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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:14 迷子の伝書鳩

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    迷子の伝書鳩



     暖かくていい天気の日でした。私立探偵のエドさんは、事務所の空気を入れ替えようと思って、窓を大きく開けました。

     突然、空からなにか鳥のようなものが、事務所の真ん中に飛び込んできました。エドさんが驚いてそばに寄ると、それは一羽の伝書鳩でした。ぱっと見ただけでも、翼がひどく傷ついていることがわかります。まともに飛べるようになるためには、動物病院でじっくりと治療する必要がありそうです。

     エドさんは、かぶりを振りました。



    「あの鳩は、元気になったかい?」

     動物病院の鳩舎にやってきたエドさんに、院長先生は笑顔で答えました。

    「ここに連れてくるのが早くて、運がよかったよ。翼にえらい傷があったが、手術したから、もう大丈夫。傷が完全にくっついて、羽根が生え変わって、昔のように飛べるようになるまで、お前さん、面倒見てやれ」

    「わたしが?」

    「しかたないだろう。こう見えてもうちの病院は人手不足のうえに場所も不足してるし。安心しろ、世話の仕方は教えてやるから。探偵が鳥を飼うなという法もあるまい」

     エドさんは複雑な表情で、鳩をアパートに連れ帰りました。

    「あの……探偵さん、でしたよね」

     帰りの車の中で、鳩が話しかけてきました。このところの不思議な事件で、すっかり慣れっこになっていたエドさんは、ごく自然にうなずきました。

    「ああ。そうだよ。どうしたんだい?」

    「お願いがあるんです。ぼくの行くはずだった家を、一刻も早く探してくれませんか?」

    「な……に?」

     アパートへ帰り着くと、エドさんは、真剣な面持ちで鳩から話を聞きました。

    「ぼくは、海の見える大きなお屋敷と、街中の小さなアパートを往復するのが仕事でした。二人の飼い主のうち、お屋敷に住んでいたビルという少年は、車椅子の生活を余儀なくされていて、ほとんど唯一の楽しみは、街に住んでいるマークという少年との、ぼくを使った手紙のやりとりでした。もちろん、もう一人の飼い主というのは、マークのことです」

    「それで」

    「ぼくは、マークの家からお屋敷へ向かう途中、プロペラ機とぶつかってしまったんです。ビルは、たった一人で手紙を待っています。一刻も早く届けなくては」

    「二人の少年の名前は、ビルとマークとしかわからないんですか? 家族や、住所は?」

    「残念ながら、わかりません。ぼくは鳩で、そこまで詳しく人間の決まりごとは」

    「困りましたね……そうだ! あなたが運んでいる手紙を読めば、なにか手がかりが」

    「そんなのだめです!」

     鳩は叫びました。

    「通信の秘密は、どんなことがあっても、絶対に守らなくてはなりません! 読むだなんて、考えてもおぞけが走ります!」

     エドさんは、ほとほと弱り果てました。この状況下で、これだけの手がかりで、どうやって短時間で探し当てろというのでしょう。



    「それでも、ここにたどりついたんですか? 探偵さんって、すごいんだなあ!」

     車椅子の少年、ビル・ロイド君は、ぐっと身を乗り出しました。エドさんは、照れたように、困ったように頭をかきました。

    「いや、別にそれほどたいしたことはしちゃいないんですがね……」

    「教えてください。どうやってここへ?」

    「まず、わたしがやったことは、地図の上に、鳩が向かっていただいたいの方向の線を引くことでした。鳩でも、方位くらいはわかりますからね」

    「でも、鳩は地図が読めないでしょう」

    「読めなくても、地形はわかりますよ。今の世にはこういう便利なものがありますから」

     エドさんは、折りたたまれたコピーを取り出しました。

    「おわかりでしょう? 航空写真地図です。ちょっと気の利いた役所や図書館に行けば、誰でも閲覧できます。海沿いの写真を、この鳩に見せたら、すぐにわかりました」

    「なるほど……でも、本当は、なにか最新の技術を使ったんでしょう? 鳩はふつう、口をききませんからね」

     鳩が「クルックー」と鳴き、エドさんは苦笑いしました。

    「お礼のお金は、父が払ってくれますから、ご安心ください」

    「それは別にいいのですが……手紙の内容は、いったいなんだったんですか?」

     少年は、にこりと笑いました。

    「通信の秘密です!」

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    ~ Comment ~

    Re: fateさん

    エドさんが聞いたら苦笑いするでしょうね。

    そんなかっこいいものじゃないよ、っていって。

    それだからエドさんなんですが。

    探偵とは…

    すべての職業には本来は言えることですが、
    探偵とは、本来そういう、今にも切れてしまいそうな、或いは断ち切られてしまった‘絆’を結び直す仕事、
    きっと‘愛’がないと出来ない仕事なのかもなぁ、と思いました。

    Re: YUKAさん

    辞書の回で、ナポレオン一世といっているだけで地球です(笑)

    ある種のトワイライトゾーンというか、桃源郷みたいなものかと。(^^)

    こんばんは♪

    エドさ~~~ん、どんどんいい人ぶりが増してます^^
    しかも、もう能力者の域。
    エドさんにしか聞こえないのでは?

    航空写真地図……もう、ここは地球ということですね?
    あ、違っても航空写真地図ぐらいあるのか。。。

    Re: 有村司さん

    その点についても後の話でたっぷりと(笑)。

    ついでにいっておけば、これからもっと変なやつも来ます(笑)。

    エドさんも仕事を選ばないというか選べないというか(笑)。

    おはようございます。

    最近、エドさんのところへやって来る依頼主が変(あり得ないものが喋る)のではなく、エドさんに聞き取る能力があるのでは?と思うようになってきました。

    見返りを期待せず働くエドさんは本物の探偵ですね。
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