「夢逐人(オリジナル長編小説)」
    夢鬼人

    夢鬼人 ノゾミ 16-4

     ←夢鬼人 ノゾミ 16-3 →夢鬼人 サヤカ I
     ぼくはほっとした。ほっとすると同時に腰から力が抜け、へなへなとなってしまった。

    「心臓に悪すぎるよ、迫水さん……」

     迫水さんは『影縫』をもとの折れた小柄の柄に戻した。瑠璃ちゃんの精神集中が切れたのか、さっきまで絡み付いていたワイヤーも、握られていた短剣も、その場からは消えていた。

     ぼくは迫水さんに尋ねた。

    「瑠璃ちゃんは昏倒させたけどさ、これからどうやって解毒剤の処方を聞き出せばいいと思う? 起こしたら、またさっきの繰り返しだと思うんだけど」

    「うん。だから、探している。瑠璃ちゃんの身体から、手がかりを」

    「手がかり?」

    「衣服をあらためるんだ。そこになにかのヒントになるようなものが隠れているかもしれないから」

     迫水さんは冷静な口調を装ってはいたが、その声のトーンには隠し切れない焦りの色があった。

    「気をつけないと。なにが飛び出してくるかわからないし……って、ぼくも手伝うべきなのかなあ、身体検査……」

    「あのね、ノゾミちゃん!」

    「……ごめん。忘れて」

     ぼくは、もしこんなことをしていることが現実世界にばれたら、クラスからの村八分どころじゃすまない、退学処分だな、と思いながら迫水さんを手伝った。

    「これは財布、これはひらがなの書かれたカプセル、そしてこれは予定のメモ……」

     迫水さんは真剣なまなざしでありとあらゆるものをあらためていた。ぼくはちょっとひっかかった。

    「迫水さん」

    「なに!」

    「その、予定のメモっての、見せてくれない? ぼく、小学生のころ、落書きとか一杯書いたけど、重要なこともそれにいっしょくたにして書いたものだよ」

    「でも、これ、新品だし、今日のこの場所しか書かれてないよ」

     迫水さんはぼくにその小さな革表紙のメモ帳を渡してくれた。たしかに迫水さんのいうとおりだった。ぼくはため息をついた。

    「迫水さん。小学生のころ、スパイ小説とか読んだほう?」

    「いや、そのころは毎日剣術で」

     ぼくはその答えを聞いて、メモの本体を革表紙から外し始めた。思ったとおりだ。革表紙はメモ本体のカバーなのだ。小さな字が、

    『たかぎ
     るりこ』

     と、隠れていた裏表紙に書いてあった。

    「自分の名前じゃない!」

     迫水さんはぼくをにらんだ。にらまれる覚えはぜんぜんないのに。

     ぼくは、自分の考えを話し始めた。
    関連記事
    スポンサーサイト



     関連もくじ一覧 ▼ 
    総もくじ 3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ 3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ 3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ 3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    総もくじ 3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【夢鬼人 ノゾミ 16-3】へ  【夢鬼人 サヤカ I】へ

    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    少年探偵団程度のロジックしか考えられなかったことをあらかじめお詫びいたします(え゙(^_^;))

    NoTitle

    瑠璃ちゃん本当に幼いんですね。
    ひらがなで書かれたメモが痛々しい。
    望くんは何に気付いたのでしょう?

    続きお待ちしております(^O^)
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【夢鬼人 ノゾミ 16-3】へ
    • 【夢鬼人 サヤカ I】へ