「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
2 闇は千の目をもつ(完結)
闇は千の目をもつ 25-4
「それにしても」
八宝菜を口にしながら余目はいった。
「桐野さん、あのネズミはどうなったんだろうな。鈴木道徳が化身したと思われる夢魔も、現れたという噂をついぞ聞かない」
わたしも八宝菜の白菜を噛みながら答えた。……まあ、この手の病院の食堂にしてはうまいほうか。わたしの母校の付属病院ほどではないけれど。
「あのネズミについては、太陽光で浄化されてしまったというのが妥当な解釈だと思うな。大元の夢魔に深刻なダメージを与えた後であるわけだし、あれでかなりのはびこる力が残っていたとしたら、それこそ人智を超越した化け物だ」
「化け物狩りの専門家がいうんだから間違いないか。じゃあ、鈴木道徳のほうは?」
腹が減っていたせいかご飯がすすんで仕方がない。わたしは口にものをほおばったままで答えた。
「しゅじゅき、ちょっとまて、みしょしるを……すまない。鈴木道徳のことだったな。彼の死後も夢魔として存続させるためのエネルギーを送っていた大元の夢魔が行動不能になってしまったんだから、エネルギーを断たれて消滅してしまったと考えるのが妥当だと思う。彼には最後まで気の毒な話だったが、まあ、一種の救いだといえるかもしれないな」
「筋が通っているのか、おれが丸め込まれているのか……」
余目はうずらの卵をこともなげに口に放り込んだ。待て、それは普通は最後まで取っておいて、締めくくりにその濃厚な味を楽しむものだぞ。
「最後にこれを聞いておきたい」
余目はテーブルに置かれていた魔法瓶から、湯飲みにお茶を注いでいった。
「お前さんが夢の中で聞いたという、あの謎の声の正体は誰なんだ? それだけが引っかかって仕方がない」
「わたしにもわからない」
わたしは、あっさりと認めた。
「蒲生長晴の霊があの世から忠告に来たのか、それとも鈴木道徳の霊のうちで成仏した部分が忠告に来たのか。もしかしたらあの島で暮していた、ペストで死んだ一族の残留思念かもしれない。なにせ閉鎖的な一族だったそうだからな。妙な魔力を持っていたとしても驚くには値しないだろう? だけど」
「だけど、なんだ?」
「いやね、どうせどの説を採っても納得できない結果になるなら、一番夢があって救われる説を採用するのがいいんじゃないかと思ってね。実はわたしは、こう思ってるんだ。この世には、本当に『神様』とか『聖霊』とかいうものがいるんじゃないか、それが、迷えるものを救いに降りてきたんじゃないかとね。もしかしたら、これが本当の……」
わたしは味噌汁を飲み干し、箸を置いた。
「デウス・エクス・マキナかもしれないな」
八宝菜を口にしながら余目はいった。
「桐野さん、あのネズミはどうなったんだろうな。鈴木道徳が化身したと思われる夢魔も、現れたという噂をついぞ聞かない」
わたしも八宝菜の白菜を噛みながら答えた。……まあ、この手の病院の食堂にしてはうまいほうか。わたしの母校の付属病院ほどではないけれど。
「あのネズミについては、太陽光で浄化されてしまったというのが妥当な解釈だと思うな。大元の夢魔に深刻なダメージを与えた後であるわけだし、あれでかなりのはびこる力が残っていたとしたら、それこそ人智を超越した化け物だ」
「化け物狩りの専門家がいうんだから間違いないか。じゃあ、鈴木道徳のほうは?」
腹が減っていたせいかご飯がすすんで仕方がない。わたしは口にものをほおばったままで答えた。
「しゅじゅき、ちょっとまて、みしょしるを……すまない。鈴木道徳のことだったな。彼の死後も夢魔として存続させるためのエネルギーを送っていた大元の夢魔が行動不能になってしまったんだから、エネルギーを断たれて消滅してしまったと考えるのが妥当だと思う。彼には最後まで気の毒な話だったが、まあ、一種の救いだといえるかもしれないな」
「筋が通っているのか、おれが丸め込まれているのか……」
余目はうずらの卵をこともなげに口に放り込んだ。待て、それは普通は最後まで取っておいて、締めくくりにその濃厚な味を楽しむものだぞ。
「最後にこれを聞いておきたい」
余目はテーブルに置かれていた魔法瓶から、湯飲みにお茶を注いでいった。
「お前さんが夢の中で聞いたという、あの謎の声の正体は誰なんだ? それだけが引っかかって仕方がない」
「わたしにもわからない」
わたしは、あっさりと認めた。
「蒲生長晴の霊があの世から忠告に来たのか、それとも鈴木道徳の霊のうちで成仏した部分が忠告に来たのか。もしかしたらあの島で暮していた、ペストで死んだ一族の残留思念かもしれない。なにせ閉鎖的な一族だったそうだからな。妙な魔力を持っていたとしても驚くには値しないだろう? だけど」
「だけど、なんだ?」
「いやね、どうせどの説を採っても納得できない結果になるなら、一番夢があって救われる説を採用するのがいいんじゃないかと思ってね。実はわたしは、こう思ってるんだ。この世には、本当に『神様』とか『聖霊』とかいうものがいるんじゃないか、それが、迷えるものを救いに降りてきたんじゃないかとね。もしかしたら、これが本当の……」
わたしは味噌汁を飲み干し、箸を置いた。
「デウス・エクス・マキナかもしれないな」
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~ Comment ~
コメ返しってことでw
生殖能力どうなんですかね~w
人間の細胞が鋼鉄細胞に置き換わっただけだから
もしかしたら…
あるかもしれませんよ?www
まぁ、男としては…ですけどねww
生殖能力どうなんですかね~w
人間の細胞が鋼鉄細胞に置き換わっただけだから
もしかしたら…
あるかもしれませんよ?www
まぁ、男としては…ですけどねww
- #215 ネミエル
- URL
- 2009.09/13 11:43
- ▲EntryTop
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
桐野くんの活躍は、全五部作の構想になっています。
いちおう第三部は書き上げてあるのですが、最終作の五部作目が出るのは……。
早くても七年後……かなあ。(そのときまでのんきにブログをやっていられるかどうかはさておく(爆))
> もごもが・・・
>
> しゅまない、おみじゅを…
>
> ふぅ、よし。
> ご飯を頬張ったまま話してはいけないんですね、家庭科の教科書に書いてありました。
>
> 桐野さんの物語はこれで終わりとか…いわないでくださいっ!!
>
> 悲しいじゃないですかっ!!
桐野くんの活躍は、全五部作の構想になっています。
いちおう第三部は書き上げてあるのですが、最終作の五部作目が出るのは……。
早くても七年後……かなあ。(そのときまでのんきにブログをやっていられるかどうかはさておく(爆))
> もごもが・・・
>
> しゅまない、おみじゅを…
>
> ふぅ、よし。
> ご飯を頬張ったまま話してはいけないんですね、家庭科の教科書に書いてありました。
>
> 桐野さんの物語はこれで終わりとか…いわないでくださいっ!!
>
> 悲しいじゃないですかっ!!
もごもが・・・
しゅまない、おみじゅを…
ふぅ、よし。
ご飯を頬張ったまま話してはいけないんですね、家庭科の教科書に書いてありました。
桐野さんの物語はこれで終わりとか…いわないでくださいっ!!
悲しいじゃないですかっ!!
しゅまない、おみじゅを…
ふぅ、よし。
ご飯を頬張ったまま話してはいけないんですね、家庭科の教科書に書いてありました。
桐野さんの物語はこれで終わりとか…いわないでくださいっ!!
悲しいじゃないですかっ!!
- #213 ネミエル
- URL
- 2009.09/13 01:25
- ▲EntryTop
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鋼鉄細胞に置き換わった時点でもうだめじゃないかなあ。生物として違いすぎるので。
いや、人間のDNAの基本情報だけを取り出して鋼鉄細胞の遺伝情報に翻訳するためのインターフェースのような遺伝子(?)があったら(二重螺旋構造のうちの一本が人間のものでもう一本が鋼鉄細胞遺伝子ということになるのか(笑))、遺伝情報をコピーすることは不可能ではないのか。この場合、コピーされる情報はかなり限定的なものにならざるを得ないけど。
とはいうものの、あの娘らを作ったベルカ帝国では生殖能力なんかはじめから与えなかったという説を採るなあ。生殖能力なんか与えて、あの娘らがガキを生んでぼんぼこぼんぼこ増えたら、軍事バランスが崩れる以前に帝国それ自体にとっての脅威や(笑)。核爆弾が子供を生んで増えるようなもんだからなあ(笑)。