恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 13

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    13


     ぼくのさけびにも、博士はあわてた様子はなかった。

    『こういうことではないかと思っていたが……じっさいに見ると見ないとでは、まったくちがうものだな』

     ぼくはかけ出した。もしかしたら、あの中に、やぎすけと愛海ちゃんが。

    『待ちたまえ、鈴木くん』

     博士が、ぼくのかたをつかんで止めた。

    『なにをするんですか博士!』

    『あそこよりも先に、かくにんしなくてはならんところがある』

     ぼくは頭に血が上っていた。

    『どこにですか!』

    『あのじょうさい都市の中だよ』

     え? ぼくはちょっとこんらんした。

    『考えてもみたまえ。八木くんも愛海ちゃんも、わしらよりはるかに前にこちらに向けて出発している。ということは、すでにあの都市の中にいてもおかしくはないわけだ。それに、あの行列の中にいたとしても、先に都市に入って待っていれば、そのうちやってくるのが道理だろう。わかるかね?』

     博士のいうとおりだった。

    『そうですね、博士』

    『それでは、わしらもあの門に向かおう。ことはもうすでに、いっこくを争うことになっているかもしれんからな』

     ぼくと博士は、転ばないように、あわてずさわがず、それでいて早足であのおしろの門へと向かった。

     恩田博士が、なにかをつぶやいた。

    『なんていったんです、博士?』

    『ギリシア語の詩だよ。ヘシオドスの詩だ。きみ、ヘシオドスは知っているかね?』

    『ぜんぜん』

    『そうか。ならば、いいんだ』

     なにがいいのかはよくわからなかった。けれど、それより八木くんと愛海ちゃんだ。ぼくたちはようやくのことで門の前にたどりついた。ふと目を上げると、なにか文字がきざんである。あんな文字、見たことがない。なんて書いてあるんだろう。

    『博士、あれ、なんて書いてあるんです?』

     博士は、ぽんとぼくのかたをたたいた。

    『そう、すべてわしまかせにしてもしかたあるまい。これは、宿題にしておこう。きみが大きくなって、大学で勉強するときまで、あの文字の形を覚えておくのだ』

    『ええ? ちらっと見ただけなのに?』

    『勉強というものは、そのいっしゅんの機会を大事にするべきなのだよ。きみにも、すぐにわかることだがな』

     ぼくにはよくわからなかった。

     しかし、なんて大きな門なんだ。これだけ大きければ、前にテレビ番組でやっていた、『世界一大きなトラック』でも、かんたんにくぐれそうだ。もしかしたら、ジャンボジェットでもくぐれるかもしれない。

    『見はりはいないみたいですね、博士』

     博士は、門のおくを覗き込んでいった。

    『必要がないから、いないのだろうな。これでもし、いたとしたら、それこそ大ごとになったところだが』

    『どういうことですか?』

     博士はのどのおくで笑った。

    『わしもこれまでいろいろな機械を生まれ変わらせてきたが、ぶきに生まれ変わらせたことは一度もない、ということだよ』

    『ぶきが必要な相手がいるんですか?』

    『鈴木くん、きみ、空手をやったことはあるかな?』

    『ないですよ』

    『体育の先生は、だれだね?』

    『え? デブ川……細川先生です』

    『空手を学んでいたら、そのデブ川先生に勝てるかね?』

    『勝てるわけないでしょう!』

    『……そういうことだよ、きみ』

     なにがそういうことなんだかはよくわからないが、見はりがいたとしたら、そいつはぼくなんかがたばになってかかってもどうにもならないやつみたいだ。

     ぼくは息を吸い込んだ。動き回っても、ちっとも苦しくない。このうちゅう服、よくできている。

    『いいかね。ここから先は、わしらのじょうしきが通じる世界ではないらしい。だから、ここから先では、わしのいうことにしたがってくれないか。言葉通りにだ。できるか?』

     できるもなにも、ここまで来たら、やるしかないじゃないか。

    『できます!』

    『よし。それでこそ、わしの友人だ。さて、ここであまりに長くむだ話をしていても始まらん。行くぞ、鈴木くん』

    『はい!』

     ぼくは答えた。


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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    ♪ 宇宙に飛びだすシュピーゲル~ ♪

    今から考えると、キャプテンウルトラの最終回はあまりにも早すぎる内容でしたなあ……。

    21世紀の今になって見てもポカーンですし(^_^;)

    NoTitle

    月も火星もはるかに越えて・・・どんどん高次の天に昇ってゆく様はダンテの「天国篇」を思わせましたが、冥王星に着いたら一転、今度は「地獄篇」みたいですね。わくわく。
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