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    ポーランド博士(自称)のキャラクターお悩み相談室(架空カウンセリングルーム・連載

    ポーランド博士(自称)のキャラクターお悩み相談室(2014年9月)

     ←荒野のウィッチ・ドクター(1) →オタ句 9月1日
     みなさんこんにちは。わたしの診察室へようこそ。ポーランド・ブリッツクリーク博士です。博士号は終末港大学で取りました。そのおりは終末港公爵フェルド・エルム・バルテノーズ閣下が自らわたしの首にメダルをかけて。まあそんなことはどうでもよろしい。この診察室では、あなたがた、そうそこで振り返ったあなた、『小説に登場するキャラクター』の抱える悩みに対して、カウンセリングを行うのです。深刻な悩みでも、軽薄な悩みでも、悩みのある『キャラクター』はいつでもわたしの診察室へいらしてください。ともに有意義な道を見出そうではありませんか。

     しかしわたしにも肉体的な限界があり、クライアントはひと月にひとりとさせていただきたいと思います。なぜなら、原稿用紙にして一万枚を軽く突破、などという小説のキャラクターであった場合、作者が読むのに時間が、いえ、わたしが有効な対策を取るためのバックグラウンドが調べきれないからです。

     まず、初回である今回は……。

    「どうも……桐野俊明です」

     あなた! あなた、本職の精神科医じゃありませんか!

    「ナイトメア・ハンターですよ。医者の道は捨てました」

     ……で、なにが悩みなんです。

    「作者がわたしをいじめるんです」

     別に、作者はあなたをいじめようとしているわけではないと思いますよ。

    「いや、あれはいじめです。パワハラです。フィクション・ハラスメント、フィクハラです。最初にわたしが生み出されてから、二十年にわたり、えんえんとわたしをいじめて喜んでいるのです」

     いや、二十年もあなたを小説の主役として、長編を四本も書いているんですから、それなりに愛着というものが。

    「じゃあ、なんでわたしが、大学医学部で研究医を目指していたのを妨害したんですか」

     それはそのほうが小説が面白くなるんじゃないかと。

    「小説が面白くなるのだったら、わたしもあきらめますが、なにもあそこまでどん底の生活をさせることはないじゃないですか。二十年前の設定では、開業医として小さな診療所を構え、ドクターカーも持っていて、さらには警察の手をかすめて、ワルサーPPKまで手にしていた。それが、『ナイトメア・ハンターの掟』冒頭ではどうなりましたか。暖房もない風呂トイレ共同の安アパートで、テレビもなくラジオを聞いて無聊をなぐさめていたんですよ。ほかの作者の登場人物を見てください。ここまでみじめでかつ所帯じみた生活を送っていた主人公がありますか」

     え……それは……まあ……みじめですね、じゃなくて、そうした生活環境はいつも改善されてきたじゃないですか。

    「その代わりとして、わたしは全身打撲と複雑骨折で死の淵をさまようような長期入院を強いられたり、ペストに感染させられて病院に監禁されたり、警察にぎゅうぎゅうにしぼられたり、惚れた女からは憎まれたり撃たれそうになったり、もう、ここまでくると、作者がわたしをいじめることに喜びを見出しているとしか思えません」

     ええ……たぶん、作者はあなたに自分の半生を重ねて、いわば自罰的に……。

    「じゃあそれをどうして桐野俊明というひとりの個人が全部背負わなきゃいけないんですか。理不尽です。理不尽以外のなんですか」

     り、理不尽って……そりゃそうかもしれませんけど、そんなこといったら小説の登場人物なんて、みんな不条理というか理不尽というか、そんな目にですね。

    「そもそも作者がわたしの名前をつけたのも、特に思い入れがあるわけじゃないんだ。西南戦争時に、桐野利秋という薩摩軍のリーダーがいて、その名前を気に入ったから『利秋』を同じ『としあき』という読みの『俊明』に変えて使っただけなんだ。それが個性になってればよかったんだけれど、よほどの明治維新マニア以外、『桐野利秋』なんて人物は、改名前の『中村半次郎』という名前を含めて知りもしないんだ。そのせいもあって、あれだけ『西南戦争』という言葉を使ったけれど、誰もツッコんでくれなかったじゃないか。それなのにあんなひどい目に。今は網走刑務所で出所のときを待っている始末だ。ひどいじゃないですか」

     ……ま、まあ、あと二年か三年耐えれば出てこられるんですから、そう人生を悪いように考えなくても。

    「そんなわけがないんだ。そもそも作者がわたしの刑期を七年にしたのは、七年経てば世の中が激動して小説として面白くなるだろう、と考えたためだったけど、それでどうなったんだ。そりゃ日本は激動した。東日本大震災は刑務所の中でも大きく揺れた。それはいい。しかし、噂だと、中露と日米欧の関係が急激に悪化し、一触即発の事態になりかけているそうじゃないか。そうなるとどうなる。最悪の場合、世界大戦だが、そうでなくともベトナム戦争でさえ終結まで八年かかったんだぞ。そんな中で小説なんかのん気に書いていられるものか。完結篇となる第五部は書かれずに終わり、わたしは刑務所から出所することもできないんだ。いじめだ。これはいじめだ。ノベル・ハラスメント、ノベハラだ」

     逆に考えましょうよ。完結しないということは、もうこれ以上ひどい目に遭うことがないということですよ。そうすればいくらか道も……。

    「毎日がつらい人間にそんな言葉かけるとはあなたは鬼か! 魔物か!」

     あの、その。

    「もういい! 帰る! 網走刑務所に帰る!」

     あ、ちょっと、ちょっと……行っちゃった。ええ、桐野医師が網走刑務所に帰るという前向きな判断をしたところで、今日のカウンセリングはおしまいとします。ああ疲れた。これを毎月やるのか。つらいなあ……。

     まあ、わたしに悩みを話せば、いくらか楽になるでしょう。当診察室では、あなた、『キャラクターであるあなた』の来訪をお待ちしております。相談したい『キャラクター』のかたは、下のコメント欄に悩みも含めてご記入お願いします。

     それでは皆様、また来月~。

     つづく!
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    いちおう、この場はキャラクターが作者に文句言う場所じゃなくて、あくまでも「自分の悩み」を相談するコーナーですから(^^;)

    キウェインとか、意外とけっこう人に知られたくない悩みとかあるんじゃないですか? 「水虫がかゆい」とか(笑)

    Re: limeさん

    それじゃ、来月の相談者は玉城くんということで。

    なにしろこれから「RIKU」を全部読みなおさないといけないからたいへん……(^^;)

    Re: ダメ子さん

    大丈夫です。

    わたしはムイミちゃんのことが大好きですから。

    ……あれ?(^^;)

    NoTitle

    自分の小説に出てくる連中たちも、よく見るとそれなりの境遇ですからねぇ(汗)

    貧民街で生まれ育った殺戮マシーンとか
    人為的に生み出された双子とか

    何を言われるかわかったもんじゃない(汗)

    NoTitle

    お悩み相談室、面白いですね。
    ポーランド・ブリッツクリーク博士は、あくまでポーランド・ブリッツクリーク博士であって、ポールさんではないのですね?w
    でもやっぱり私も、桐野さんは作者にいじめられてると思います。
    後何年でしたっけ。出てきたときが、楽しみです。

    相談者を募るのですか? 面白そう^^
    うちの場合は、一番悩んでるのは『RIKU』の玉城でしょうね。
    何か言ってますよ。

    玉:「なんでかみんなに馬鹿にされるし、作者には下の名前を付けてもらえないし、彼女が出来ないし、ビンボーだし。俺のどこが悪いんでしょうか、博士!」

    NoTitle

    桐野利秋?初めて知りました…
    でも、私なんて多迷ダメ子ですよ…主人公なのに…むしろ、わからない方がいいです
    しかも登場キャラクターは明るくてまともな子の方が人気が出がちです
    やっぱり暗い子は駄目なんでしょうか
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