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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    2 闇は千の目をもつ(完結)

    闇は千の目をもつ E

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    エピローグ・B

     ……わたしは、わずかひと月前のあの騒動を思い出しながら本を閉じた。
    「先生のおかげで、秋子は無事に健康を取り戻しましたわ。まだ、鈴木さんのことを許してはいないようですけど」
     わたしのもとを訪れた客人、島田春江女史はそういって晴れやかに笑った。
    「そうですか」
     わたしは机の上の『闇は千の目をもつ』に視線を落とした。
    「しかし、よくこれを返してもらえましたね。大野氏のところの研究所が保管していると思ったのですが」
    「一週間くらい前から、こうして乾いて動かなくなり、普通の本に戻ってしまったということで返してもらえたのです」
    「誰が保管するんですか」
    「もちろん桐野先生ですよ。鈴木さんが最後に託したのは、先生でしょう?」
    「それはそうですが、わたしに結末をつけろというのは」
    「先生ならできますわ。ここにこうして、ペンもあります」
     島田春江はバッグからペンを取り出した。わたしが洞窟の奥で見た、あのペンだった。さらに市販のインクの瓶を取り出すと、こちらに笑顔を向けた。
    「それで、この事件に関するすべての終わりを、しっかりとこの本に書いてほしいのです。もう、インクがないと書けませんがね」
    「できますかね」
    「くどいようですが、先生でなくてはできません」
    「わかりました。お預かりしておきましょう」
     わたしは、一式を自分の手前に置いた。
     島田春江は、ちょっともじもじしながらわたしにいった。
    「今日ここに来たのは、これだけが目的でもないんです」
    「どういうことですか?」
     わたしは困惑しながら尋ね返した。
    「いえ……受付として雇っていただきたいと思って。病院には辞表を提出しました」
    「!」
     わたしはなんと返事していいのかわからなかった。
    「旦那さんには話したんですか。だって、わたしの診療所はそんな利益上げてませんよ」
    「主人は去年肺癌でこの世を去りました。だからあたしは独りです。それに、大野先生から直接お金が出るそうですし」
    「しかし、島田さんの看護師としての腕は、こんなところで振るわれるよりは……」
    「この診療所でも同じでしょう」
     わたしは覚悟を決めた。
    「拒絶は許さないということですね」
    「すみません」
    「いいでしょう。これから、基本的に毎日来てください。誰もいませんが、あそこが受付、やることは電話番と客の相手くらいです」
    「それくらい想像がつきますわ」
     島田春江は立ち上がった。
    「お送りしましょうか?」
    「いえ。人を待たせていますので」
    「でも、入り口くらいまでならいっしょに行きますよ」
     わたしは島田春江をエスコートして出入り口に向かった。誰が待っているというんだ?
     わたしは出入り口の扉を開けた。
     見覚えのある車が道路に止まっていた。
     見覚えのある男が運転席にいた。
     島田春江は、わたしに一礼するとその見覚えのある男、余目の運転する車の助手席に乗り込み、その肩に頭をもたせかけた。
     あの男、こういう趣味があったのか。
     余目は、にやりといういつもの笑みを浮かべると、車を発進させ、わたしの視界から消えた。
     わたしは扉を閉め、自分の椅子に戻った。
     この事件を締めくくる言葉か。
     わたしは二、三分考え、ペンを取り上げ、インクに浸すと一気に書いた。

    『闇は千の目をもつ。
     されど、そはすでに閉じられたり』

     千の目が再び開いたとき、この本はもう一度生命をもって動き始めるだろう。しかし、蒲生長晴と鈴木道徳の目はもう閉じられてもいいじゃないか。
     わたしはひとつうなずくと、『闇は千の目をもつ』を引き出しの一番下にしまった。
     さて、一日の終わりが来るまでの時間、いったいどうして過ごそうか……。
     「虎奇亜」に行って、ユミコに意見を聞いてみるのはどうだろう?

    闇は千の目をもつ 了
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    いちおうミステリとしてはいちばんまとまっているのがこの話かな、と思います。

    なにも考えずに書き出して毎日更新でまとまってしまうのだから、このころのわたしはほんと、書くことに飢えていたんだなあ……。

    今ではこんな力技も体力的に難しく(汗)


    楽しんでもらえたようでよかったです。3年後が怖い(^^;)

    NoTitle

    最後まですごく面白かったです。

    生きている本から血清、のくだりでは成程そう来たか! と。
    全部がつながってスッキリ、な終わり方でした。

    今回は桐野先生があまり業を背負わず安心、な感じでもあります。
    島田さんカッコ良かったですね。こんな女でありたいかも(笑)

    次のお話を読むのが一層楽しみになってきました。
    また読ませていただきます。

    Re: れもんさん

    もともと島田さんは、最初に書いた「3」のちょい役として登場させました。その後書いた「1」に出した婦長さんが目立っていたので、面白いから「3」の島田さんと同一人物にしちゃえ、ということになって、そのバックグラウンドを書くために「2」を書いたのであります。だからある意味、この話は島田さんの話なのでありますが、それにしても余目さんとくっつくとは、書き始めたときには想像もしていなかったのでありました(笑)。登場人物が勝手に動くとはこういうことらしいです。

    血清のアイデアは、真ん中あたりで思いつきました。「これでこの小説を終わらせられるーっ!!」と喜んだのを覚えています。300枚で終わらせようと計画していながら、終わらせる方法を考え出したのは真ん中あたりって、いったいどんな突貫工事や(笑)。これも登場人物が勝手に(違)

    「3」もどうぞお楽しみに~!!

    NoTitle

    やっと、読破する事が出来ました!

    って余目さん――!?
    しかも、島田さんが受付に!?Σ(´Д`)
    血清とかも全く予想してなかったし・・。

    本当に、まさかの展開が多くて面白かったですv

    次は、「3」の方を読ませていただきますね★

    >神田夏美さん

    就職活動でお忙しい中、時間を割いて読んでいただいてありがとうございますm(_ _)m

    最後に事態を収束させるつもりではいましたが、抗毒血清というアイデアが浮かんだのは、連載真ん中あたりのところです。ひらめかなかったらめちゃくちゃな終わり方していたかもしれません。ちなみに、血清というものは、もっと作るのに時間がかかる(らしい)ですし、即効性もない(らしい)ですので、文中でも触れた効果の不確実性と副作用とのせいで、今ではあまり用いられることは少ないとか。例えば、牛の血液を使った血清を射った人に、今度は別な病気で牛の血清を射てば、アナフィラキシーショックで死亡する可能性が大だそうでして。ヒトのクローン細胞を使ったモノクローナル血清というやつならば大丈夫(らしい)ですが、そこらへんはどうかウィキペディアなりを……。

    島田さんは、今回は予定をはるかに超える大活躍ぶりでしたが、次作(厳密には第一作)では、ほとんど目立っていません。そのころはなにも設定考えてなかったもので(^^;)

    では、お時間が空きましたら、「吸血鬼を吊るせ」もお楽しみください。1月からは、第4シリーズ「天使を吊るせ」の連載も始まりますよ~♪

    こんにちは!
    遅ればせながら、「闇は千の目を持つ」読破致しました!
    読んでいる途中では「これ、本当に解決できるのか? どうやって解決するのだろう……」とドキドキしていたのですが、こうして読み終えてみると、綺麗に終わっていてびっくりです。
    途中桐野さんは失敗してしまったのかと思いきや、病気に対する血清という解決法……さすがはナイトメア・ハンターであり医者である桐野さんです。物の夢にも入れるという設定も活かされていましたね。
    タイトルに対して、ラストの「そはすでに閉じられたり」というのも、なるほど! と痺れました。

    そして今回は、全編通して島田さんのキャラが魅力的で立っていたなあと思います。桐野の診療所の受付になり、まさかの余目さんエンド(爆)とは^^島田さんへのごほうびとはこのことだったんですね?
    まあ、島田さんは今後の桐野さんのもとで活躍してくれそうなので、期待大です。^^

    では、次の「吸血鬼を吊るせ」もまた読ませて頂きますね^^
    次は桐野さん、どんな事件に巻き込まれてしまうのでしょう^^

    >佐槻勇斗さん

    余目さんは、単に熟女が好きなわけではなくて(まああの人もそれなりの齢なのでそういう趣味もあったとは思いますが(笑))、島田さんの知性と度胸と性格に惚れたのでしょうね。

    ただ若いだけよりも、「話して楽しい」人を求めたのでしょう。まあ世の中そういうものです(笑)。

    でも書き始めたときは2人にこういう結末が来ることなどまったく考えていなかったのであった(爆)。ストーリーの結末は考えていたけれど。奥が深い(笑)。

    ちなみに最初に第3弾にあたる小説を書いたときには余目さんは頭の中にかけらも存在していませんでした。うむむ。

    だからちょっと整合性に欠けるかもしれませんが、「吸血鬼を吊るせ」もよろしくお願いするであります~♪

    よ、読みました……!
    一ヶ月弱、楽しませていただきました!
    あいかわらず読むのが遅くて申し訳ありません^^;

    ま、まさかの余目氏が熟女好k(殴

    い、いえ、なんでもありません;;;

    これから「3」のほう読ませていただきますね♪
    楽しみです^^*

    >せあらさん

    本当に読まれるのが速いですね。これはせあらさんの小説も気合いを入れて読まなくちゃなあ~(^^)

    アイデアについては自分の頭に鞭を打ってやっていますが、なかなかこれといったものが浮かんでくれませんね。根性でやってます。

    がんばるぞ~!!

    「闇は千の目をもつ」無事読み終わりました!
     というか、もう読み終わっちゃった;
     1話読むと次も読みたくなって展開を早く知りたかったのに、いざ読み終わると「あぁ~(泣)」って感じです。
     結末を早く知りたいのに、まだ読み終わりたくないっていうのは贅沢な悩みなんですけどね。
     何だか……発想力の素晴らしさに毎回魅せられているような気がします。
     うまいなぁマネしたいなぁって思っても、なかなかその発想力はマネできない;
     その筆力、羨ましいです。。

     次回は10月1日連載開始ということで、楽しみにしていますねv

    >ネミエルさん

    かっこいいとおっしゃっていただけて、天にも昇る気持ちであります! (^^)v
    もうハードボイルドファンにとって最大の褒め言葉ですよ(涙)。
    第3シリーズの「吸血鬼を吊るせ」は10月1日より連載を開始する予定です。
    それまでは、ショートショートをどうぞ。

    7年後というのは、まあ構想における物理的理由もあるんですけどね。今は詳しくはいいませんけど(^з^)~♪

    また、閉じたり。

    かっこいいです!!
    思わずPCの前で悶絶しました。

    かっこいい終わり方でした。
    7年後までお付き合いさせていただきますよ!!
    (多分ですがw)
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