「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 ノゾミ 8-2
「ところで。ゆうべ話してくれた、お前がこのところ見ている夢のことじゃが」
「はい」
ぼくは答えた。
「今日の稽古を見ていてわかったが、どうやらお前の言葉に嘘はないようじゃな。お前には武門の神の加護があるらしい。武博のやつが帰ってきたらくやしがるじゃろうな」
「は、はあ……」
ぼくにはまだどこか信じられなかった。見ている夢の中で修行していたなんて。
「師匠、ほんとなんですか」
「うむ。足さばきこそ違うものがあるが、お前の動きは剣の理にかなっておる。天性のバランス感覚と武博はいっていたが、それだけでもあるまい。素振りすら満足にできぬはずのお前が、曲がりなりにもわしとの形稽古ができたのがその証拠じゃ。晶も驚いていたが、わしも驚いておる」
「そうですよね……」
タケミカヅチねえ。まだ実感がわかない。夢の中の話だから当然か。
迫水のおじいさんは、ごほん、と空咳をした。
「そもそも鹿澄夢刀流の開祖である……」
この家のご先祖様に当たる、元祖夢逐人の迫水源伍が、夢の中で武神と戦うことによって剣の理を見出した、ということは昨夜からさんざん聞かされたが、ぼくは口を挟まないでおとなしくしていた。
「ということであるからお前も武神の加護を信じ、精進してだな」
ぼくは筋肉痛をこらえて右手を挙げた。
「質問があります、師匠」
「なんだ」
「どうして、足さばきが違うのに、ぼくは師匠と剣を打ち合うことができたんですか。足の動きが違えば、呼吸が合わずに、ぼくは大怪我をしていたと思うんですが」
「うむ」
迫水のおじいさんはうなずいた。
「いい質問じゃ。それについては、ふたつの要因がある。ひとつは、ひとえにわしが今のお前なんぞが百人かかっても倒せないくらいに実力差があるからじゃ。お前の動きは、たとえ不慮の事態になったとしてもわしが対応できる範囲内にあるということじゃよ」
……そうですよね。
「もうひとつは、なんなんです?」
迫水老人は目を覆った。
「鈍いやつじゃな。高木氏とやらが晶を所望し、武博が応じたことを見てもわからんとは、今の学校教育ではなにを教えているんじゃまったく」
「なんとなくわかってはいますよ。ただ信じられないだけです。そうでしょう、師匠。まさか、時形流の舞いの動きが、剣術に直結していただなんて」
はっきりいって、ぼくは今もどこか信じられない気持ちなのだ。
「はい」
ぼくは答えた。
「今日の稽古を見ていてわかったが、どうやらお前の言葉に嘘はないようじゃな。お前には武門の神の加護があるらしい。武博のやつが帰ってきたらくやしがるじゃろうな」
「は、はあ……」
ぼくにはまだどこか信じられなかった。見ている夢の中で修行していたなんて。
「師匠、ほんとなんですか」
「うむ。足さばきこそ違うものがあるが、お前の動きは剣の理にかなっておる。天性のバランス感覚と武博はいっていたが、それだけでもあるまい。素振りすら満足にできぬはずのお前が、曲がりなりにもわしとの形稽古ができたのがその証拠じゃ。晶も驚いていたが、わしも驚いておる」
「そうですよね……」
タケミカヅチねえ。まだ実感がわかない。夢の中の話だから当然か。
迫水のおじいさんは、ごほん、と空咳をした。
「そもそも鹿澄夢刀流の開祖である……」
この家のご先祖様に当たる、元祖夢逐人の迫水源伍が、夢の中で武神と戦うことによって剣の理を見出した、ということは昨夜からさんざん聞かされたが、ぼくは口を挟まないでおとなしくしていた。
「ということであるからお前も武神の加護を信じ、精進してだな」
ぼくは筋肉痛をこらえて右手を挙げた。
「質問があります、師匠」
「なんだ」
「どうして、足さばきが違うのに、ぼくは師匠と剣を打ち合うことができたんですか。足の動きが違えば、呼吸が合わずに、ぼくは大怪我をしていたと思うんですが」
「うむ」
迫水のおじいさんはうなずいた。
「いい質問じゃ。それについては、ふたつの要因がある。ひとつは、ひとえにわしが今のお前なんぞが百人かかっても倒せないくらいに実力差があるからじゃ。お前の動きは、たとえ不慮の事態になったとしてもわしが対応できる範囲内にあるということじゃよ」
……そうですよね。
「もうひとつは、なんなんです?」
迫水老人は目を覆った。
「鈍いやつじゃな。高木氏とやらが晶を所望し、武博が応じたことを見てもわからんとは、今の学校教育ではなにを教えているんじゃまったく」
「なんとなくわかってはいますよ。ただ信じられないだけです。そうでしょう、師匠。まさか、時形流の舞いの動きが、剣術に直結していただなんて」
はっきりいって、ぼくは今もどこか信じられない気持ちなのだ。
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