「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 アキラ 15-3
硬い地面だとばかり思っていたものは、ぼくの一撃でぐにゃりと歪んだ。同時に足にねばねばしたものがまとわりついてくる。
「迫水さん、これって……」
「夢膿だ! ぼくたちは夢膿の上に立っていたんだ!」
ぼくは大槌を振り上げて、もう一度振り下ろした。地面がじゅわじゅわ、しゅうしゅういいながら溶けていく。夢膿だと気づいたことで、神器は本来の力を半分だけど発揮することができたらしい。
「迫水さん、あ、足が……」
という言葉とともに、ノゾミちゃんがぼくに倒れかかってきた。ウエストの部分をぐいっとつかまれたが、反射的な行動だからとがめる気にはならなかった。こちらも足元がぬかるんでいるので、支えになってくれるぶんかえってよかった。
大槌を振り上げる。
「いえええええええいっ!」
ぼくは、気合を込めて、ふた抱えくらいある大槌を振り下ろした。
三度目の正直!
じゅううううっと夢膿が溶ける。そして、ついに地面に穴が開いた。
一度開いた穴はみるみるうちに大きくなっていった。ビニール袋を先端の丸い棒で思い切り突いたときのように、一度破れると、どんどん破断が広がっていくらしい。
「アキラちゃん!」
ノゾミちゃんが叫んだ。
夢膿の大地はぼくたちの体重をも支えきれなくなったようだ。ぼくたちふたりはもつれ合ったまま、深い暗闇に落ちていった。
どこまで落ちたのかはわからない。夢だから、どこまで落ちたか、なんてのにはそもそも意味がないのかもしれない。
気がついたときには、ぼくとノゾミちゃんはどこまでも続く網のようなものにひっかかっていた。
手を見た。折れた柄に戻っていたが、「影縫」はしっかり握っていた。ほっとする。
「……大丈夫、ノゾミちゃん?」
といったとき、ぼくは自分の腰がしっかりとノゾミちゃんにハグされていたことに気づいた。どうやらノゾミちゃんも同様だったらしい。顔がみるみる真っ赤に染まる。
しかし、先ほどの一連の体験は、ノゾミちゃんにとっては刺激が強すぎたようだ。
「……さ、さ、迫水さん、う、うわ、うわ」
ろれつが回っていない。身体の動きもかちこちだ。いわゆるアドレナリンが切れた状態というか、腰を抜かし、筋肉に力が入らないらしいのだ。ぼくはため息をついて、ノゾミちゃんの腕をガイドして、ぼくの身体から外した。まだがくがくしていたので、拳を使って活を入れた。それでようやく緊張が解けたらしい。ノゾミちゃんは両の手のひらを何度も握ったり開いたりしてから、くたっと両手を下ろした。
「迫水さん、これって……」
「夢膿だ! ぼくたちは夢膿の上に立っていたんだ!」
ぼくは大槌を振り上げて、もう一度振り下ろした。地面がじゅわじゅわ、しゅうしゅういいながら溶けていく。夢膿だと気づいたことで、神器は本来の力を半分だけど発揮することができたらしい。
「迫水さん、あ、足が……」
という言葉とともに、ノゾミちゃんがぼくに倒れかかってきた。ウエストの部分をぐいっとつかまれたが、反射的な行動だからとがめる気にはならなかった。こちらも足元がぬかるんでいるので、支えになってくれるぶんかえってよかった。
大槌を振り上げる。
「いえええええええいっ!」
ぼくは、気合を込めて、ふた抱えくらいある大槌を振り下ろした。
三度目の正直!
じゅううううっと夢膿が溶ける。そして、ついに地面に穴が開いた。
一度開いた穴はみるみるうちに大きくなっていった。ビニール袋を先端の丸い棒で思い切り突いたときのように、一度破れると、どんどん破断が広がっていくらしい。
「アキラちゃん!」
ノゾミちゃんが叫んだ。
夢膿の大地はぼくたちの体重をも支えきれなくなったようだ。ぼくたちふたりはもつれ合ったまま、深い暗闇に落ちていった。
どこまで落ちたのかはわからない。夢だから、どこまで落ちたか、なんてのにはそもそも意味がないのかもしれない。
気がついたときには、ぼくとノゾミちゃんはどこまでも続く網のようなものにひっかかっていた。
手を見た。折れた柄に戻っていたが、「影縫」はしっかり握っていた。ほっとする。
「……大丈夫、ノゾミちゃん?」
といったとき、ぼくは自分の腰がしっかりとノゾミちゃんにハグされていたことに気づいた。どうやらノゾミちゃんも同様だったらしい。顔がみるみる真っ赤に染まる。
しかし、先ほどの一連の体験は、ノゾミちゃんにとっては刺激が強すぎたようだ。
「……さ、さ、迫水さん、う、うわ、うわ」
ろれつが回っていない。身体の動きもかちこちだ。いわゆるアドレナリンが切れた状態というか、腰を抜かし、筋肉に力が入らないらしいのだ。ぼくはため息をついて、ノゾミちゃんの腕をガイドして、ぼくの身体から外した。まだがくがくしていたので、拳を使って活を入れた。それでようやく緊張が解けたらしい。ノゾミちゃんは両の手のひらを何度も握ったり開いたりしてから、くたっと両手を下ろした。
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~ Comment ~
NoTitle
いいなあー、この二人。
現実世界ではまだ距離がありますが、「ノゾミちゃん」「アキラちゃん」と呼び合っているところが本来あるべき関係と思えます。
現実世界でもガンバレ、望ちゃん!
現実世界ではまだ距離がありますが、「ノゾミちゃん」「アキラちゃん」と呼び合っているところが本来あるべき関係と思えます。
現実世界でもガンバレ、望ちゃん!
- #15082 椿
- URL
- 2015.01/20 15:12
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Re: 椿さん
まだ内なる羞恥心を破壊しきれてないみたい(^_^;)