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    映画の感想

    「チキチキバンバン」見る

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     今回の「ブログDEロードショー」は音楽映画ということだった。ミュージカルとか音楽が有名な映画とか音楽そのものを題材にした映画とかだそうだ。

     悩んだ挙げ句、レンタル屋にあった「チキチキバンバン」を借りることにした。ミュージカル映画は三本しかなかったのだ。

     この映画、主題歌は大好きなのだが、2時間25分のミュージカルと聞いてこれまでちょっと敬遠していた。

     正直、バカだったと思う。今年見た中でも最高に素晴らしい映画。感受性が死に絶えているんじゃないかと思えるわたしの心をぐりぐりとえぐるファンタジーコメディの大傑作。

     これは子供向けの映画では断じてない。原作のイアン・フレミングはただものではない。大人のファンタジーである007シリーズを書いた人間でなくては語れない、どうしようもない夢ばかり見ているオタクのために作られた映画だ。この歳になっても小説の新人賞なんかを狙っている、わたしのような人間にエールを贈るために作られた映画だ。

     主人公のポッツは、日頃ろくでもないし金にもならない珍発明ばかりしている発明家である。二人の子持ちで、劇中では明確に描かれてはいないが、たぶん奥さんは逃げたんだろう。

     そんな彼が、子供たちにせがまれて、一台の車の残骸をスクラップ屋から買い取ろうとするところから物語は動き出す。車の代金は30シリング。そりゃ貧乏な家には大金だ。このあたりの、ちょっとした金持ちなら小遣い銭だけれど、生活費に追われる発明家にはおいそれと払えない金額だから、安いかもしれないが、日本では五万円というところじゃないかな。

     おそらく、自分の趣味の延長として発明家をやっているオタク的人間であるポッツは、ようやく気がついたんだろう。「自分には子供たちの一世一代の思い切った願いをも叶えるだけの財力すらない」ということに。

     ポッツは自分の発明品で、なんとか金を工面しようと努力する。自信作であるキャンディー製造機は、ひょんなことから知り合った社長令嬢の助けがあったにもかかわらず売り込みに失敗。自作の電気散髪機をカーニバル会場へ引いていって金儲けしよう、と考えたものの、これまた失敗。30シリング儲けることには成功したものの、それは自分の発明とはなんらつながりのない行為によってだった。

     意気揚々と車の残骸を馬に引かせて帰ってくるポッツの幸せそうな顔。ここでわたしの心臓はぐりぐりである。わかる。どうしようもなくわかる。

     そこからその残骸を、ポッツは何日もかけて修理する。半分はオーバーホールである。不安そうな子供たちの前に現れたのは、ぴかぴかの車。旧式だが、ポッツが並々ならぬ努力と愛情を込めて手を入れたことがわかる。素晴らしい演出。

     たまたま行き合って、車が壊れた社長令嬢と、海岸までピクニックに行くのだが、ここの道中も実に楽しそう。しだいに、令嬢とポッツは惹かれあっていくのだが、ふたりとも、特にポッツは、自分が令嬢とかかわれる身分でないことを知っている。それが見ていて実につらい。生活力のない人間が人を好きになることは、ある意味許されないことでもあるのだ。心臓ぐりぐり。

     海岸でポッツが子供たちと令嬢に語るほら話が、怒涛の冒険ファンタジーとなって行く様は圧巻。ファンタジーとわかっていても、わかっているからこそ楽しめる波乱万丈のオタク趣味満載、サービス抜群の映像となって展開していく。子供たちが楽しむのはここだろう。罪もない子どもたちを苦しめる王様を、誠実で勇敢で思慮のある大人が、子どもたちや町の人々を導いて革命を起こすのだ。ネトウヨさんはサヨク的映画だ、なんてバカなことをいうかもしれないが、そんなやつはほっとこう。

     話がハッピーエンドで終わると、視点も現実世界へ戻ってくる。フレミングが書きたかったのはここからではないのか。同じオタク趣味でも、テリー・ギリアムとは正反対の現実への着地だ。

     そしてあのラストシーン。わたしの心臓はぐりぐりぐりぐりぐりぐりと刺激された。

     やるよわたし、必ず新人賞を取ってみせる、絶対! とエンドロールを見ながら強く決意した。

     ひさびさに勇気をもらった映画だった。

     

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    ~ Comment ~

    Re: 野津征亨さん

    いや笑えて泣けてどきどきできる明朗快活なファンタジー冒険コメディ映画です。

    ただ、深読みしようとするとどこまでも深読みできる映画なんです(^_^)

    面白いですよ!

    こんにちは。

    チキチキバンバン、名前は聞いたことがありましたが一体それが何なのかまではとんと存じませんでした。
    ミュージカル映画の題名だったのですね。
    すごくほろ苦い内容のようで、胸どころか心臓まで締め付けられました(笑)
    スターダムを目指して頑張ってくださいませ!

    Re: 宵乃さん

    こういう機会がなかったら、通して見ようとは思わなかったでしょうね。なにせ2時間半だからなあ。

    ラストシーンはまさに感激でしたねえ。

    機会を与えてくださったことを感謝いたします(^_^)

    Re: LandMさん

    あれはオタクがオタクのために作ったオタクが見るべき映画です。

    素晴らしかったです。

    Re: miss.keyさん

    駆け上がることができたときには死んでいたりして、と考えるくらいには鬱が入っています。

    それでもなるぞスターダム。

    NoTitle

    この作品は長すぎますよね~(笑)
    一応、子供から大人まで楽しめる作品だと思いますが、多くの子供が休憩を挟むか途中で脱落するかも…。
    わたしも初見が最近で、歌だけは良く知ってました。
    なんでもっと早く観なかったんだろう!

    >旧式だが、ポッツが並々ならぬ努力と愛情を込めて手を入れたことがわかる。

    本当にあの愛情がこもった車には胸キュンでした。
    あんなお父さんがいたら貧乏でも幸せですよね。

    >ひさびさに勇気をもらった映画だった。

    ポールさんにとって特別な作品との出会いになってよかったです。
    今回もご参加ありがとうございました♪

    NoTitle

    何事も勇気をもらうのはいいことだと思います。
    確かにチキチキバンバンは有名ですけど。
    そこまで心を揺さぶりますか。。。
    またヒマがあったら見ようなかな。。。

    わんちゃんっす!

     ポール・ブリッツさんにポッツを足してポール・ポッツ。むむむ、これは吉兆。一発逆転。これをきっかけにスターダムに駆け上がるかも知れない。ガンバレ。
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    映画「チキ・チキ・バン・バン」観た

    原題:CHITTY CHITTY BANG BANG 製作:イギリス’68 監督:ケン・ヒューズ 原作:イアン・フレミング ジャンル:ミュージカル/ファンタジー【あらすじ】生活力はないが夢多き発明家ポッツは、二人の子供と老父と一緒に貧しいながら幸せに暮らしていた。子供たちのため廃車を修理た彼は、走る時の音から”チキ・チキ・バン・バンと命名。大手製菓会社の令嬢トルーリーも誘いピクニ...
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