「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 25-3
『抗毒血清?』
驚いた表情の二人に、わたしは力が抜けて行きそうになる身体の下から、辛うじて笑みを浮かべた。
『そう驚くこともないでしょう。血清療法は、抗生物質発見前は、伝染病治療のスタンダードだったんですよ。ちなみにこの方法を編み出した北里柴三郎先生は、日本人です。もっとも、ノーベル賞はベーリングにかっさらわれてしまいましたけどね』
血清療法。それは、馬などの動物に、病毒素を弱毒化してから注射し、抗体を作らせる。この手順を幾度か繰り返したうえで、その血液を遠心分離した上澄み(これが血清だ)を患者に注射すれば、出来上がった抗体の力により、毒素が抑えられる。誤解されがちだが、病気により病状を引き起こすのは、細菌そのものではなく、細菌が作り出す毒素なのだ。これさえ抑えれば、大半の細菌由来の病気は治癒するのである。
問題となるのは、その効果の不確実性と副作用、特に人体にとって異物である血清を投与することによるアナフィラキシー・ショックに代表されるアレルギー反応だが、クローン技術を応用したモノクローナル抗体の技術の発明などにより、これらの危険はかなり低くなっているといっていい。
『血清か……』
余目は、わたしの言葉を玩味するかのように口に出した。
わたしはうなずいた。
『そうです。この病気の夢と現実とにまたがる病原体というか、毒素を持っていると思われる生きた本とペンはここにある。後は、この本に注射器を突き刺して血液を採り、それを使って血清を作ればいい。血液を吸っては、生きて動いている本とペンです、できないということもないでしょう。そして、それを』
わたしは咳き込んだ。
『……大至急、わたしたちに関わった人や、病気を発病させてしまった人たちのもとに届けるようにしてほしい。そうすれば、このペスト禍も止むはずです。もしかしたら、わたしが夢で見たあの声は、わたしにこの行為をさせるために夢魔を殺すのを押し止めたのかも知れません』
『効くのか……?』
『わからない。だが、夢の世界と現実とをつなぐ唯一の媒体を使うんです。残された時間も、取れる手段もほとんどない中では一番まともな手段では? 大野龍臣の影響力があれば、大規模な投与の手配も簡単でしょう。お願いです、ことは一刻を争いかねません』
『わかった。やってみよう』
余目の言葉を聞いて、わたしは目を閉じた。
『頼みます……』
…………
そして、今のわたしがあるわけだ。
驚いた表情の二人に、わたしは力が抜けて行きそうになる身体の下から、辛うじて笑みを浮かべた。
『そう驚くこともないでしょう。血清療法は、抗生物質発見前は、伝染病治療のスタンダードだったんですよ。ちなみにこの方法を編み出した北里柴三郎先生は、日本人です。もっとも、ノーベル賞はベーリングにかっさらわれてしまいましたけどね』
血清療法。それは、馬などの動物に、病毒素を弱毒化してから注射し、抗体を作らせる。この手順を幾度か繰り返したうえで、その血液を遠心分離した上澄み(これが血清だ)を患者に注射すれば、出来上がった抗体の力により、毒素が抑えられる。誤解されがちだが、病気により病状を引き起こすのは、細菌そのものではなく、細菌が作り出す毒素なのだ。これさえ抑えれば、大半の細菌由来の病気は治癒するのである。
問題となるのは、その効果の不確実性と副作用、特に人体にとって異物である血清を投与することによるアナフィラキシー・ショックに代表されるアレルギー反応だが、クローン技術を応用したモノクローナル抗体の技術の発明などにより、これらの危険はかなり低くなっているといっていい。
『血清か……』
余目は、わたしの言葉を玩味するかのように口に出した。
わたしはうなずいた。
『そうです。この病気の夢と現実とにまたがる病原体というか、毒素を持っていると思われる生きた本とペンはここにある。後は、この本に注射器を突き刺して血液を採り、それを使って血清を作ればいい。血液を吸っては、生きて動いている本とペンです、できないということもないでしょう。そして、それを』
わたしは咳き込んだ。
『……大至急、わたしたちに関わった人や、病気を発病させてしまった人たちのもとに届けるようにしてほしい。そうすれば、このペスト禍も止むはずです。もしかしたら、わたしが夢で見たあの声は、わたしにこの行為をさせるために夢魔を殺すのを押し止めたのかも知れません』
『効くのか……?』
『わからない。だが、夢の世界と現実とをつなぐ唯一の媒体を使うんです。残された時間も、取れる手段もほとんどない中では一番まともな手段では? 大野龍臣の影響力があれば、大規模な投与の手配も簡単でしょう。お願いです、ことは一刻を争いかねません』
『わかった。やってみよう』
余目の言葉を聞いて、わたしは目を閉じた。
『頼みます……』
…………
そして、今のわたしがあるわけだ。
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なるほど、病気のメカニズムはそうなっていたのか~
なるほど、勉強になりました。
ふむふむ、なるほどなるほど。
これで明日の生物のテスト100点やしb
なるほど、勉強になりました。
ふむふむ、なるほどなるほど。
これで明日の生物のテスト100点やしb
- #211 ネミエル
- URL
- 2009.09/12 00:37
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生物のテストですか。懐かしい響き(笑)。
思い出したくはまったくないけど(笑)。
血清療法はむしろ保健体育のテストのように思える(爆)。