「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 アキラ 3-4
なにをいわれたか、判断と理解が追いつかなかった。
「え?」
「よし、といったんだ。今の動き。決して忘れるな」
「これですか?」
ぼくは半信半疑のまま舞ってみた。
やってみて目を見張った。
「ぜんぜん違う!」
そうなのだ。どうしてはじめからこうして動いていなかったのだろう、と思うほど、舞う側としての動きが自然で無理のないものに感じられたのだ。
高木さんは静かにいった。
「普通、その境地に達するまでは十年かかる。きみは、それをわずか三時間で習得したのだ。どうやら、きみには、運動能力についての天賦の才があるらしい」
ぼくはおそるおそる聞いてみた。
「あの、この舞いは、学校の段階に例えたら、どのくらいのレベルにあるものなんでしょうか?」
高木さんの答えはにべもなかった。
「今の教育カリキュラムがどうなっているかは知らないが、小学校二年の算数で二と五の段の掛け算を覚えたくらいのところだ」
「あのう……」
さらにぼくの声はおそるおそるというものになった。
「高木さん、いや、師匠は、ぼくの教育レベルをどこまで高めたいんですか?」
「聞きたいか」
「はい」
「大学院博士課程単位取得退学……といいたいところだが、わたしもそこまでのことは望んでいない」
望まれても困る。ぼくは両肩になにかずっしりと重いものを感じてきた。だが、高木師匠はさらにその質量を増大させるようなことを付け加えた。
「できれば、中学校を卒業し、高校入試に合格するところまでは持っていきたい。それも短時間でだ」
そんな無茶な。
「できなかったらどうなるんですか?」
高木師匠は、明日の朝には、太陽は東から昇る、みたいな調子で、恐ろしいことを宣告した。
「時形流と鹿澄夢刀流の和解、すなわち夢鬼と夢逐人の和解どころか、きみは二学期を生きて迎えることはできないだろう」
……え?
ぼくは高木師匠の目を見た。残念なことに、嘘や冗談をいっている人間の目には見えなかった。
「だから時間が惜しい。次に行く。忘れるな。よく見ろ」
ぼくは全身を目にして師匠の動きを見た。たしかに、さっきより段違いに難しい。
特訓は深夜まで続いた。
「え?」
「よし、といったんだ。今の動き。決して忘れるな」
「これですか?」
ぼくは半信半疑のまま舞ってみた。
やってみて目を見張った。
「ぜんぜん違う!」
そうなのだ。どうしてはじめからこうして動いていなかったのだろう、と思うほど、舞う側としての動きが自然で無理のないものに感じられたのだ。
高木さんは静かにいった。
「普通、その境地に達するまでは十年かかる。きみは、それをわずか三時間で習得したのだ。どうやら、きみには、運動能力についての天賦の才があるらしい」
ぼくはおそるおそる聞いてみた。
「あの、この舞いは、学校の段階に例えたら、どのくらいのレベルにあるものなんでしょうか?」
高木さんの答えはにべもなかった。
「今の教育カリキュラムがどうなっているかは知らないが、小学校二年の算数で二と五の段の掛け算を覚えたくらいのところだ」
「あのう……」
さらにぼくの声はおそるおそるというものになった。
「高木さん、いや、師匠は、ぼくの教育レベルをどこまで高めたいんですか?」
「聞きたいか」
「はい」
「大学院博士課程単位取得退学……といいたいところだが、わたしもそこまでのことは望んでいない」
望まれても困る。ぼくは両肩になにかずっしりと重いものを感じてきた。だが、高木師匠はさらにその質量を増大させるようなことを付け加えた。
「できれば、中学校を卒業し、高校入試に合格するところまでは持っていきたい。それも短時間でだ」
そんな無茶な。
「できなかったらどうなるんですか?」
高木師匠は、明日の朝には、太陽は東から昇る、みたいな調子で、恐ろしいことを宣告した。
「時形流と鹿澄夢刀流の和解、すなわち夢鬼と夢逐人の和解どころか、きみは二学期を生きて迎えることはできないだろう」
……え?
ぼくは高木師匠の目を見た。残念なことに、嘘や冗談をいっている人間の目には見えなかった。
「だから時間が惜しい。次に行く。忘れるな。よく見ろ」
ぼくは全身を目にして師匠の動きを見た。たしかに、さっきより段違いに難しい。
特訓は深夜まで続いた。
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