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    なぜ救えなかったお年寄りの孤独死(ノンフィクション)

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     3月20日、それが生きている近藤庄次郎さん(当時76歳)が目撃された最後だった。そう書かなければならないのはつらい。近藤さんは、ふたたび発見された時にはほぼ完全なミイラ状態だった。死ぬ直前まで、極端なまでの飢餓状態だったらしい。なにも食べるものもなく、電気すらない一室に閉じこもっていたのだ。なによりやりきれないのは、近藤さんが、最後まで、自分が生きていることを周囲に知らせていたらしいことだ。周囲も、それなりにサインに気づいてはいた。だが、近藤さんを救うまでには至らなかったのだ。

     近藤さんは、新潟県村上市安良町区に生まれた。若いころから、頑健な身体と強い意志を持ち合わせていたらしい。現代日本からは考えられないような貧しい食事をしながら、酷暑も酷寒もいとうことなく、野山を歩きつづけた。ときには滝に打たれるような目にもあったらしい。そんな厳しい生活を続けながらも、その性格は変わらず、慕う人も多かったと聞く。だが、それでも孤独死を防ぐまでには至らなかった。

     新潟県知事からも、何度となく賞状や感謝状をもらっていたことからも、篤実な性格は想像がつく。しかし、行政の欠陥か、対応は冷淡にすぎた。近藤さんは遺書を残していたそうだが、その一部は新潟県からも拒絶されてしまったのだ。

     近藤さんは熱心な仏教徒でもあった。死んだときも、近藤さんは結跏趺坐の状態を崩すことはなかった。

     その遺体がようやく確認されたのは、死後58年を経てのことだった。明治初年に発布された墳墓発掘禁止令のため、そのまま放置されていたのである。

     昭和36年に村上市教育委員会と日本ミイラ研究グループの手によって発掘調査が行われるまで、この日本最後の即身仏である近藤さん(法号・仏海上人)は、暗闇にただひとり取り残されていたのだ。

     この孤独死事件は、われわれ現代の日本人にも、行政および社会の矛盾と、その差し伸べる手の欠如を強く訴えてやまない。

     近藤さんを救う方法はなかったのか、ふたたびそれを問い直してみるべきだろう。(ポール・ブリッツ記者)
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    ~ Comment ~

    Re: ダメ子さん

    リア充で即身仏になるなんて、よほど精神力が強い方だったんでしょうねえ……。

    わたしは死ぬときは病院の集中治療室でチューブだらけになって死ぬことに決めてます。どうせ意識はないんだし。

    NoTitle

    個人的には孤独死でもいいから死ぬ時ぐらいは放っておいてもらいたいのだけれど…
    私が見に行ったお寺の孤独死老人は追ってきた彼女に睾丸をプレゼントするようなリア充(?)だったそうです…こわい…

    Re: あじろさん

    待て、その考え方は「現状に満足しきった文句をいわない優秀な労働力」以外の存在を駆逐しようとする権力者の罠だ、と、わたしの中のゴーストがささやくんですが。

    ピンピンコロリなんて死に方がもてはやされること自体、この日本、どこかがゆがんでいるのだと思います。

    NoTitle

    自分で死の時を選べたらとつくづく思います。
    幸せなうちに死んじゃう選択って、できたらいいと思いませんか?

    Re: miss.keyさん

    三十五年前の社会の時間には、日本社会は今ごろは「少産少死」の理想的な人口分布になりますよ、「多産多死」のインドみたいな国じゃなくてよかったですね、と教わったのですがねえ、まあなにをどうやっても歪みが出るというか、誰もまともに考えていなかったというか、とりあえず想定外といっときゃみんな納得するというか……。

    Re: ECMさん

    わたしも他人事じゃありません。

    とはいえ集団生活は完全に無理な性格してますし……。

    老後生活……あるほど生きられるのでしょうか……。

    避けられぬ現実

     行政の差し伸べる手にも限度がある。増して独居老人は急増中だ。私もそうだが、家族のいない人も多い。そして若者は年を追って激減中。どう考えても無理がある。
     猫は死ぬ時、姿を隠すと言う。孤独に死ぬのだ。人もまたいずれそうなる日が来る。避けられぬ現実だ。

    PS:だからと言って深慮不足の移民政策は止めて欲しい。彼らが入ってきたところで独居老人に家族が出来る訳ではない。むしろ生活環境の激変の方がよほど怖い。

    NoTitle

     まじめな話しをすれば、お年寄りの男性の孤独死をさけるために、できるだけ窓際ですごして、携帯電話に長いひもをつけて、倒れたときも手でたぐり寄せることができるようにしている人がいるそうです。
     男性のほうが、孤独死が多いそうで、私も1人になったらきをつけなければ。
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