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    恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 12

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    12


     ぼくはそっと、こおりついたメタンに足を下ろした。いつもに比べて体が軽い。

    『博士、足にはねが生えたみたいです』

    『それはそうだ。めい王星は、月くらいの大きさとみつ度しかない。だが、気をつけたまえ。うっかりすると、足がメタンの海にこおりついてしまうぞ』

    『はい、博士』

     足もとから冷たいなにかがはい上ってくるのを感じ、ぼくはうなずいた。

    『このクレーターを下りていくんですか?』

     ぼくと博士は、あなをふちからのぞきこんだ。底の知れない深みが、ぼくの前に口を開けていた。

    『鈴木くん、これは、このあなをちょくせつ下りていくのはむりなようだな。このあなを下りるには、うちゅう船やうちゅう服よりも、山のぼりの道具のほうが必要だろう』

    『博士の力で、なんとかなりませんか』

    『それは、たしかにわしはどんな機械でも生まれ変わらせることができる。しかし、ここには、このこおったメタンのほかにざいりょうがない。ゆいいつあるとしたら、あのうちゅう船だが、あれをばらすと、今度は帰ることができなくなる』

    『と、いうことは……』

     ぼくはあなから目を上げ、博士がレーダーでちょうさし、『でかい人工物』といっていたものにしせんをうつした。

    『あの、ようさいのようなものから入るしかあるまい。おそらくは、八木くんと愛海ちゃんも、そこにいることだろうからな』

    『はい』

     ぼくたちは、その『ようさい』を目指して、メタンの大地を歩き始めた。

     どう見てもそれはようさいだった! 人の手が作り出したとしか思えない巨大な壁が、ぼくの目の前に立ちはだかっていた。そしてそこには門らしいものまであった。

    『鈴木くん、あれは、がんじょうなかべでてきのしゅうげきから町を守る、いわゆる「じょうさい都市」というものだろう。おっと、足もとに気をつけたまえ。重力が弱いといっても、しつ量は変化しない。変に高く飛び上がりすぎると、けがをするもとになるぞ』

    『しつ量が変化しないって、どういうことですか?』

     博士は、やれやれと首を振った。

    『しつ量というのは、物のほんとうの重さのことだと思ってくれ。このような重力の小さな世界では、わしやきみでも、地球ではとても重すぎてかつげないような、例えば自動車などを軽がると持ち上げ、落とすことができるだろう。重力加速度が小さいから、ものはゆっくりと落ちていく。さて、ここで問題だが、わしらが下にいたとして、それを受け止めてはね返すことができるだろうか?』

    『できないんですか?』

     ぼくはびっくりした。

    『物体の運動エネルギーは、その物体のしつ量にスピードをかけ算したものだからな。時速四十キロで飛んできた自動車は、地球のそれと同じだけのしょうげきを与えることになる。うちゅうでも、じこには気をつけなくてはならんのだよ。よくいう、うちゅうゴミの問題も、これと同じことだ。ものは小さくても、秒速何キロメートルでぶつかってくるという話になるから、当たったらひどいことになる』

    『わかったようなわからないような……』

     ぼくの答えに、博士は自分のヘルメットをたたいた。

    『すまん。わしは、きみがふつうの小学生にすぎないことを、ちょくちょくわすれてしまうのだ。くわしいことは中学校の物理の時間に習うから、今はそういうものだと頭のすみに置いといてくれ』

     ぼくは頭のすみに置いておこうとしたが、門に近づいて、あっと声を上げた。

    『は、博士! すごい……すごい数の人です! めい王星に、人がぞろぞろと集まっています!』

     めい王星にある、じょうさい都市の門の前には、たくさんの人が、長い行列を作っていたのだ。それも、うちゅう服など着ていない、ぼろぼろの服の人たちが!


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    Re: ネリムさん

    さて、彼らはいったいなんなのか、次回以降もお楽しみに!

    ……え? バレバレ?(^_^;)

    こんばんわ
    冥王星の人たちと地球人の違いが出てるなと思いました

    Re: カテンベさん

    あるといえばありますし、ないといえばないであります。

    この時点での八木くんと愛海ちゃんには必要はないんです。必要になるのはこれから先の話なのです。

    そんなに人がいっぱいいてると、僕も帰りたいから連れてって〜、てなことになりそ

    その人らが宇宙服、着てないのは当然やろけど、それでも普通にしていられてるんなら、八木君たち用の宇宙服は必要やったんやろか?て思てまうとこやけど、八木君たちとの違いが何かあるんやろねぇ〜
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