夢鬼人 アキラ 3-3

　そして、今、ぼくは高木さんの二度目の舞いを見たわけだが。

　恐ろしさを感じるまでに高度な身体の動きだ。さっきとはレベルがぜんぜん違う。

　高木さんはいった。

「やってみろ」

　ぼくは、もう一度お願いします、といいかけた。しかしその前に、高木さんはぼくの心を読んだかのようにいった。

「よく見ていろといったはずだ」

　ぼくは観念した。

　先ほど見たものをひとつながりのものとして思い出し、その通りに身体を動かす。たしか、高木さんはさっきこう動いたはずなのだが……。

　もとの体勢に戻ったとき、高木さんは鋭くいった。

「もう一度」

「あの」

「聞こえなかったのか。不合格だ。もう一度最初からやり直せ」

　もう一度手本を見せてくれ、といっても、即座に却下されるだろうことは、鈍いぼくでもわかった。

　ぼくは舞った。

　高木さんはいった。

「もう一度」

　ぼくは舞った。半ばやけになっていた。理屈ではそれが理想かもしれないが、普通の人間が、たった一度手本を見ただけで、できるわけがないじゃないか。

　高木さんはいった。

「もう一度」

　ぼくは舞った。先ほどのを五十パーセントのやけだとしたら、今回は百パーセント近くのやけだった。

　高木さんはいった。

「もう一度」

　ぼくのやけは、百二十パーセントにまで達していた。アニメファンのクラスメートが話していた、「宇宙戦艦ヤマト」だとしたら、すでに波動砲が撃てるレベルだ。

　それでも高木さんは首を振り続けた。

「もう一度」

　何回繰り返しただろう。

　ぼくは舞い、高木さんは首を振った。

　舞っているうちに、もうぼくは、なにがなんだかわからなくなってきた。

「もう一度」

　ぼくは舞った。

「もう一度」

　ぼくは舞った。

「もう一度」

　どれだけ時が経ったかすらよくわからなくなっていた。動き続けてきたせいか、古武術の鍛錬で人並み以上の体力はあると思っていたぼくでも、さすがに疲労困憊に達した。なにをしているのかすらよくわからない。

　高木さんがいった。

「よし」