそろってため息をついた。でも、いちばんため息をつきたくなるのは、ぼくだと思うんだけど。
そう付け加えた武博おじさんに、迫水さんが叫んだ。
「で、でも、父さん、父さんはあの……高木さんに、何百回となく攻撃をかけていたじゃない!」
「見えたか。そこまでできるようになっていたなら、目録を許したお前のおじいちゃんの判断はやはり間違っていなかったようだな」
そういってわずかにほほ笑むと、武博おじさんは続けた。
「わたしの繰り出した、その何百回の攻撃のひとつひとつを、高木さんは予測したように受けていた。容易に受けられることを示したうえで、そして食らっていたんだ。よほど、実力に開きがないとできないことだ。わたしは父さん……おじいちゃんに、免許を返上せねばならないかもしれない」
武博おじさんは目を閉じた。悔し涙なのか、一筋の細い涙がつうっと頬をつたった。
その場にいた、ぼくも、冴子おばさんも、迫水さんも、次になにが起こるのかをはっきりと理解し、素早く行動に移った。
武博おじさんの目から、涙が滝のようにどばっと流れ落ちた。
「あきらああああ! おとうさんは、おとうさんはあああああ!」
慣れているのか、冴子おばさんの動きは素早く、武博おじさんの背後に回ってはがいじめにした。冴子おばさんが武術の達人だという話は聞いていないから、これは武博おじさんが隙だらけになってしまったことを意味するのだろう。
ぼくはかなわぬまでも、障害物になれればいい、という思いで、武博おじさんと迫水さんとの間に割って入った。
迫水さんは、頭が痛くなったのか、眉間を押さえていた。
「あきらああああ! あきらああああ!」
「あなた! しっかりしてください! 晶はもう、ひとり立ちできる立派な大人です! ……江戸時代以前は」
冴子おばさんも、変なところに律儀だ。
だが、隙だらけとはいえ、さすが鹿澄夢刀流免許の剣術家、力は半端ではなかった。取りすがる冴子おばさんを振り切り、涙と鼻水でよく前も見えなくなっているだろう状態のまま突進してきた。
当然、間にはぼくがいるわけで。
ぼくは、むんずとばかりに腕をつかまれ、抱き寄せられ、ほおずりされた。
「あきらあああああ! あきらあああああ! ……ん?」
武博おじさんは正気に戻ったようだ。
「晶じゃないな。お前は誰だ!」
「青啓高校二年男子、西連寺望です」
冴子おばさんと迫水さんはそろってため息をついた。でも、いちばんため息をつきたくなるのは、ぼくだと思うんだけど。
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