映画の感想

    「きっと、うまくいく」見た

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     先月の「ブログDEロードショー」はインド映画がお題であった。

     というわけで、先月の終わりにそのうちの一作、インド映画「きっと、うまくいく」を見たので感想をば。

     最初の三十分は、わたしは「失敗した……」と思った。エンジニアを目指す三人の大学生の大学生活とその後を描いた映画だとは聞いていたが、ギャグやくすぐりにさっぱり笑えず、これは地雷を踏んだかと思った。なにせ3時間の作品である。

     裏を返せば、3時間の作品を30分でやめてしまっていいのか、という話にもなる。うちの近所のレンタルビデオ屋は一週間税込108円。108円といえども投入した以上は、見なければならないだろう。でないともとがとれん。

     40分を過ぎたあたりからやたらと面白くなってきた。というか、この物語の構造が見えてきたのだ。

     概念的にはかなりズレるかもしれないが、「蛮カラ」である。

     作中登場する大学ICEは、寮はともかく教室的にはごく普通の大学にしか思えないが、よくよく考えるとインドでもトップクラスの知的集団の入る学校ではないか。とすると、ここは日本の戦前の「帝大」みたいなものであろう。そこで学んでいる以上、彼らは「いずれ博士か大臣か」という、「家の威信」を背負ってやってきているのである。

     貧富の差が極端に激しく、「家」の身分とカネがものをいう、国民皆が立身出世を狙うすさまじいまでの競争社会。学校は形式的なことしか教えず、学生たちは反発心と自我をもてあまし、バカをやり、もがく。

     コメディになってはいるが、その裏にはインドのかかえる問題が臓物のようにこれでもかとばかりに詰まっている。

     教科書丸暗記にのみ頼る学習なんて、ギャグにしか思えないかもしれないが、似たような発展途上国の大学の例をファインマン博士は著書に書いているから、あながちウソではない。トップの大学はどうかはわからないが、監督としてはそのような諸大学のありように対する啓蒙的な発想もあったのではないだろうか。

     同様に、これでもかとばかり、「人は生まれではない」ということも主張している。作中で校長が各人の家の月収の額を書いているが、それを見ているとあまりの格差にクラクラしてくる。だが、ここでは書かないが、主要登場人物のひとりの家は、たぶん最低の月収といわれていたラージューのそれよりもさらに低い月収しかもらえなかったのだろう。そこまで考えると、ドラマの扱う問題の重さがさらにひしひしと感じられてくる。

     それでいながら、表面はバカまるだしのお気楽はちゃめちゃコメディにしか見えないのだから、監督の手腕はたいしたものだ。笑えて泣けてびっくりできてじんとすることでは、「ライフ・イズ・ビューティフル」に匹敵するのではないだろうか。

     なお、これを見た女性陣から総スカンを食っている、作中でギャグとしてやたらと出てくるセリフ「ゴーカン」だが、日本でいえば蛮カラ気取りのインテリ帝大生たちがドイツ語で猥談をしているようなものだと思えば……。さして……。やっぱり気になりますかそうですか……。
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    ~ Comment ~

    Re: 鉦鼓亭 さん

    あれが「ゴーカン」じゃなくて、もっとソフトななにかだったら日本人にもウケたんでしょうね。「ドロボー」だとか。

    あのスピーチシーンが後に伏線として生きてくるので「ゴーカン」はしかたないっちゃしかたないのですが。カタカナにしたのは字幕翻訳者の英断だったと思います。

    日本のコメディアニメでも、どんなことをいっているのか想像すると恐ろしくなることがあります。読んだ例では、昔のアニメ「あぃまぃみぃ!ストロベリー・エッグ」いうのが「すごく気持ち悪い」という人もいたそうですな。『苺生卵』……たしかにマズそうだ(^^;)

    Re: limeさん

    まあ向こうさんも、訳してあっても落語はあまり面白く感じないみたいですし。

    「笑いのツボ」というより、文化的な面なのかもしれません。

    日本のお笑い文化自体がロゴス中心主義なのかも。

    NoTitle

     ポール・ブリッツさん、こんばんは
     観て下さり、ありがとうございました

    蛮カラ気取り
    >そうですね、それに近い感じだと僕も思います。
    今の日本じゃ、品性・人格まで疑われてしまうけど、
    例のシーン、大笑いでした。
    ついでに、何故か解らんけど、一緒に観た女房も吹き出してました(娘は引いてたかな)。

    こういうのは、余り細かい事に拘らず笑っちゃえばいいと思うのですが、
    それも、男だからなんでしょうね。
    自己規制の果ての日本から見ると、能天気な大らかさが懐かしいです。

    NoTitle

    話しはズレてしまうのですが、
    学生の頃、中国にサバイバル旅行した時に、映画館に入ったんです。インドのコメディ―映画をやっていて、(もちろん言葉は分からなかったのですが)中国の客が、恐ろしいほど笑い転げている姿が、怖かったです。すぐに転ぶし踊りだすし歌いだす映画。3分おきに大声で笑い転げる中国の客。
    きっと翻訳してあっても、日本人と、中国・インドの人の笑いのツボは違うんだなと、肌で感じました。
    ・・・でも、もしかしたらその裏側には、日本人に分からないブラックな隠喩とかがあったのかな??

    Re: ROUGEさん

    たしかに、「これはないだろう」というシーンや会話があったのは事実ですが、全体的には笑いの基盤はわれわれと地続きだと思います。

    変にハイブロウなギャグなど狙わず、下ネタがらみのギャグで攻めてきているからかもしれません。

    まあでも三時間は気楽に見るには長いかな。話に入り込むとあっという間なんですけどねえ。

    吹き替え版を作って夏休みとかに流したら、けっこういけるんじゃないかと思います。富山敬さんあたりが吹き替えをやったらぴったりだと思うんですが、なぜお亡くなりに……(´;ω;`)

    Re: 宵乃さん

    でも、こういう明るいコメディが撮れるというのは、今のインドのパワーが感じられて、元気になったのも事実です。

    「ムトゥ 踊るマハラジャ」も見たくなってきたなあ……。

    NoTitle

    インド映画って見たことないわ。
    そういうのシネコンじゃあまりやってないよね?

    でもホント国によって「笑いのツボ」とか違うので
    私は出来るだけコメディは避けてるわ

    NoTitle

    冒頭で合わないと感じられたのに、最後まで観ようという心意気が素晴らしいです。いつも積極的に参加して下さってありがとうございます♪

    ホント、パッと見はバカやって明るく楽しい雰囲気ですが、何気に風刺が効いていて考えさせられる作品でしたね。
    インドをよく知らなくても、日本と重なる部分もあって他人事とは思えません。

    >たぶん最低の月収といわれていたラージューのそれよりもさらに低い月収しかもらえなかったのだろう。

    そうですね~。だからこそ彼にだけは本当の事を教えたのかもしれませんね(違う人だったらスミマセン!)
    今回もご参加ありがとうございました♪
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    映画「きっと、うまくいく」観ました

    原題:3 IDIOTS 製作:インド’2009 170分 監督:ラージクマール・ヒラニ ジャンル:青春/コメディ/ドラマ【あらすじ】超難関の名門工科大ICEに入学したファランとラージューは、そこで自由人ランチョーと出会う。3人はバカ騒ぎを繰り返しては鬼学長の怒りを買いながら、友情を深めていった。だが、ランチョーは卒業と共に姿を消し、その10年後、やっと行方の手がかりをみつけ…。まと...
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