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    恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 10

     ←恩田博士と生まれ変わりの機械たち 9 →自炊日記・その31(2014年07月)
    10


    「フロントスクリーンを見たまえ」

     スクリーンはシャンデリアみたいになっていた。色とりどりの光に、目がくらんだ。

    「な、なんですか、これ」

    「これがスターボウだよ」

    「スターボウってなんですか?」

     恩田博士は体をずらした。

    「光の速さにかなり近くなってくると、星の光が……ううむ、きみにわかるように説明するのはなんぎなことだな。これも、後で本を読んで勉強することだ」

    「さっぱりわからないですよ、博士」

    「しかたがないだろう。ただひとつだけいえるのは、これが見えたら旅も終わりに近いということだ。鈴木くん、わしが合図したらブレーキを強くにぎるんだ。いいか、ぎゅっとだぞ。わしもにぎるからな。いちにのさん……今だ!」

     博士の声に、ぼくはブレーキハンドルを思い切り強くにぎった。

     ものすごいしょうげきが、がくがくとぼくの体をゆさぶった。博士が発明した力場のおかげで、かなり弱められているのだとは思うけど、それでも、さっき食べたクッキーがいぶくろからはみ出してしまうような感じだった。

     スターボウとかいう、あのシャンデリアみたいな光が、すうっとにじんできて、ぼくたちのうちゅう船を取りかこんだ。そうか、博士のいっていたとおり、あの光は星ひとつひとつのかがやきが、まとまってできていたものだったんだ。

     そんなことを思っていると、恩田博士はぼくがまたがっていたサドルを指さした。

    「そこにうちゅう服がある。着たまえ」

    「うちゅう服? そんなものが……博士、これ、百円ショップで売っているレインコートじゃないですか。てっきりぼくは、おしりがいたくならないようにするためのクッションだとばっかり」

    「とにかく着たまえ。これから、めい王星のえい星きどうに乗るからな。その間にじゅんびしておくんだ」

     ぼくはヘルメットをつけたまま、レインコートにしか見えない、そのうちゅう服をはおった。ポケットのあたりには、夏の暑い日にニュースなんかでたまに取り上げられるせん風機つきジャケットのものにそっくりな、小さなせん風機が取り付けられていた。

    「博士、この機械は?」

    「きちんとボタンをとめればわかる」

     恩田博士もハンドルから手をはなして、ぱちんぱちんとレインコートのボタンをとめていた。ぼくもレインコートのボタンをとめ終えた。そのときだった。レインコートのビニールが、生き物のようにずるずると体をつたい始め、のび始めたのだ。

    「は、博士、これはいったい」

    『ヘルメットのバイザーを下ろしておきたまえ。これからしばらく、会話はこのうちゅう服についているマイクとレシーバーで行う』

     なんと、恩田博士の声は、あの小型せん風機から伝わってくるのだった。言葉通り、ぼくは自転車用ヘルメットの内側にあった、いつの間に取りつけられたのか知らないバイザーを下ろした。バイザーが顔の全面を覆ったところで、レインコートのフードがぴったりとヘルメットにくっつくのがわかった。

    『いいかね』

     恩田博士はしゃべった。

    『きみが単なるせん風機と思っているのは、いわゆる生命いじそうちというものだ。メタンが主成分のうえうすい大気やマイナス百℃より下の気温と、めい王星は人間が生きていくにはかこくなかんきょうだ。そんな中では息をするのに必要なさんそのこん合ガス、寒さにもたえられるヒーターとだんねつざい、そしてこうした通信機、その他さまざまなものがないとあっという間に死んでしまう。鈴木くん、後部ざせきにおいてあるヘルメットも取りたまえ。八木くんと愛海ちゃんのぶんのうちゅう服だからな。このだんねつ力やたいきゅうせい、有毒ぶっしつをよせつけないのう力にすぐれた生体そざいは、MIT、マサチューセッツ工科大学で実験中のものを無理をいってもらってきたものだ。心してあつかうこと』

    『はい』

     マイクごしに、ぼくも答えた。

     そのころには、うちゅう船はめい王星の上空を飛行していた……らしかった。なんというか、あまりに暗くてなにも見えないのだ。

     恩田博士はいった。

    『さて、ちゃくりく前に一周して、あなぼこをさがそうじゃないか』

    『あなぼこ?』

     ぼくは首をひねった。

    『だから、古い本を読んだほうがいいといっただろう。おとぎ話でも神話でも、めい界というものは、昔から深い地の底にあるものと決まっている。これから、八木くんと愛海ちゃんのたましい……エネルギー体をすくい出すのだから、がんばらなくてはな』

    『はい。でも、めい界って、めい王星のことでしょ? それとも、なにか、ちがいがあるんですか?』

    『行けばわかるさ。これからの旅は、もっときつくなるぞ』

     ぼくは、うちゅう旅行の面白さにむちゅうになっていた自分をはずかしいと思った。やらなくちゃならないこととせきにんが、こんなにもあるのに!


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    Re: LandMさん

    それだけ責任感が強い子供なんですよ鈴木くんは。

    「漂流教室」の世界に生きていたら主人公の高松翔をやっていましたな(^^)

    NoTitle

    悦である。
    楽である。
    そこから何かが始まると思いますけどね。
    何にしても。
    責任を背負うのは大人になってからでもいいと思いますけど。
    坊やの割には大人の心で。

    Re: カテンベさん

    わたしのイマジネーションの赴くところ、もうなんでもありです(^^)

    昔はこういう手作り感あふれるアイテムがいろいろとありましたなあ……ずずず(渋茶をすする)

    亜光速移動なんてのだと、ネジみたいな小さいものにぶつかっただけでも大被害になりそ
    てことは、バリアみたいなものも備えていたんでしょうね

    不思議科学な感じのアイテムっていいですね〜
    さらにどんなのが登場するのか楽しみやわ〜
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