名探偵・深見剛助(冗談謎解きミステリ掌編シリーズ)

    番外編:結論殺人事件(黄輪さん作)

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    結論殺人事件

     名探偵、深見剛助は額に冷汗を浮かべながら、そう締めくくった。
    「とにかく、これで今回の事件は解決したと言えるでしょう」



     さる大学の学長の死体が発見され、その捜査は難航を極めていた。
     その原因の一つは、被害者は大学の内外に敵を多く作っており、もしも事件である場合、犯人と思しき者が多数いたことだった。
    「次期学長の座を狙う大学の古株に、論文をこき下ろされた准教授、単位を落とされ卒業できず、中退した元ゼミ生が数名、
     共同論文を単独で発表されて仲違いした旧友、特許で争っていた大手製造会社役員、さらには遺産狙いの妻に娘に愛人1号、2号、3号、……と」
    「まるで見本市ですね、犯人役の」
     嘲るような深見剛助の言葉に、赤塚刑事も空笑いで返す。
    「はは……、まったくですね。最も疑わしい人物だけでも、なんと21名! こんなにうじゃうじゃいたら、捜査会議のホワイトボードが人名だけで真っ黒ですよ」
    「でしょうね」

    「……しかし、その時点で既に、ある程度の目星は付いてはいたんです」
     深見剛助の言葉に、たった一人、重要参考人として連れて来られたその人物は息を呑んだ。



     さらに捜査を難航にしていたのは、被害者がここ数日、その怪しい人物のオンパレードに恐れをなし、自宅からも離れた遠方のペンションに引き籠もっていたことだ。
    「見て下さいよ、深見さん。これ全部、脅迫状なんですよ」
     赤塚刑事が見せてくれたその手紙の束、いや、山を見て、深見剛助は目を疑った。
    「な、何通あるんです? とても10や20で収まりそうには見えませんが……」
    「ええ、単なるイタズラ程度のものも含めると、59通です」
    「半端なストーカーより性質が悪い。そりゃ、怯えもするでしょうね」
    「ええ。そのため被害者は、ペンションに鍵をかけ、庭一面に鉄条網を撒いて、誰も入れないようにしていたんです」
    「しかし籠もって3日後、突然警備会社がペンションからの警報を確認し、向かったところ……」
    「リビングの真ん中で、大の字になって死んでいるのを発見した、とのことです」

    「死体には外傷が無く、また、死因も心臓麻痺とのことでした。勿論自然死ですから、これだけでは事故か事件かは、断定できません。
     しかし詳しい状況を知っていくにつれ、ぼくは確信を深めていました。あなたが犯人である、これができるのはあなたしかいない、と」
    「……」
     深見剛助にはっきりと指差され、重要参考人のその初老の男性、かつて被害者の共同研究者だった博士は、表情を硬くした。



    「ええ、ご明察です。私が彼を殺しました」
    「そうですか」
     赤塚刑事をはじめ、警察官らが博士を囲む。
    「しかし何故です? あの精密かつ緻密な、私が考え得る限りで最高、最密度のトリックによって、私は完璧、完全なるアリバイを確立できたはずです。
     どこであなたは、私のトリックを見破ったのですか?」
    「……詳しい話は、署の方で行った方がよろしいでしょう。連行して下さい」
    「分かりました」
     なおも硬い表情を崩さない博士を、刑事たちが連行していった。

    「いやあ、深見さん。今回もお見事でした。
     正直な話、今もわたしには、何がどうなっているのか」
     赤塚刑事の言葉に、深見剛助は一瞬、顔を背ける。
    「……」
    「……深見さん?」
    「ああ、いえ。そうですね、ええ、非常に難解なトリックでした。まあ、詳しいことは仕掛けた本人がすべて、包み隠さず話してくれると思います、ええ」
    「え? 深見さんが明かしてくれるんじゃないんですか? いつもの流れなら犯人を前にして、あなたが色々と理屈を並べて……」
     意外そうな目を向け、尋ねてきた赤塚刑事に、深見剛助は淡々と、こう返答した。
    「隠しておくべきものも有ると言うことです。
     赤塚さん、どうかこの事件は、犯人からの言葉だけで、全容を考えて下さい」
     その言葉に、何かしらの含みを感じ取ったらしく、赤塚刑事はそれ以上、追及しようとはしなかった。
    「……分かりました」



     この時――深見剛助は部屋を去って行く赤塚刑事に聞こえぬよう、ぼそっと、こうつぶやいていた。
    「順序や細かい論拠はどうあれ、まあ、筋は通るんだから、いや、通ったんだから、いいじゃないか。
     結果さえきっちりしていればいいだろ」、……と。

    結(果)論殺人事件 完


     と、いうわけで、黄輪さんから深見剛助ものショートショートをいただきました。嬉しい~!!

     きちんと深見剛助もののフォーマットを守ってくれているし、なにより深見剛助らしい展開。

     サンクスですぅ~~~!!

     わたしだったらちょっと前にはやった「現象学的本質直観」とかいわせて煙に巻くかな。

     とにかく、ありがとうございました!!!!!!!

     なお、改行その他は送られてきたファイルにあったそのままの設定にしてます。


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    ~ Comment ~

    Re: 黄輪さん

    それは楽しみですね~。

    あんな地味な人ですが、よろしくお願いいたします。(^_^)

    NoTitle

    いえいえ、お気になさらず。
    ほとんど個人的なこだわりに近いものなのでw

    いずれその「ミス」を補完したものを、
    弊ブログに掲載するかも知れません。
    その時は「えっ、こんな細かいことを気にしてたのか?」
    とご笑覧くださいな。

    Re: 黄輪さん

    改行ミスらしいところに気がつかなかったわけではないですが、もしかしたら「効果」かも、と思い修正はしませんでした。

    修正したほうがよかったかなあ。

    NoTitle

    掲載していただき、ありがとうございます!
    できる限り「名探偵・深見剛助」シリーズの流れを踏襲したつもりなので、「らしい」と評価されて嬉しい限りです。

    一箇所だけ、改行をミスったところがあるのは内緒。
    その改行があっても普通に読めますし、さして致命的なものではないですが……。
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