「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 アキラ 13-3
「なるほど……」
祖父はうなずいた。
「いいじゃろう。いずれにせよ危険な博打じゃ。今さら変なことを蒸し返すこともなかった、ということじゃな」
祖父が立ち上がったのに一拍遅れて、高木さんも立ち上がった。
「なにも申し上げられないことを、どうかお許しください」
「なに、お前さんはもうしゃべっておる」
「……え?」
「その目じゃよ。わしはその目を信じる」
「……申し訳ありません」
高木さんは、深々と頭を下げた。
先に偵察要員を行かせるべきではないか、とノゾミちゃんは主張したが、こちらの顔は全部相手に割れていると考えざるを得ない、ということで却下された。下手な小細工をして、ばらばらになったところを狙い撃ちされたらぼくたちが全滅する可能性もあるし、さっき高木さんがいったように、相手に悟られて、黙って帰ってしまわれるとそれだけでぼくたちの負けなのだ。
お通夜に行くような空気の中、ぼくたち四人は車に乗り込んだ。そんな顔をしてどこに行くのか、と聞かれて、駅前のマクドナルドです、と正直に答えたら、ぼくたちは不審人物がられるのだろうか、などとどうでもいいことが頭をよぎった。
ハンドルを握ったのは祖父だった。
ここで駅前のマクドナルドについて説明しておかなければならないだろう。ぼくが住んでいるこの友原市は田舎だが、マクドナルドが進出してきたのはけっこう早い。駅前の一等地に最初にできたのが四十年ほど前になるそうで、気軽に入れるのはいいのだが、問題点がひとつあった。
駐車場がないのだ。土地高騰のせいで造成するスペースを確保できなかったらしい。車で乗りつけるには路上駐車をするしかない。降りたすぐ後の一瞬が、いちばん無防備になるときというわけだ。
ぼくは書道で使う文鎮以外の武器を持たせてもらえなかった。そりゃそうだ、あのときのように脇差なんか持ち出して、万一警察にでも職務質問されたら、刺客と戦う以前にぼくたちは凶器準備集合罪で留置場に入れられてしまう。
車が駅に向かう最後の交差点を曲がった。
「いよいよだね」
助手席で、ノゾミちゃんが緊張した声でいった。
後部座席にいたぼくはうなずいた。
マクドナルドの屋根についている大きな看板が見えてきた。車はスピードを落とした。
その瞬間、ぼくは行きかう人の中にひとりの姿を見いだし、口が渇くのを覚えた。
「生徒会長……?」
それはたしかに、あの「ゆめちゃん」先輩に間違いなかった。
祖父はうなずいた。
「いいじゃろう。いずれにせよ危険な博打じゃ。今さら変なことを蒸し返すこともなかった、ということじゃな」
祖父が立ち上がったのに一拍遅れて、高木さんも立ち上がった。
「なにも申し上げられないことを、どうかお許しください」
「なに、お前さんはもうしゃべっておる」
「……え?」
「その目じゃよ。わしはその目を信じる」
「……申し訳ありません」
高木さんは、深々と頭を下げた。
先に偵察要員を行かせるべきではないか、とノゾミちゃんは主張したが、こちらの顔は全部相手に割れていると考えざるを得ない、ということで却下された。下手な小細工をして、ばらばらになったところを狙い撃ちされたらぼくたちが全滅する可能性もあるし、さっき高木さんがいったように、相手に悟られて、黙って帰ってしまわれるとそれだけでぼくたちの負けなのだ。
お通夜に行くような空気の中、ぼくたち四人は車に乗り込んだ。そんな顔をしてどこに行くのか、と聞かれて、駅前のマクドナルドです、と正直に答えたら、ぼくたちは不審人物がられるのだろうか、などとどうでもいいことが頭をよぎった。
ハンドルを握ったのは祖父だった。
ここで駅前のマクドナルドについて説明しておかなければならないだろう。ぼくが住んでいるこの友原市は田舎だが、マクドナルドが進出してきたのはけっこう早い。駅前の一等地に最初にできたのが四十年ほど前になるそうで、気軽に入れるのはいいのだが、問題点がひとつあった。
駐車場がないのだ。土地高騰のせいで造成するスペースを確保できなかったらしい。車で乗りつけるには路上駐車をするしかない。降りたすぐ後の一瞬が、いちばん無防備になるときというわけだ。
ぼくは書道で使う文鎮以外の武器を持たせてもらえなかった。そりゃそうだ、あのときのように脇差なんか持ち出して、万一警察にでも職務質問されたら、刺客と戦う以前にぼくたちは凶器準備集合罪で留置場に入れられてしまう。
車が駅に向かう最後の交差点を曲がった。
「いよいよだね」
助手席で、ノゾミちゃんが緊張した声でいった。
後部座席にいたぼくはうなずいた。
マクドナルドの屋根についている大きな看板が見えてきた。車はスピードを落とした。
その瞬間、ぼくは行きかう人の中にひとりの姿を見いだし、口が渇くのを覚えた。
「生徒会長……?」
それはたしかに、あの「ゆめちゃん」先輩に間違いなかった。
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ゆめちゃん先輩こんなところで何を?
……って、いてもおかしくないのか。
でも。
どう絡んでくるのか。
次回お待ちしております。
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