「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 ノゾミ 20-4
ハッタリだろうか。ぼくは考えをめぐらせたが、自分に対して自信がなくなってきた。そもそも、ぼくみたいな人間が、『夢逐人』の仲間になって、まともに戦えるのだろうか。ぼくは生涯、足手まといとして、迫水さんたちの邪魔になることしかしでかさないのではないだろうか……。
兄は続けた。どれだけ国枝さんをしゃべらせれば気が済むんだろう。
「最近の社会は、科学技術が発達したために、社会を混乱させるのがとても簡単になっている。たかだか貧しい国の武装民兵にすぎなかったような集団でも、今や手のつけられないような国際的な混沌状態を、中東の地に大々的に作り出している。すべては、高度情報化社会と、その終着点ともいえるインターネットの発達のおかげだ。だから、ぼくたちも、あの武装集団の例にならい、全世界的な規模で、『応仁の乱』から続く『戦国時代』を演出することにしたんだ」
ぼくはマスコミの情報拡散能力と、インターネットの輪をかけた情報拡散能力を考えて、絶望的な気分になった。もし、国枝さんを眠らせたというその『音』を、兄たちが音声データで世界中のパソコンに流したら。なにも、即座にウイルスを使うまでもない。動画サイト……ツイッター……ライン……手段はよりどりみどりだ。全世界の人間のうち、少なからぬ割合の人間が、いっせいに眠る……。アンチウイルスソフトの制作会社や、パソコンを監視する立場にある人間たちが、まず真っ先に眠る……。やがては、人類皆が悪夢に満ちた眠りに……。
「……『それ』が起こるまでのわずかな期間、身を隠せるところは用意してある。この際だから、日本全国を旅してまわるのもいいかな、と考えているくらいだ。前にも事件があったね。つまようじを使ったいたずら者が、電車を乗り継いであっちこっちと移動して、数日間を逃げ延びた例が。ぼくたちには、その数日間があれば、それでいいんだ」
ぼくの頭に、日本地図が広がった。国内に限るとしても、日本はこれでいて意外と広い。しかも、父や兄には、時形流の人脈のバックアップがある。その気になれば隠密裏に、日本全国どこへでも……。
「どうだい? 『夢鬼』になるというのは。単に、きみたちが自分の力で他人の夢を食べればいいだけの話だ。ちょっと力の使いかたを変えればいいんだ。どうせぼくたちは捕まらな……」
「……いえええええええいっ!」
さっきの大喝が、小声に思えてしまうほどの、頭や腹どころか体中にがんがん響いてしまう裂帛の気合。
はっとぼくは正気に返った。
気合の主はもちろん、才造おじいさんだ。
ぼくも、迫水さんも、さらには国枝さんまで、目をぱちぱちしばたたいていた。
才造おじいさんは肩で息をしていた。
兄は続けた。どれだけ国枝さんをしゃべらせれば気が済むんだろう。
「最近の社会は、科学技術が発達したために、社会を混乱させるのがとても簡単になっている。たかだか貧しい国の武装民兵にすぎなかったような集団でも、今や手のつけられないような国際的な混沌状態を、中東の地に大々的に作り出している。すべては、高度情報化社会と、その終着点ともいえるインターネットの発達のおかげだ。だから、ぼくたちも、あの武装集団の例にならい、全世界的な規模で、『応仁の乱』から続く『戦国時代』を演出することにしたんだ」
ぼくはマスコミの情報拡散能力と、インターネットの輪をかけた情報拡散能力を考えて、絶望的な気分になった。もし、国枝さんを眠らせたというその『音』を、兄たちが音声データで世界中のパソコンに流したら。なにも、即座にウイルスを使うまでもない。動画サイト……ツイッター……ライン……手段はよりどりみどりだ。全世界の人間のうち、少なからぬ割合の人間が、いっせいに眠る……。アンチウイルスソフトの制作会社や、パソコンを監視する立場にある人間たちが、まず真っ先に眠る……。やがては、人類皆が悪夢に満ちた眠りに……。
「……『それ』が起こるまでのわずかな期間、身を隠せるところは用意してある。この際だから、日本全国を旅してまわるのもいいかな、と考えているくらいだ。前にも事件があったね。つまようじを使ったいたずら者が、電車を乗り継いであっちこっちと移動して、数日間を逃げ延びた例が。ぼくたちには、その数日間があれば、それでいいんだ」
ぼくの頭に、日本地図が広がった。国内に限るとしても、日本はこれでいて意外と広い。しかも、父や兄には、時形流の人脈のバックアップがある。その気になれば隠密裏に、日本全国どこへでも……。
「どうだい? 『夢鬼』になるというのは。単に、きみたちが自分の力で他人の夢を食べればいいだけの話だ。ちょっと力の使いかたを変えればいいんだ。どうせぼくたちは捕まらな……」
「……いえええええええいっ!」
さっきの大喝が、小声に思えてしまうほどの、頭や腹どころか体中にがんがん響いてしまう裂帛の気合。
はっとぼくは正気に返った。
気合の主はもちろん、才造おじいさんだ。
ぼくも、迫水さんも、さらには国枝さんまで、目をぱちぱちしばたたいていた。
才造おじいさんは肩で息をしていた。
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Re: 椿さん
何気ないはずの言葉が異常なパワーを持っているって設定、なんかわたし大好きなようでショートショートでいろいろと使ってますね(^^;)