恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 6

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    「博士、いわれたとおりにじゅんびしました」

     いわれたとおりトイレを大小ともにすませたぼくは、自転車用のヘルメットをつけて二人乗り自転車のサドルにまたがると、しっかりとハンドルをにぎった。

    「よし、わしのそうじゅうをよく見ておくのだぞ」

     隣では、博士もヘルメットをつけてハンドルをにぎった。

    「この四人乗り自転車を動かすには、乗っている人間のこきゅうを合わせることが大事だ。そうでもなかったら、地球の引力けんからはい出ることすらもできないで終わってしまうだろう」

    「そうなると、ですね」

     ぼくもきんちょうしながらうなずいた。

    「そうだ。わしの大発明である、ポータブル・バザード・ラムジェットも、その力をはっきできん。そもそも、あれは外うちゅうでの使用を前ていにせっ計したものだからな」

     ぼくは、そうじ機だったものから、コクピットの中に新せんな空気が流れこんでいることをかくにんした。

    「博士、すごいです。あのおんぼろながらくた、じゃなくて、こわれかけた機械たちをここまで生き返らせるなんて」

     恩田博士はそれを聞いて、ちょっときずついたみたいだった。

    「いいかな、鈴木くん。わしは生き返らせたのではない。生まれ変わらせたのだよ。言葉は気をつけて使ったほうがいいぞ。まだわしがわかぞうでカルテック、カリフォルニア工科大学を目指していたころは、ギリシア語の先生に何度となくいわれたものだ」

    「博士って、工学博士でしょ、ギリシアって、科学がすごいんですか?」

     博士は面白そうに笑った。

    「二千年前はな。だが、あのころから残っている学者や芸じゅつ家の作品というものは、知っていてそんはない」

     そういうものなのかな。ぼくが首をひねっていると、博士は、うちゅう船のいちばん後ろに、なにかの機械をすえつけた。

    「たいへんなものをとりつけわすれるところだった。わしももうろくしてきたらしい」

    「博士、それはなんですか? ぼくには、CDラジカセみたいに見えますけど」

    「もしかしなくてもCDラジカセだよ。めい王星までは長旅だ、音楽のひとつもないとつかれてくる。うちゅうの旅というのは、ものすごく退屈なものでもあるのだよ」

     そういうものなのかなあ。

    「さてきみ、わしの発明したスーパーエネルギーのじゅうてんはどのくらいになっているかね」

    「もうすぐ百パーセントです。こんなにすごいエネルギーをどうするんですか?」

    「もちろん、地球の引力けんから飛び出して、めい王星へ向かうために必要なだっしゅつ速度をえるために使うのだよ。ふつうだったらその時にはもうれつなG、重力加速度がかかり、われわれはぺっちゃんこになるところだが、この船には乗組員をほごし、この地球上と同じようなじょうたいをたもつための力場てんかいそうちがついているから心配しなくていい」

     心配するよりも、ぼくにはそこまで考えがおよばなかった。アニメでは、そんなささいなことまでやらないもんね。

    「さて、きみ、しっかりとハンドルにつかまって、足をペダルからはなしておきたまえ。秒読みを開始する。三十秒前。二十九……二十八……二十七……」

     ぼくはなまつばをのみこんだ。

    「十五……十四……十三……メインエンジンじゅんびよし」

     どんどん、実験室の明かりが暗くなっていく。それとは反対に、ぼくのにぎっているハンドルと、こしかけているサドルは、びりびりとふるえ始めていた。

    「十……九……ごらくシステム作動。六……五……四……三……二……一……発進!」

     実験室のむらさき色の明かりが、いっせいにびかっびかっと光り、ガラスかんがばりん、がちゃんと音を立ててくだけた。

     次のしゅんかん、ぼくたちを乗せた、手作りのうちゅう船は、ジェットコースターなんかとはくらべ物にならないほどのスピードで、真っ暗な夜空に飛び出していった。

     CDラジカセが、むねがおどるような、うきうきする音楽をかなで始めた。地球へ帰ってきてから調べたところによると、何十年も前に流行した、ゴダイゴの「THE GALAXY EXPRESS 999」だった。やっぱり博士、古い人だよ。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    少年が宇宙旅行に飛び出すときのBGMに、これ以上のBGMはない、と断言します。

    帰ってくるときは鉄板でダ・カーポの「地球へ…」ですね。 

    わたしも古いオタクで……(笑)

    NoTitle

    999~! (*^。^*)
    スーパーわくわくしますぅ~!!!
    こういうの、大好きいい!!
    児童向けは、やっぱり夢いっぱいでなきゃダメですよ!!
    この回、超アガリました!

    999の映画、久々に見たくなったです。ウチのチビどもにも布教しとこうかしらん。
    「テイキング・オフ!」も良かったですよね。

    Re: LandMさん

    失敗するわけがないじゃないですか。

    だって相棒は天才の博士ですよ(^^)

    NoTitle

    お、これは楽しみな展開ですね。
    こういうのは読んでいて楽しいですね。
    ・・・失敗するのがお約束ですが・・・。

    Re: 山西 サキさん

    科学というものはある程度怪しくなくては。

    そういった怪しさが、最近見られないのは悲しいですね。

    はやぶさに感動しつつ、妙な科学にも感動する、それがセンス・オブ・ワンダーではないでしょうか。

    いけいけどんどん!

    Re: カテンベさん

    詳しくは書きませんでしたが、イメージとしては一世を風靡したスズキの軽自動車みたいな、コンパクトなものですね。

    ちなみにわたしは佐藤さとる先生の「ひみつのかたつむり号」という児童読み物が大好きです。あの人はすごい人です。

    NoTitle

    「THE GALAXY EXPRESS 999」ですか?
    ププ……

    この手作り宇宙船の奇天烈な設定が大好きです。
    これから何が始まるのか、想像も出来ません。
    全ては想定外です。

    そういうの、楽しいです。

    ワクワクするわぁ

    宇宙船の外装は自動車でしょ?
    似合いそうなのはワーゲンバスみたいなもんかな?て勝手なイメージ映像を頭に浮かべながら読んでるんですけど
    実はコレなの、ていうのは、この先、出てくるんでしょうか?
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