「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 アキラ 21-4
「神器は神器を呼ぶ……そうか。そのために、高木さんは『影縫』を折ったんですね。ぼくたちを導くことができるように」
ノゾミちゃんが興奮したようにしゃべった。祖父はほう、といった。
「……なるほど。高木氏の考えそうなことじゃ。あやつらも、手に入れた神器の片割れを持って移動する可能性が大じゃからな。あやつらは、あれを不測の事態に対する切り札、と考えておるかもしれんが……とんだジョーカーじゃて」
祖父は立ち上がり、部屋を出た。
「でも……迫水さん、『影縫』がぼくたちを導くとして、どうやってあの折れた小柄からメッセージを読み解くの?」
「ええと……」
ノゾミちゃんの問いに、ぼくは言葉に詰まった。たしかに、いくら『神器』とはいっても、小柄はふつう口をきかないものだ。
「やっぱり、夢で高木さんに聞くしかないのかなあ……でも……」
二人そろって頭を抱えそうになったとき、祖父が円い板と地図帳を抱えてやってきた。ノゾミちゃんが目を丸くした。
「なんです、その板?」
「……式板じゃ。陰陽道で使う、方角を示すための板じゃな。少年! そんなことより、台所から、ガラスの皿か盆に水を汲んで持って来い!」
ノゾミちゃんははじかれたように立ち上がり、あたふたと台所のほうに走って行った。すぐに戻ってきたノゾミちゃんは、祖父の注文通り、水が入っているであろう魔法瓶と、サラダを盛るのに使っているガラスの皿、それにもうひと回り小さいガラスの皿を抱えてきた。
「……気を利かせたつもりか」
祖父はノゾミちゃんをにらんだ。
「は、はい!」
ノゾミちゃんの背筋が硬直する。
「いい心がけじゃ。将来出世するぞ」
祖父はそういうと、大きな皿に魔法瓶から水を注ぎ、その上に小さな皿を浮かべた。
「晶。『影縫』を」
ぼくは祖父に折れた『影縫』の柄を手渡した。祖父は注意深く、『影縫』を浮かべた皿の上に置いた。
「どうして式板が神社にあるんです?」
「鹿澄夢刀流第五代、迫水文治郎時直は、陰陽道にも精通なされたかたであったと前にいったはずじゃぞ。わしらも研究の真似事くらいはしておる。その結果が、ダウジングというのはちょっと不本意ではあるがな……」
『影縫』を載せた皿は回転を始めた。回転はやがて、東を指してぴたりと止まった。
祖父は式板をにらみ、地図帳の上で糸を引っ張った。ノゾミちゃんが尋ねた。
「『影縫』はどこを指しているんです?」
「延長線上には鹿島神宮がある。わしら古武術を使うものにとって、聖地にあたるな」
ノゾミちゃんが興奮したようにしゃべった。祖父はほう、といった。
「……なるほど。高木氏の考えそうなことじゃ。あやつらも、手に入れた神器の片割れを持って移動する可能性が大じゃからな。あやつらは、あれを不測の事態に対する切り札、と考えておるかもしれんが……とんだジョーカーじゃて」
祖父は立ち上がり、部屋を出た。
「でも……迫水さん、『影縫』がぼくたちを導くとして、どうやってあの折れた小柄からメッセージを読み解くの?」
「ええと……」
ノゾミちゃんの問いに、ぼくは言葉に詰まった。たしかに、いくら『神器』とはいっても、小柄はふつう口をきかないものだ。
「やっぱり、夢で高木さんに聞くしかないのかなあ……でも……」
二人そろって頭を抱えそうになったとき、祖父が円い板と地図帳を抱えてやってきた。ノゾミちゃんが目を丸くした。
「なんです、その板?」
「……式板じゃ。陰陽道で使う、方角を示すための板じゃな。少年! そんなことより、台所から、ガラスの皿か盆に水を汲んで持って来い!」
ノゾミちゃんははじかれたように立ち上がり、あたふたと台所のほうに走って行った。すぐに戻ってきたノゾミちゃんは、祖父の注文通り、水が入っているであろう魔法瓶と、サラダを盛るのに使っているガラスの皿、それにもうひと回り小さいガラスの皿を抱えてきた。
「……気を利かせたつもりか」
祖父はノゾミちゃんをにらんだ。
「は、はい!」
ノゾミちゃんの背筋が硬直する。
「いい心がけじゃ。将来出世するぞ」
祖父はそういうと、大きな皿に魔法瓶から水を注ぎ、その上に小さな皿を浮かべた。
「晶。『影縫』を」
ぼくは祖父に折れた『影縫』の柄を手渡した。祖父は注意深く、『影縫』を浮かべた皿の上に置いた。
「どうして式板が神社にあるんです?」
「鹿澄夢刀流第五代、迫水文治郎時直は、陰陽道にも精通なされたかたであったと前にいったはずじゃぞ。わしらも研究の真似事くらいはしておる。その結果が、ダウジングというのはちょっと不本意ではあるがな……」
『影縫』を載せた皿は回転を始めた。回転はやがて、東を指してぴたりと止まった。
祖父は式板をにらみ、地図帳の上で糸を引っ張った。ノゾミちゃんが尋ねた。
「『影縫』はどこを指しているんです?」
「延長線上には鹿島神宮がある。わしら古武術を使うものにとって、聖地にあたるな」
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NoTitle
まとめて読みました。いろいろ、つながって来ましたね。
二つの流派の関連は気になるところです。
対決する時、何が起こるのか。
先が楽しみです。
二つの流派の関連は気になるところです。
対決する時、何が起こるのか。
先が楽しみです。
- #15661 椿
- URL
- 2015.05/15 09:20
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Re: 椿さん
三巻が書けるのはいつだろう(^_^;)