恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 5

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     たしかに、すごいのはこれからだった。

     博士は、せんたく機の底の板を外した。力まかせにやるのかな、と思ったら、マニピュレーターの指先からは、ドライバーやその他の細かな作業をするための機械も自由に出し入れできるようだった。

    「ふっふっふ、こうしていると大学で教えていた昔のころを思い出すな」

    「でも、博士、せんたく機なんか何に使うの?」

     首をひねったぼくに、博士はこともなげに答えた。

    「エンジンだよ。モーターだな。大出力のエンジンが必要だ。それがないと、空ひとつ飛べないからな」

    「空を飛ぶ! どうやって?」

    「まかせておきたまえ。わしはどんな機械でも、生まれ変わらせることができるのだ。次はこの、じょう気タービンのプロペラをこうくっつける、と。すい力を生み出さないと、前へは進めない」

     マニピュレーターの先から、ほのおがふき出した。こわれたのか、と思ったら、なんと、博士は、それで機械をくっつけ始めたのだ。

    「どうかね、このわしのようせつ技術は。きみがせっちゃくざいを使うよりも、うまくできるぞ。この鉄の板をこう曲げてつばさを作ろう。こんなものかな。これをこうしてくっつける。ふふん、いい感じだ。コックピットは、この二組の二人乗り自転車のサドルを、自動車の車体の中にこう収める。タイヤは外して、チェーンをプロペラにちょくせつ結んでしまおう。そうじゅう方法はかんたんに限る。シンプルイズザベストだ。これで自由にうちゅうを飛べる」

     ぼくはさらにびっくりしてたずねた。

    「博士! 月へでも行くつもりなの?」

    「月だなんてけちなことをいうもんじゃない。われわれが目指すのは、めい王星だ。愛海ちゃんも書いていたんだろう? めい界へ、星となっておともします、と。めい界の『めい』と星、そこからみちびきだせる答えは、すなわちめい王星へのかた道の旅だ。だからわしらも、それなりの用意をととのえなくてはならん」

    「めい王星?」

     ぼくは、ちょっとがっかりした。だって、めい王星っていったら、この間、ニュースで、わく星から外されたといわれたあれじゃないか。そんな星へ行って、どうするんだろう?

    「めい王星をばかにしてはいけない。あれはあれで、太陽けいのじゅんわく星ぐんの中では、最も早く発見された天体として、歴史に刻まれる価値があるのだからな。きどう長半径約六十億キロメートル、近日点きょり四十五億キロメートル、遠日点きょり七十五億キロメートル……」

     恩田博士は機械をあやつりながら、ずらずらと数字をあげ始めた。

    「博士、そんなことをいわれても、ぼく、わかりません。ものすごく遠いって事くらいしかわかりません」

    「すまない。つい、きみがふつうの小学生だということをわすれてしまった。何十億キロも遠いということさえおぼえておいてくれればいい。さて、なぜめい王星かということだが、ほかにも理由がある」

     恩田博士が、ぱちりとひとつまばたきをすると、ただの木のかべと思っていた実験室のかべが、すうっととう明になっていき、大きなスクリーンになった。星空が映し出されたと思うと、そこに目もくらむような速さで直線や曲線が何本も走った。

    「このいくつものだ円きどうが、太陽系のわく星やじゅんわく星たちの公転きどうだ。問題のめい王星を出してみよう」

     恩田博士は、またひとつまばたきをした。太陽を中心に、ふたつのだ円が見えた。

    「この、太陽の近くの小さなだ円が、わしらの住む地球のきどうだ。そしてこのばかみたいに大きいだ円が、めい王星の公転きどう。そして、今、地球から、ふたつの小さなエネルギー体が、まっすぐにめい王星へと向かっている。愛海ちゃんのいっていたとおりだ」

     恩田博士の言葉に合わせるかのように、地球から一本の線がめい王星へと向かってのびて行っているのがわかった。

    「博士、もしかして、これが?」

     ぼくはのどがからからになった。

    「そうだ。エネルギー体の一方をぶんせきしたところ、まずまちがいなく八木くんのそれだ。もうひとつのエネルギー体についてはすいそくするしかないが」

    「愛海ちゃんですね」

    「そうにちがいない。めい界……めい王星までは遠いが、断じて、ふたりをあそこにやらせるわけにはいかん。きみには説明しにくいことだが、ふたりとも、あそこにたどり着いたらもう二度と地球にはもどってこられないのだ。今から追いつくかどうかだが、やってみるしかあるまい」

    「でも、どうやって追いつくんですか? はやぶさだって何年もかけてイトカワを」

    「たしかに、のろまな化学ねんりょうロケットでは、近日点に行き着くのにすらべらぼうな時間がかかる。しかし、わしにはこういうときのために用意しておいたものがある!」


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    これからますます絶好調になっていきます。

    どうかお楽しみください。冒険の果てになにが待つのか、それはおいおい……。

    NoTitle

    今度はこちらを読んでます。
    いきなり事故、血まみれ、から始まって、「え、児童読み物だよね?」とビックリしたのですが;;
    愛海ちゃんのくだりでは涙ぐんだり。
    どうなるのか、と思っていましたが、ワクワク感が来ましたねー!
    博士、二人を助けてー! 主人公くんガンバレー!

    Re: LandMさん

    「あまりにも高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない」(アーサー・C・クラーク)

    NoTitle

    ちょっと吹いてしまった。
    うむ。
    この科学者の胡散臭さが喋れば喋るほど強くなってくるのですが。
    ポールさんの妙かな。

    Re: 涼音さん

    ちょっとダメージがきつかったですかね。

    でもこれも構想のうちでして……。

    21日には終わります。三週間は長旅かなあ?

    お久しぶりです

    今日は。
    ずっと、読み逃げですみません。
    ストックがとりあえず最低限は確保したので、まだ全然余裕はないんですがやっぱりこの新作はずっと気になってて……。
    実はこのお話設定が少し身近で、うちの息子小4なんですよ。で、義兄が工学博士(電子だけど)で、まだこっちは現役で大学勤めですが、何か奇遇と言うか何と言うか。
    読んでいて小4でもうん告白するすると納得(笑)
    自殺とかいや、怖い……。つい母親目線で読んじゃいました。
    でも設定的には博士の発明がとっても楽しそうで今後の展開がワクワク。
    また時間みつけて伺わせて頂きますね♪
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