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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    3 吸血鬼を吊るせ(完結)

    吸血鬼を吊るせ 1-15

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    15

    『気象情報をお伝えします。まずは概況から……』
    『……日本海に発生した低気圧が、今夜から明日にかけて沿岸部一帯に降雪をもたらすでしょう。ところによっては吹雪くおそれもありますので、明日お出かけの際には注意してください……』

     寒さで目が覚めた。
     枕元の腕時計を見る。なんてこった。まだ五時じゃないか。とはいえ、ゆうべ床についたのが九時だったから、八時間は眠ったことになるのか。身体に八時間睡眠が染み付いてしまったらしい。これも職業病であろうか。
     しかし、布団の中で朝寝を楽しもうにも、今日は寒すぎる。雪国となれば仕方もないのかもしれないが。
     そう考えたところで、はっと気がついた。
     この家はセントラル・ヒーティングではなかったのか?
     胸騒ぎがする。明かりをつけ、急いで寝巻きの上にガウンを羽織った。
     部屋の外に出ると、野村香と行き会った。
    「香さん、暖房はどうなってるんですか?」
    「田島さんが見に行っているはずなんですが……機械の様子を見に行くのに、それほど時間がかかるわけもありませんしねえ」
    「悪い予感がします。わたしも行きましょう。香さん、案内してください」
     田島という男には昨日晩飯の後に会ったが、筋肉質のいい体格をした寡黙な男だった。仕事をサボるとは考えづらい。
    「単に、機械を直すのに手間取っているだけかもしれませんが……」
     そのとき、女性の悲鳴が上がった。
    「宮部さんです! 桐野先生!」
    「急ぎましょう!」
     わたしたちは走った。

     別に田島は宮部看護婦を襲っていたわけではなかった。襲えるはずもなかった。
     なぜなら、彼は……。
    「桐野先生、どうしましょう!」
     野村香の叫びに、わたしはかぶりを振った。
    「どうしようもこうしようもありません。警察を呼ぶだけです。誰が見てもわかるとおり、田島さんはすでに死んで冷たくなっています」
     セントラル・ヒーティングの操作盤のちょうどまん前の血だまりの中に、田島信夫が倒れていた。その隣で宮部看護師が腰を抜かしていた。思いもよらず検死をする破目になったわたしだが、その結果は、こんなヤブ医者でも一目見ただけでわかることを確認するだけに留まった。田島は死んでいる。それも一時間以上前に。喉をやられているが、この傷口の様子からすると刃物ではない。おそらく、殴られてふらっとしたところを、頚動脈を噛み切られた、と判断した。
     寝巻き姿の西方光太郎が、わたしの後ろからやってきた。この男は自分の家で一人寂しく飯を食うのがいやで遥家に一泊したのである。
    「桐野さん、今の叫びは……田島さん!」
     慌ててそばに駆け寄ろうとする西方光太郎をわたしは制した。
    「手遅れです。警察を呼んでください。それまでここは手を触れないほうがいいでしょう」
     出来る限り平静を保っていったつもりだったが、声に少し震えが出た。
    「警察ですね、そうだ、そうでした。電話、電話を……」
     西方光太郎はあたふたと電話をかけに行った。
    「桐野先生、落ち着いてらっしゃいますね」
     歯をがちがち鳴らしながら野村香がいった。
    「もとは医者ですからね」
     それに加えて、仕事上もっとショッキングな光景を目にしたこともあるのだ。
    「香さん、宮部看護師をどこかここ以外の場所へ連れて行ってあげてください」
     わたしにうながされ、野村香は宮部看護師の身体を抱えた。宮部看護師は、真っ青な顔色でつぶやいた。
    「桐野先生、すみません。わたし、内科のほうでしたので、こんな他殺死体を見るのは初めてで……」
    「見てて気持ちのいいものではないですからね。しばらく横になって、落ち着いてください。第一発見者はあなたですから、後から警察にわんさか訊かれるでしょう。それに耐えるためにも、今は休んでおいてください」
    「桐野先生は……?」
    「流子さんが心配です。まともに動けない以上、次に犯人が襲う可能性がある」
     そこまでいいかけたとき、遥美奈と遥喜一郎がやってきた。
    「西方さんから聞きました。田島さんが、殺されたとか」
    「ごらんの通りです。ひどい有様だ」
    「こんなことって」
     遥美奈が息を飲んだ。
    「わたしたちは一箇所に固まっていたほうが利口かもしれませんね」
    「犯人がこの中にいると?」
    「そうとしか考えられないじゃないですか。一番怪しいのが、訪れたばかりのこのわたし自身ときている。誰かに見張っていてもらえなければ、どちら側も、警察が来るまで安心していられないでしょう。それに」
    「それに?」
     わたしは自分の中に澱んでくる考えを意識せざるを得なかった。
    「わたしは、とんでもないミスをしでかしたのかもしれない」
    「ミス?」
    「流子さんの部屋へ行きましょう。あそこなら、まだ安心できる。西方さんも呼んでください」
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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    これで終わったら吸血鬼ものにならないじゃないですか(^^)

    ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」同様、まだまだ続きます。三部構成なので(^^)

    当時、この小説を書くために古本屋で「吸血鬼ドラキュラ」を買って読みましたが、ムチャクチャ面白い「冒険小説」でした。「ディーン・R・クーンツの先駆的存在」といっていいと思います(^^)

    NoTitle

    流子さんが目覚めて一件落着、というわけにはいかないのですね。

    ここからが本番ですか。
    孤島で起きる殺人事件。
    島に伝わる伝説。
    そこにナイトメアハンター。

    どうつながっていくか、どう料理されているのか楽しみです(^o^)

    >佐槻勇斗さん

    そう思ってもらえて幸いです(^^)

    続きで、事態がどうなるかをお楽しみください。

    いいところで区切られるので、どこで読み止めればいいかわかりませんね汗

    さてさて、桐野先生はなにをやらかしたのでしょうか??
    また明日、気になる続きを読みに参ります^^ゝ

    >ネミエルさん

    この話ほんとに死人がゴロゴロ出ますので、ご趣味に合わなかったらすみません(^^;)

    では続きをどうぞ。

    夜に読むんじゃなかったと後悔しつつよんでおります。
    殺人事件かぁ・・・

    おぉ、おそろし。

    いや、殺人事件は(以下1時間ほど続く
    ・・・ってことです。

    続き楽しみにしておりますb

    >せあらさん

    この小説、ちょっと余計な人死にが多すぎたかもしれません(^^;)
    てことは……?(^^;)

    事件勃発!!
    とうとう人が一人死んでしまいましたね。。
    桐野先生が仕出かしたミスは一体何なのでしょうか。
    気になりますねぇ^^
    続き、また読みにきまぁすv
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