「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 ノゾミ 22-3
迫水さんが国枝さんの肩に手をかけた。
「沙矢香、なにいってるの! 京都へ行って、あんな目に遭わされたことを忘れたの? ……危険すぎるよ!」
国枝さんは、迫水さんのその手を振り払った。
「……お願いします、迫水のおじいさん。あたしも一緒に行かせてください」
才蔵おじいさんは口をぎゅっと結んで、しばらく考えているようだったが、やがていった。
「沙矢香ちゃん。危険な旅だということはわかって、そういっておるのか? あやつらは、京都ではわしらをからかうつもりだけじゃったかもしれんが、今度は本気を出してこんとも限らんぞ」
「……覚悟してます」
国枝さんの目は真剣そのものだった。
「正直、この小僧を連れていくだけでも戦力的にはダウンじゃというのに、沙矢香ちゃんまでついてきたらさらなる戦力ダウンは免れん。それを承知でいっておるのか」
「……覚悟してます、といったはずです」
才蔵おじいさんは国枝さんの目をじっと見つめた。
「もしかしたら、沙矢香ちゃん、お主には、お主もまだ知らぬ深層催眠が、あやつらの手により仕込まれているかもしれん。それをわかっておるのか?」
国枝さんの表情が、一瞬、堅くなった。しかし、国枝さんはいった。
「それもわかっています。それでも、あたしは行かなくちゃならないんです」
数瞬の沈黙。
息を吐いたのは、才蔵おじいさんのほうだった。
「プライドというやつはやっかいじゃのう」
おじいさんはぼくのほうを向いた。
「少年」
「は、はい!」
「お前は沙矢香ちゃんを守れ」
「おじいちゃん!」
迫水さんが悲鳴のような声を上げた。
「……是非もないことじゃ。沙矢香ちゃんは、どうしてもこの小僧の兄にもう一度会いたいんじゃろう。遭って、なにかの形で一矢でも報いなければ。一生、この傷に苦しんで終わるだけ、と悟っておるのじゃ」
才蔵おじいさんの声は、まるで自分にいいきかせているかのようだった。
「ついさっき、わしがいった、殺し返す、というのは、沙矢香ちゃんにとっては禁句だったようじゃな。わしは、自分の心の中で決着をつけろ、という意味でいったのじゃが、沙矢香ちゃんのプライドは、それを目に見える形で実行することを強烈に欲しておるのじゃ。……それを見抜けんかったわしは、まったくもって、阿呆じゃな」
国枝さんは、才蔵おじいさんのほうへわずかににじり寄った。
「沙矢香、なにいってるの! 京都へ行って、あんな目に遭わされたことを忘れたの? ……危険すぎるよ!」
国枝さんは、迫水さんのその手を振り払った。
「……お願いします、迫水のおじいさん。あたしも一緒に行かせてください」
才蔵おじいさんは口をぎゅっと結んで、しばらく考えているようだったが、やがていった。
「沙矢香ちゃん。危険な旅だということはわかって、そういっておるのか? あやつらは、京都ではわしらをからかうつもりだけじゃったかもしれんが、今度は本気を出してこんとも限らんぞ」
「……覚悟してます」
国枝さんの目は真剣そのものだった。
「正直、この小僧を連れていくだけでも戦力的にはダウンじゃというのに、沙矢香ちゃんまでついてきたらさらなる戦力ダウンは免れん。それを承知でいっておるのか」
「……覚悟してます、といったはずです」
才蔵おじいさんは国枝さんの目をじっと見つめた。
「もしかしたら、沙矢香ちゃん、お主には、お主もまだ知らぬ深層催眠が、あやつらの手により仕込まれているかもしれん。それをわかっておるのか?」
国枝さんの表情が、一瞬、堅くなった。しかし、国枝さんはいった。
「それもわかっています。それでも、あたしは行かなくちゃならないんです」
数瞬の沈黙。
息を吐いたのは、才蔵おじいさんのほうだった。
「プライドというやつはやっかいじゃのう」
おじいさんはぼくのほうを向いた。
「少年」
「は、はい!」
「お前は沙矢香ちゃんを守れ」
「おじいちゃん!」
迫水さんが悲鳴のような声を上げた。
「……是非もないことじゃ。沙矢香ちゃんは、どうしてもこの小僧の兄にもう一度会いたいんじゃろう。遭って、なにかの形で一矢でも報いなければ。一生、この傷に苦しんで終わるだけ、と悟っておるのじゃ」
才蔵おじいさんの声は、まるで自分にいいきかせているかのようだった。
「ついさっき、わしがいった、殺し返す、というのは、沙矢香ちゃんにとっては禁句だったようじゃな。わしは、自分の心の中で決着をつけろ、という意味でいったのじゃが、沙矢香ちゃんのプライドは、それを目に見える形で実行することを強烈に欲しておるのじゃ。……それを見抜けんかったわしは、まったくもって、阿呆じゃな」
国枝さんは、才蔵おじいさんのほうへわずかににじり寄った。
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Re: 椿さん
もうへろへろっす(^^;)