恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 4

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    「どうにもしようがない、と、みんないったのだな」

     ぼくはうなずいた。

    「大人のはんだんというものはそういうものだよ。しかし、わしはそういうはんだんをするには子どもすぎる、と、教え子たちは昔からいっていたものだ。いいだろう。鈴木くん、きみのすわっている横にあるコードを取りなさい」

     ぼくは、暗がりを手探りし、なにかのコードをつかんだ。恩田博士のペンライトで照らされると、それは黄色と黒のしまもようがえがかれていることがわかった。工事のひょうしきなんかによく使われている、あの色だ。

    「これですか?」

    「そう、それだ。そのコードをわたしてくれないかね。その先たん部に、コンセントがあるだろう?」

     コードのはじっこの部分を手探りすると、たしかにその先っぽにはコンセントがあった。だけど、そのコンセントは、ふつうの二本のでっぱりじゃなくて、オーディオやパソコンのケーブルみたいに、たくさんのピンがあった。しかも、むき出しで。

    「これをどうするんですか」

    「万事、まかせておきたまえ。きみは、わしの大学生時代のあだ名を知っているかな。ミスター・リーインカネーション、『なんでも生まれ変わらせる男』、りゃくしてリンカネさん」

     恩田博士はコンセントを慣れた手つきでぶすり、とかべのソケットにつきさした。そのとたん、室内にすえ付けられた、たくさんのガラスのくだに、ばりっばりっと、むらさき色をしたいなずまみたいな光が走った。

    「きみはこれから目にすることになる。わしの発明したスーパーエネルギーの大いなる力をな。電気なんていう弱い力といっしょくたにするのではないぞ。あれが虫一ぴきの力なら、こちらは空をかけゆく天馬の力だ」

     びりっ、びりびりっ、と空気がふるえた。ガラスがくだけるばりんばりん、という音がした。森のやみがすいとってくれなかったら、ぜったいにご近所にめいわくになってしまう音だ。でも、ぼくには、どんなロックバンドの音楽よりも、むねがどきどきしてみりょく的に聞こえたんだ。

     そう音は、始まったときと同じくとうとつにやんだ。なにか失敗したのか、と思ったとき、天じょうの明かりがぱっとついた。恩田博士の実験室は、あふれる光で真昼のようになった。

    「どうだ、言葉も出ないだろう。停電してもこれさえあればこまりはしない」

    「でも博士、じゃあどうして、今日はこれまで使わなかったの?」

    「この力は、ふつうの生活で使うには強すぎるのだ。そのまま十分も入れておくと、オーバーヒートしてしまう。ちょうどいい量だけ取り出して出力する方法をさがしているのだが、これがなかなかむずかしい。それがわかれば、わしはノーベル平和賞もゆめではないのだが」

    「物理学賞じゃないの?」

     ぼくの答えを聞いて、博士は笑った。

    「よくそんな言葉を知っているな。感心、感心。しかし、エネルギー問題をどうにかできたら、それは物理学を飛び越えて、平和賞もののこうせきだ。わしもそういう学者になりたかったのだが……まあそれはいい。今は、このエネルギーがどうしても必要なのだ。鈴木くん、こちらへ来なさい。わしのそばをはなれてはいけない。どんなけがをするかもわからないからな」

     ぼくは、ぐるっと実験室の中を見回してから、博士の後に続いた。光の中で見ても、この部屋は、はい品かいしゅうで集められた、そ大ゴミの置き場としか思えなかった。博士は、おんぼろな皮のいすにどっかりと座った。その前にすえつけられているテーブルには、たくさんのスイッチがあることにぼくは気づいた。博士はゴムでできた手ぶくろをはめた。手ぶくろからはコードがのび、スイッチだらけのテーブルとつながっていた。そのひとつが、ぱちりとはじかれた。博士は手をさすり合わせると、にやりと笑った。

     次のしゅんかん、ぼくは博士のこしにしがみついていた。天じょうがぱくりと開いて、人の体くらいに大きな人間の手のようなものがふたつ、うでのようなものにくっついて下りてきたからだ。

    「ななな、なんですか、あれ!」

    「わしの作ったマニピュレーターだ。力仕事をするには、これがいちばん。この両手は、おはしでご飯を食べるくらい楽らくとあつかえる」

    「で、でも、この機械って、あぶないんじゃないですか?」

    「ものにさわるとセンサーが作動してブレーキがかかるようになっているから、鈴木くん、きみが考えるよりもあつかいやすいのだ。なれると、老人のわしでもこんなことができる」

     恩田博士は、マニピュレーターを動かして、がらくたの中からせんたく機のようなものを、ひょいとつかみ上げた。ぼくはさけんだ。

    「すごいや!」

    「すごいのはこれからだよ、鈴木くん」


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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    いや、エネルギー問題を解決して、世界を戦争の危機や飢餓やそういったものから救ったら、平和賞ものですよ。

    少なくともわたしが選考委員だったらあげちゃいます(^_^)

    NoTitle

    うさんくせえ・・・。。。
    ・・・というのはともかく。
    エネルギーで平和賞かあ。。。
    まあ、言いえて妙ですね。
    今のご時世、エネルギーで世界で戦争するかどうかきめてますからね。

    Re: ツバサさん

    人間の想像力は無限なのです。

    問題は、「無限に引き出す鉱脈を当てるにはどこを掘ったらいいかわからない」ことにあります。

    とほほ。

    NoTitle

    エネルギー問題を解決できるような凄い発明ですね( *´艸`)
    上手く扱えるようになれば、とっても便利そうです(笑)

    それはさておき、リンクをしていただいてありがとうございます(´∀`)
    こちらもリンクさせて頂きました~。
    今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
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