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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    3 吸血鬼を吊るせ(完結)

    吸血鬼を吊るせ 1-13

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    13

     昨日に続いて再び遥流子の枕元に座った。そばにいるのは遥美奈と遥喜一郎氏に加え西方光太郎。
    「桐野さん……」
     西方光太郎が、押し殺した声でいった。
    「お願いします」
     このような状態にある婚約者を目の前にしているのだったから当然な反応だ。それはわかっていたが、わたしは責任を感じないわけにはいかない。
    「やれるだけのことはやりましょう。昨日のようなわけには行きません」
     そういって、わたしは布団の横から手を突っ込み、遥流子の左手を引き出した。
    「なにを……?」
    「西方さん、握っていてあげてください。これが流子さんの覚醒を左右することになるかもしれない」
     西方光太郎は遥流子の左手を押し戴くようにして握った。わたしはうなずいた。
    「行きます」
     色を変えながら回転する六角形をイメージして、夢に入る。
     今回は、夢についてもわたしにはあるアドバンテージがあった。過去に夢に入ったときの記憶を積極的に使用することで、こちらから患者の見ている夢をある程度思うとおりの形に固定化することができるのだ。わたしはこれを、「世界固定」と呼んでいた。もちろん、固定できるのは過去に患者が見ていた夢の形に限られる。こちらがゼロから夢の内容を作り上げることも原理的には不可能ではないだろうが、そのためにはどれだけの強大な精神的強さが必要なのかは見当もつかない。あらかじめフォーマットが出来ている既視夢を使ったほうが遥かにたやすいことなのは当然だ。
     今回、固定するイメージは昨日遥流子が見ていた果てしない荒野の夢だ。少なくとも、その夢の中ならもう一度あのしゃれこうべと対決することができる。
     精神を集中させ、自分の記憶の中にある映像を強く念じた。
     周囲の空間が次第に形を取って来て……。
     わたしは、あの荒涼たる大地にいた。
     辺りを見回した。昨日のしゃれこうべはどこにいる?
     姿は見えない。
     いいだろう。適当に歩いていればそのうち出くわすはずだ。
     周りを警戒しながら歩き始めた。
     しばらく歩いたが、しゃれこうべはまだ現れない。どこかでこちらの様子を窺っているのだろうか。
     ふと思い立ち、座り込んで地面を掘ってみる。硬い。だが、道具を使うまでもないだろう。指に力を込めて大地に穴をうがとうとする。
     そのときだった。
     わたしは後方に気配を感じて飛びのいた。
     運がよかった。わたしの頭すれすれをかすめて、見覚えのある白い物体が飛んで来たのだ。
     あのときのしゃれこうべに間違いはなかった。
     わたしは精神を集中して自分の使うべき道具を思い浮かべた。そのまま物象化させる。
     網と三叉鉾!
     これが、わたしが考え出したやりかただった。投網は扱ったことがないが、腕の下手は気合と精神力でカバーする。少なくとも、同じように扱い方を知らない以上、刀よりはマシだろう。
     わたしは手にした網と三叉鉾を構えながら用心深く間合いを窺った。
     しゃれこうべはわたしの周りをぐるぐると取り囲むように旋回している。
     永遠とも思える時間が流れたような気がした。
     旋回の軌道が変わった。
     わたしは素早く向き直ると手にした網を投げた。博物館で見た漁師の写真ほどにはうまくはないが、それなりに形になっていることを信じて。
     本当に運がよかった。体当たりをしようとしてきたしゃれこうべの軌道にどんぴしゃのタイミングで網が広がり、しゃれこうべをがっちりと捕まえたのだから。
     しゃれこうべはじたばたと逃げようとしたが、網に捕えられて逃げることはできない。
     わたしは網を手元にたぐり寄せた。なおも飛ぼうとするところを、逃げられないように足でぎゅっと大地に押さえつけ、手元の三叉鉾を振り上げた。
     しゃれこうべと目と目が合った。その眼窩からはなにも読み取ることはできなかった。
    「夢魔め!」
     三叉鉾でしゃれこうべを突き刺した。しゃれこうべはわたしの一撃の前に、音を立てて壊れた。
     次の瞬間……。
     世界が揺れた。空気が歪む。世界が変貌しようとしていた。
     荒涼とした世界があっという間に木々で覆われる。どんよりとした灰色の空が、きれいな星空へと変わった。
     これで、遥流子の見ていた悪夢も終わったのだろうか?
     そこまで考えている余裕はなかった。
     目の前の光景が遠くへ下がっていく感覚。そして夢の風景は一点に収斂して消えてしまった。
     わたしは夢から離れつつある自分を感じた……。
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    ~ Comment ~

    >佐槻勇斗さん

    >>良い方向へ向かってくださらないと佐槻としてはありがたいですが

    わたしはどう書けばよかったのだろう(笑)。

    遥流子さんは、「りゅうこ」です。というか、「るこ」という読み方は想像すらしていなかった(^^;) わたしは重力に縛られたオールドタイプなのかもしれない(^^;)

    こんにちは!

    しゃれこうべを倒した後の流子さんへの影響は!?
    良い方向へ向かってくださらないと佐槻としてはありがたいですが(´∀`人)←

    まだ一部だからきっとまだまだなにかあるんですよね?
    期待しますv

    あの、素朴な質問ですが、流子は読みはるこさんですかりゅうこさんですか??
    すいません、気になって……^^;

    >せあらさん

    話はまだ第一部すら終わってませんから、どうかご期待ください。
    もちろん、ただではすみません(爆)。

    こんばんは、せあらです^^
    いよいよ夢魔との戦闘か!と思ったら、少し手間取りつつも何とかKO。
    う~ん、ポール・ブリッツさんのことだから、絶対にこれで終わらせてくれない予感がひしひしとするのですが。
    夢魔を倒した後の描写が気になりますしね。
    こうして平和が戻りましたとさって終わり方じゃないですもの。
    今日の分早くUPされないかなぁv ←何だか催促っぽいですね; そういうわけではないですよ!
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