映画の感想

    「姿三四郎」「續 姿三四郎」見た

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     というわけで今月の「ブログdeロードショー」では、前に見た「飢餓海峡」で、舞鶴署の捜査陣の中では高倉健さんを抑えて堂々の貫禄を見せていた藤田進さんの出てくる映画を見よう、という企画になった。立案者はわたしだったりする。なにせこの人、軍人役をやらせたら(それも佐官以上)、右にでる人がおらず、東宝の怪獣映画で軍のえらい人が出てくるとたいていこの人なのだ。企画にかこつけて特撮映画を見る気まんまんである。(笑)

     だが、図書館の端末で検索すると、図書館のDVDのストックに「姿三四郎」と「續 姿三四郎」の名前を発見、「ただ」という言葉に弱いわたしはあっさり乗り換えたのであった。特撮映画の未来を憂える相互さんにはまことに申し訳ない。

     で、「姿三四郎」だが。富田常雄の原作は、小学生のころ新潮文庫から出ていた三巻本を夢中になって何度も読んだ。あれは日本の娯楽小説界に残る永遠のスタンダードナンバーである。痛快無比とはあの本のためにあるようなものだ。

     DVDではあるが、この映画も前に一度見ている。しかし、それはリハビリ施設でのビデオ鑑賞会という、あまりにも過酷な環境下での視聴であった。このさいだからいわせてもらうが、初期の黒澤映画って、音響が実に悪い気がする。とにかく登場人物のセリフが聞き取りづらいのだ。しかも、部屋が薄暗くされ、ところどころで挟まれる字幕が読めない。白黒映画なので、なにが映っているのかもよくわからない。さらには時間的制約で、最後まで見られなかった。これまででも最悪の鑑賞体験である。

     同席していた人が「難しい映画だったねえ」などと発言するのを聞いて、原作ファンのわたしがどれほど施設にクレイモア対人地雷を仕掛けたくなったかは想像におまかせする。

     そんな経験があったのでそれ以来見たことはなかったが、万全の体勢を取ればなんとかなるだろう、と、テレビにイヤホンをつないでボリュームを上げ、きちんと明るい部屋で、食べ物と酒を用意して見てみた。

     結論。

     面白かった。ムチャクチャ面白かった。こんな痛快無比な映画があっていいものか、と思った。

     同時に、ウルトラセブンの長官役としてではない、軍服ではない若々しい藤田進さん、というものも見られて、あっこれもいいじゃん、と思った。たとえ軍服を着なくても、カッコいい人はカッコいいのである。

     これまでのマンガなどでは、姿三四郎は優男みたいに描かれていることが多かった気もするが、この藤田進三四郎は、丸い。上から下まで丸い。それだからこそ、その言動に「ウソ」が感じられない。そこを狙ってのキャスティングだったら、監督の目に狂いはない。ベストな人選であったといえよう。

     アクションシーンも素晴らしかった。今となっては当たり前の表現ではあるが、あれを昭和20年代に見せられたらそうとう衝撃的だったのではないだろうか。それぞれの作品のクライマックスである、檜垣源之助との右京ヶ原での決闘と、檜垣鉄心との天狗峠での決闘は、今見ても迫力十分である。

     欲をいえば、原作のラストを占める津久井讓助との対決も見たかったが……このストーリーだとやっぱり無理だろうなあ。

     ついでに、なぜ昭和20年代の映画なのに字幕が入るのかだが、アホな軍部が検閲の名のもとに削除しちまったのである。軍人役がまことに似合う藤田進さんのことを考えると、言葉はひとつしか出ない。

     軍隊のバカ、といって終わることにする。
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    ~ Comment ~

    Re: レバニラさん

    というわけで、自分なりにあらすじをまとめて書いてみました。

    読み返してみると、けっこう「当時の社会生活」についての知識がないと、当時は当たり前でも今はよくわからなくなっている要素が多いなあ、と思いました。

    「警視廳」なんて、ストーリーを知ってはいても、なんて読むのか一瞬とまどってしまったくらいですし(^^;)

    姿三四郎って、ある意味、ひとつの人間のありかたですよね。師匠が理想で、敵が悪理想。その中で青年がもがくところが、国境を越えて受け入れられる理由じゃないかな、などと考えています。

    Re: 宵乃さん

    いちおう、「わかりやすい(?)あらすじ」をUPしました。

    本もDVDもない状況で書いているので、内容がどれだけ正しいかすら自信がありません (`・ω・´)キリッ

    それでよかったらパンフレットがわりにどうぞ……。

    Re: take51さん

    冗談抜きで、初期の黒澤映画に「イヤホン」は必須だと思います。

    音響が悪いだけでなく、リアリズム重視のせいかぼそぼそとしゃべる言葉に重要な意味があったりするから油断できません。

    それとかなりの長編が多いから酒と肴と(違)


    個人的にはこの映画が「イガグリくん」を生み、「イガグリくん」がのちのスポ根漫画の源流になったのだと思います。そういう意味では日本の漫画史上においても重要な映画で(そうか?(^^;))

    NoTitle

    どうも、こんばんはです。

    姿三四郎といえば、随分昔に農業研修に来てた中国人のおじさんが「中国人にとって格好いい日本人と言えば竹脇無我が演じた姿三四郎」ってな事を言っていて、
    何でも当時の中国人はみんな竹脇無我演じる三四郎に憧れて、柔道の真似をしようとして怪我をするのがお決まりのパターンだったらしいですが、
    それでも三四郎の生き様はそのおじさんを始め、当時の中国の若者にかなりの影響を与えていたんですって。

    それはそうと、記事の方でもう少しストーリーについても言及して欲しかったです、
    自分も音声が聞き取れずに「難しい映画」だと思ったクチですから(^^;

    NoTitle

    挑戦したのですが、挫折してしまいました…。
    最初の20分で一度、次は50分のところで寝落ちです(汗)
    最近、集中力がまったくなくなってきて、古い邦画がつらいです。…と言いつつ、今夜も別の作品に挑戦しようかなと思っていたり。
    ポールさんのお気に入りのクライマックスまで見れなくて残念です!

    NoTitle

    こんばんは!
    ポール・ブリッツさんもこの映画を
    選ばれていたんですね!(^.^)

    >テレビにイヤホンをつないでボリュームを上げ、きちんと明るい部屋で、食べ物と酒を用意して見てみた。

    次回は僕もイヤホン持参で見ます(笑)
    今回、ちょっと安心したのはセリフが聞き取れなかったのは
    僕だけじゃなかったことです、、(^▽^;)

    >面白かった。ムチャクチャ面白かった。こんな痛快無比な映画があっていいものか、と思った。

    理解できるようになりたいですね~
    この映画の良さをほとんど理解できないままですので(汗)

    >それぞれの作品のクライマックスである、檜垣源之助との右京ヶ原での決闘と、檜垣鉄心との天狗峠での決闘は、今見ても迫力十分である。

    自分のブログに書き忘れてましたが、このシーンはカッコ良かったですね!
    草原に立つところの構図は痺れました!!(^.^)

    小説を読んで内容を理解したうえで再見すると良さそうですね!
    自分では選ばない映画の見る機会が出来て良かったです。
    ありがとうございます!!(^^♪

    Re: miriさん

    いや、軍隊について調べると、近代的な軍隊では、ソ連軍と日本軍の下っ端が、群を抜いてつらい待遇だったようで。

    水木しげる先生の戦記漫画や、大作「昭和史」を読むのが、日本軍の実情を知るには最適な素材です。わたしは「はだしのゲン」以上に、日本中の学校に配布されてしかるべき本だと思います。

    軍隊が「ハワイ・マレー沖海戦」で描かれたようなロマンチックなものならば、何の問題もないんですが、ミリタリーファンの間では、「あの映画見て海軍に志願した若者が現実を突きつけられるわけだから、罪な映画だよなあ」というのが実情でして。

    戦場で、加藤中佐のような立派な軍人の下で戦って、国のために死ぬのも男らしいじゃないか、と勘違いして現地に行くと、待っているのはビンタの嵐と、パイロットを効率的に海の藻屑にするために造られたとしか考えられないような飛行機だったりするのが現実ですから。

    あえていえば、戦意高揚映画って、例えるなら「信頼できる仲間と厳しい研修に耐えて、一心に会社のために働けば、必ず給料も上がって結婚もできて家も持てて、会社の慰労施設で優雅な休暇も取れる」って映画をブラック企業が職安で流すようなものです。戦時中は、それを国家がやっていたわけです。だから、戦意高揚映画は、面白ければ面白いほど、同時に危険でもあるのです。

    最近の風潮は逆なようですが、やっぱりわたしは、戦争も軍隊も嫌ですね。見たり研究したりゲームとして遊んだりするのは魅力を感じるし楽しいのですが……。

    何の話をしていたんだっけ(^_^;)

    Re: 野津征亨さん

    実際のわたしは、すきま風吹くアパートで、「ここでギャグを入れて……」とか計算しつつスマホを叩いて、陰鬱な顔で医者の薬を飲んでいたりして(それは『幕末太陽傳』のフランキー堺!)

    まあ映画が面白かったら筆がどんどん進みますね。

    つまらなかったら二行書いて終わりとか……(笑)

    Re: かえるママ21さん

    そうですねえ……怪獣映画や戦争映画が苦手なら、黒澤監督の「姿三四郎」か「隠し砦の三悪人」あたりがいいんじゃないでしょうか。いずれの映画でも、印象的な演技をしています。

    ウケを狙うなら、「ウルトラセブン」のヤマオカ長官登場回固めとか。もしかしたらやってくる人いるんじゃないかと思っていたけど、マニアックすぎたのか、いませんねえ(笑)

    まあ東宝映画の大作には、渋い脇役として頻繁に出ていますから、どれでもいいと思いますよ~。

    Re: LandMさん

    見ろ。(命令形(笑))

    まあいきなり「七人の侍」ではヘビーすぎますから、「用心棒」や「椿三十郎」あたりをレンタルDVDで試しに見てみるのがいいんじゃないかと思います。

    損はさせません。

    Re: 宵乃さん

    わたしの最初の黒澤映画体験は、松戸の映画館で二十年くらい前にリバイバル上映を見た「七人の侍」なんですが、あのショックはよく覚えています。

    「最初の三十分くらいは登場人物がなにをしゃべっているかわからない」(笑)

    それが妙なリアリズムを生んでいたのも確かなんですが、欲しかったです字幕(^_^;)

    個人的に黒澤映画の中でいちばん気に入っているのは「椿三十郎」です。でもこの「姿三四郎」もいいなあ。

    検閲の件ですが、削除された部分の説明を見ても、「どうして削除されたのかさっぱりわからない」のですよ困ったことに。

    ネガフィルムが失われて、できることはこつこつと削除部分が残っているプリントがどこかに埋もれてないか世界中を探し回るしかない、というのがきついですね。戦前の無声映画でもそうですが、これはもう宝探しの領分ですな。でも希望を捨ててはいけません。あの「忠次旅日記」ですら発見されたんですから、もしかしたら明日にでも……。

    今日はコメントを有難うございました☆

    >これまででも最悪の鑑賞体験である。
    >面白かった。ムチャクチャ面白かった。こんな痛快無比な映画があっていいものか、と思った。

    それは良かったですネ~!
    以前のそのお辛い経験があったからこそ、余計に良かったのですよね~♪

    >軍隊のバカ、といって終わることにする。

    まぁたしかにそうですよね、戦争はいけないし、軍というのモノも良くないです・・・。
    私が見た加藤建夫さんのような方ばっかりだったら、違っていたようにも思いますが・・・。

    黒澤監督はいまひとつ好きではないので、こちらは(今は)見ません。。。
    実はずっと前に録画して持っていたのですが、序盤から躓いて、とうとう見ずに削除したのです(笑)。
    親切な字幕等がついてオンエアされたら、またいつか見たいと思います☆


    .

    こんばんは。

    いつもお世話になっております。

    鑑賞録、楽しく拝見させていただきました。
    要所要所に散りばめられたポール・ブリッツ節に思わず笑声が漏れる一幕もあり(笑)

    読み手に「観てみたい!」と思わせる卓越した文章力と笑いのセンスに脱帽です。

    NoTitle

    黒沢監督の映画いくつか拝見しましたが、確かに音が悪いですね。
    字幕の削除も、残念ですね。
    どの部分がまずかったのでしょうね・・・
    今回まだ映画かりてなくて・・・(^^ゞ
    今週何か、かりてみます。

    NoTitle

    昔の映画の勿体ないところはそこですね。
    古すぎると、現代っ子には見づらい聞きづらいですからね。
    黒沢映画は偉大といいますからね、見たことないですが。。。
    見た方がいいかもしれませんね。

    NoTitle

    原作のファンだったんですね。
    確かに黒澤監督の作品は、音質が酷いものが多くて、わたしも辟易してます。
    最近はBD化に伴い、音質もかなり修復されているらしいので、いつかNHKあたりでその修復したバージョンをオンエアしてくれないかな(笑)

    >原作ファンのわたしがどれほど施設にクレイモア対人地雷を仕掛けたくなったかは想像におまかせする。

    あはは、お気持ちわかります。そんな環境で好きな作品を中途半端に見せられたら、わたしだってキレますよ。
    今回はその散々な思い出を払拭できてよかったですね。

    >アホな軍部が検閲の名のもとに削除

    検閲されてたんですか…こういう話を聞くと、映画ファンとしてとても悲しいです。

    今回もリクエスト&ご参加ありがとうございました♪
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