「夢逐人(オリジナル長編小説)」
夢鬼人
夢鬼人 ノゾミ 22-4
「でも……」
迫水さんがいいかけた言葉を、才蔵おじいさんは遮った。
「連れていくしかあるまい。沙矢香ちゃんの性格じゃと、わしらが置いて行っても、勝手に後からついてくるじゃろう。単独行動をさせるよりは、この小僧程度でも、そばに置いておけば弾除けくらいにはなる」
「ありがとうございます」
沙矢香ちゃんは才蔵おじいさんに頭を下げた。
「少年!」
「はい!」
「この『影縫』を持っていけ。お守りくらいにはなるじゃろう」
才蔵おじいさんは水盤の上の『影縫』を僕に手渡した。
「晶、お前は『影切』を取ってこい。少年に持たせるより安全じゃ。じゃが、この前のような無茶は二度とするでないぞ」
迫水さんがうなずき……うなずきかけた。
「おじいちゃんは?」
「わしか。決まっておろうが」
才蔵おじいさんは立ち上がった。
「年寄りにはあまりにも重すぎるが、『闇切』をかついでいく。鍛錬以外で太刀なんて振り回すのはずいぶんとひさしぶりじゃがな」
……太刀!
ぼくは手にした『影縫』がずしりと重くなったように感じた。
鹿澄夢刀流といっても、その奥底にあるのは、スポーツなどではなく、人殺しのための技術なのだ……。
「こんなの抱えて電車で行くの?」
「車じゃ。わしだって運転免許くらい持っておる。冴子さんほどではないが、まだ耄碌してはおらんぞ」
ぼくはおそるおそる尋ねた。
「あの……最近運転したのはいつですか?」
「たった五年前じゃ」
「え……と、あの、それって」
「さて、晶と少年、それに沙矢香ちゃんは荷造りをしてくれんか。わしはわしで根回しをしておくからのう」
才蔵おじいさんは電話をかけ始めた。
「おじいさんの運転……大丈夫なの?」
ぼくがそっと迫水さんに耳打ちすると、迫水さんは無理やり笑顔を作った。
「大丈夫だよ。母さんの運転技術は、おじいちゃん譲りだから」
ぼくは背中に嫌な汗を感じた。
それって……。
才蔵おじいさんはひとしきり電話をかけてからいった。
「夜陰に乗じて車を出す。たぶんマスコミあたりが張り付いていると思うが、かまわん、マイクやカメラを向けられたら、ぶん殴ってしまえ」
不安になってきた。ぼくたち、無事に鹿島神宮にたどり着けるのだろうか……?
迫水さんがいいかけた言葉を、才蔵おじいさんは遮った。
「連れていくしかあるまい。沙矢香ちゃんの性格じゃと、わしらが置いて行っても、勝手に後からついてくるじゃろう。単独行動をさせるよりは、この小僧程度でも、そばに置いておけば弾除けくらいにはなる」
「ありがとうございます」
沙矢香ちゃんは才蔵おじいさんに頭を下げた。
「少年!」
「はい!」
「この『影縫』を持っていけ。お守りくらいにはなるじゃろう」
才蔵おじいさんは水盤の上の『影縫』を僕に手渡した。
「晶、お前は『影切』を取ってこい。少年に持たせるより安全じゃ。じゃが、この前のような無茶は二度とするでないぞ」
迫水さんがうなずき……うなずきかけた。
「おじいちゃんは?」
「わしか。決まっておろうが」
才蔵おじいさんは立ち上がった。
「年寄りにはあまりにも重すぎるが、『闇切』をかついでいく。鍛錬以外で太刀なんて振り回すのはずいぶんとひさしぶりじゃがな」
……太刀!
ぼくは手にした『影縫』がずしりと重くなったように感じた。
鹿澄夢刀流といっても、その奥底にあるのは、スポーツなどではなく、人殺しのための技術なのだ……。
「こんなの抱えて電車で行くの?」
「車じゃ。わしだって運転免許くらい持っておる。冴子さんほどではないが、まだ耄碌してはおらんぞ」
ぼくはおそるおそる尋ねた。
「あの……最近運転したのはいつですか?」
「たった五年前じゃ」
「え……と、あの、それって」
「さて、晶と少年、それに沙矢香ちゃんは荷造りをしてくれんか。わしはわしで根回しをしておくからのう」
才蔵おじいさんは電話をかけ始めた。
「おじいさんの運転……大丈夫なの?」
ぼくがそっと迫水さんに耳打ちすると、迫水さんは無理やり笑顔を作った。
「大丈夫だよ。母さんの運転技術は、おじいちゃん譲りだから」
ぼくは背中に嫌な汗を感じた。
それって……。
才蔵おじいさんはひとしきり電話をかけてからいった。
「夜陰に乗じて車を出す。たぶんマスコミあたりが張り付いていると思うが、かまわん、マイクやカメラを向けられたら、ぶん殴ってしまえ」
不安になってきた。ぼくたち、無事に鹿島神宮にたどり着けるのだろうか……?
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たった5年前(^_^;)
ガンバレ。(←スミマセン意味不明)
いよいよ大きな戦いになりそうで、こちらも緊張します。
鹿島神宮、ずーっと昔の学生時代に一度だけ行きましたが。
鹿がいたイメージが。
もう一度行きたい場所です。
ガンバレ。(←スミマセン意味不明)
いよいよ大きな戦いになりそうで、こちらも緊張します。
鹿島神宮、ずーっと昔の学生時代に一度だけ行きましたが。
鹿がいたイメージが。
もう一度行きたい場所です。
- #15673 椿
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- 2015.05/19 17:18
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Re: 椿さん
いちおう、明日の更新で、この第二巻である「夢鬼人」は完結です。
夢鬼側の人間に焦点を当てましたが、明日はさらに事態がとんでもない方向に行ってしまいます。
第三巻の「夢酔人」はいつ書けることか……(^^;)