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    恩田博士と生まれ変わりの機械たち(児童読物・完結)

    恩田博士と生まれ変わりの機械たち 17

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    17


     ぼくと博士が橋をわたってとうとうたどり着いたのは、意外というかなんというか、まるで地球のレストランのようなホールだった。これまでの、あの暗い気持ちになるメタンの大気も、メタンの川も氷の板も、なにもありはしない。博士に教えられたとおりにバイザーをそうさすると、気温二十五℃、大気レベルグリーン、という結果が出てきた。信じられない。

     博士のいったとおり、その広いホールは満員で、今にもパーティーが始まりそうだった。テーブルがずらっと並び、その上には、前にテレビで見たグルメ番組で覚えたんだけど、チンミカコウ、というか、マンカンゼンセキ、といったものがならんでいる。

     ぼくたちは入り口のわきにかくれて中をのぞきこみ、おもわずため息をついた。

    『よだれがでますね、博士』

    『それはいいから、はやく八木くんと愛海ちゃんを見つけてくれ。人が多すぎて、なかなか見つけられんのだ』

    『いわれなくてもやってます』

     そう答え、室内をさがし回っていたぼくは、ついに求める顔を見つけた。博士も同じだったらしい。ぼくたちは、同時にさけんだ。

    『……いた!』

     博士はぼくの指差す先を見た。ぼろぼろな服を着て、うつろな目をしているが、ちびで目ばかり大きい男子と、丸顔の女子。まちがいない。

    『あれだな、確かに八木くんだ。そのとなりにいる女の子が、愛海ちゃんだね』

    『そうです』

    『よし、それじゃ、行くぞ。鈴木くん、きみ、このCDラジカセを持って行ってくれ。それじゃ、いくぞ。とつげきだ。いちにのさん!』

     いわれるまでもなかった。ぼくは、クッキーとラジカセとうちゅう服の入ったヘルメットを持ってとつげきした。だけど、これだけ荷物を持つと動きにくいったらありゃしない。

     恩田博士はというと、こっちは身軽なもので、すいすいと人のすき間をぬって八木くんと愛海ちゃんのもとへ向かっていく。ヘルメットを外して……ヘルメットを外して?

     やめてください、死んじゃいますよ! といおうと思ったけれど、さっきバイザーに出てきた気温二十五℃、大気レベルグリーンという言葉を思い出した。息ができるんじゃないか。ぼくもヘルメットを外そうかと思ったけれど、恩田博士はぼくに外しかたを教えるのをすっかりわすれてしまっていたらしい。

     しかし、なぜ、ヘルメットをぬいだんだろう? その答えは、すぐにわかった。やぎすけと愛海ちゃんのもとにたどり着いた博士は、こともあろうに、ふたりの目の前にならんだ料理を、手づかみでかたっぱしから食べ始めたのだ! スープから、オードブルから、なにからなにまで、がつがつと。

     ぼくたちが入ってきたことよりもそれはびっくりさせることだったらしい。パーティー会場にいたみんながみんな、ぼうぜんとしてぼくたちの方を見ていた。

     ようやくぼくは博士に追いついた。

    『博士、ひどいよ。やぎすけたちのぶんじゃない、それ……』

    『打ち合わせたとおりにせんか!』

     いつもとはちがった調子の、博士のおこった声が飛んできた。ぼくはびくっとした。

     いわれたとおりに体が動き、ぼくはぼんやりしていて言葉も出ないような八木くんと愛海ちゃんの口にクッキーをおしこみ、頭にヘルメットをかぶせ、中に入っていたどろどろのえき体が二人の体をおおってうちゅう服になるところを見ていた。博士の天才的な発明の力もあって、その間ざっと五秒。

     そのころには、ぼくたちを取りかこむ人々も、ぼくたちがパーティーをじゃましてしまったことに気づいたようだった。

     博士はヘルメットをかぶり直した。

    『にげるぞ、鈴木くん! すぐに、ここを出るんだ!』

     いわれなくても出るよ。ぼくは、やぎすけと愛海ちゃんの手を引き、博士が場をこんらんさせているうちにホールをぬけ出そうとした。

     あっちからもこっちからも、のろのろした動きながらも、パーティーに参加している人たちがぼくたちを捕まえようとしてくる。博士は年れいからは考えられないほどのすばやさで動き、ぼくたちの前に立ちふさがる人々をなぐりたおしけりたおしていった。

     その間も、博士はぼくにはさっぱりわからない言葉で、なにごとかをさけび続けていた。いったい、なにをいっているんだろう?

     博士のさけびが通じたのか、やがて人々は、ぼくたちをむししてテーブルにつき、パーティーにもどった。

    『いいか鈴木くん』

     博士はぼくにいった。

    『さっきも打ち合わせたとおり、地球にたどり着くまで、なにがあっても後ろをふり向いてはいけないぞ。なにがあってもだ。わしはこのパーティーの主人に二、三もんくをいってやることがあるのでちょっと残るが、後から必ず追いつく。だから、ためらわないで、わしを待たずに行け』

     なぜだかはわからないけれど、ぼくは博士の言葉にしたがうことにした。こういうときには、大人のいうことは聞くものだ。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    元ネタが元ネタですから……。

    こうなってしまうんですよね必然的に。

    NoTitle

    博士ー! (ToT)
    オルフェウスとかの冥界行を下敷きにしているなら、博士のしたことって;;
    鈴木くん、お友だちを助けて。頑張ってくれている博士のためにも!

    Re: LandMさん

    わたしの子供のころ面白かった要素をすべてぶち込んで書いてますから……。

    ある意味このようなことばかり考えていたから今みたいな大人になってしまったのかもしれません。

    NoTitle

    とつげきだ!!
    ・・・もう何年も言っていないセリフです。
    ある意味、童心に帰るにはうってつけの作品かもしれない。

    Re: カテンベさん

    パーティーの主催者は、人間だれでも会う(会わないという人もいる)かたです。

    わたしとしては、会いたいような会いたくないような(^^;)

    あと4回です。どうぞお楽しみに~♪

    Re: 黄輪さん

    そうです。博士は並々ならぬことをもくろんでいるのです。

    明後日には博士が何をしたかったのか、したのか、わかります。

    お楽しみに(^^)

    パーティの主催者は博士の顔見知りなんやろか?
    ご先祖とかなのかな?
    次回が楽しみやわ〜

    NoTitle

    地球とかけ離れた異世界で自らマスクを外し、異世界の料理を口にし……。
    恩田博士がなにか、並々ならぬことを目論んでいるような気がしてなりません。
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